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曲がり角  作者: 加藤無理
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吉田と和男

 夏休み中、和男は相変わらず部活動を続けていた。大会には出場しなかったが、部員達と一緒に会場まで行って準備したり練習試合や鍛錬に付き合ったりしていた。


 和男が学校を出ようとする時、渡辺から呼び止められた。渡辺は女子を一人連れている。女子が頭を下げながら、

「初めまして。吉田鞘子よしださやこと申します」

 和男がキョトンとすると、渡辺が説明した。吉田は渡辺と同じバレーボール部の後輩だ。吉田は目を泳がせながら躊躇いがちに、

「私は、いつも遠くから先輩を見てました。あの、朝倉先輩。私の彼氏になってくれませんか」

 和男は困った顔をして自分の顎に右手を当てた。渡辺が眉を寄せる。吉田は不安そうな顔をする。和男は、

「俺はお前を知らないから何とも言えないな」

 渡辺は和男と吉田を見比べて、

「じゃあ、私は帰るから、二人で話し合ってよ」

 と、言い残すと立ち去った。和男は吉田に帰り道を確かめた。和男とは正反対の方向だ。和男は道の端に寄る。吉田もそれにならった。和男は不思議そうに、

「俺のどこが好きなんだ」

 吉田は目を輝かせて、

「先輩は誰よりも男前です。渡辺先輩から色々と話を聞いてます」

 和男はふーんと唸った。吉田は、

「私は勉強が苦手ですけど、死に物狂いで部活を頑張ってます」

 和男は一瞬、目をそらし、

「それじゃあ、互いに忙しいな」

 吉田は指を組んで、

「部活の終わりに少しだけお喋り出来れば良いんです」

 和男は微笑み、

「それなら良いよ」

 吉田は満面の笑みで、

「ありがとうございます!」


 翌日から二人は部活の終わりに体育館の隅で会話することになった。吉田は熱心に自分の部活の話をするし、和男の部活やクラスについて色々と尋ねた。和男は興味を持って吉田の話を聴くし、吉田の質問には素直に答えた。


 バレーボール部員と柔道部員は二人の交際に驚いたが、邪魔はしなかった。二人は楽しく会話をしているが、特別イチャイチャしているわけではなかった。手を繋いだりも口付けも抱き合うことも一切していない。二人は全く触れ合っていない。


 二学期が始まった時には二人の同窓生達は既に知っていた。和男の同窓生達はすんなりと受け入れている。坂東は全く興味が無いのか、相変わらず勉強をしている。


 「トランスだからって、ふざけるんじゃねぇ!」

 吉田の同窓生の男子が怒鳴った。吉田と喋っていた女子が、

「何それ、若林君。差別?」

 若林は女子に振り返り更に怒鳴った、

「差別だの配慮だのうぜえんだよ!」

 柔道部の男子が鼻で笑い、

「嫉妬か?朝倉先輩はお前より強いぞ」

 若林は机を叩く。教室中の生徒達は顔をしかめる。そんな中、担任が入ってきて、

「どうした?」

「朝倉のバカが吉田と乳繰り合ってるんですよ!」

 若林が興奮しながら答えた。女子の何人かは舌打ちした。先程の柔道部員が若林を睨んで、

「テメエ殺すぞ。先輩はそんな事をしてねえから」

 担任は生徒達を落ち着かせた。吉田には昼休みに職員室に来るように命じた。

 

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