認める者と認めない者
中学三年生になった和男は放課後、教室で勉強するようになった。最近、母親の雪絵はなるべく早く帰って弟の和夜に勉強を教えている。休みの日には正和も和夜の勉強を付き合った。それでも週に一回の掃除は続いている。
違う同窓になった川町は大人しくなった。和男が廊下で擦れ違う時はいつも俯いている。周りの生徒達は何となく川町を避けている。一方、的場も違う同窓になったが、和男と擦れ違えれば気さくに挨拶する。和男も返事をする。
野球部を引退した同窓生に和男はそれとなく尋ねると、その男子は肩をすくめて、
「アイツ、お前に酷い事を言っただろ」
和男は首を傾げて、
「俺も十分に仕返しをしたけど」
男子は頭をゆっくりと振り、
「アイツがゲイだと知ってたか」
和男は手を振って否定した。男子は、
「俺達と水泳部はアイツを応援してたけど、アイツは一線を越えた」
和男が眉を寄せると男子生徒は、
「ああ、超えたのはゲイとしてヤッたんじゃなくて、お前を差別した事」
和男は苦笑いして、
「ありがとう。でもそんなに気を遣うなよ」
和男は受験勉強を頑張った。塾に通わなかったし家庭教師も招かなかったが、公立の進学校に合格した。
最初は男子校を希望したが、父親の正和が猛反対した。怒鳴りも殴りもしなかったが、冷徹に、
「お前は社会を甘く見ている」
和男は、
「最近は女子大にトランス女性も入っているんだぞ」
正和は鼻で笑い、
「それは一部の愚かなマスコミが騒いでいるだけだ」
母親の雪絵は、悲しい顔をして、
「申し訳ないけれど、共学にしてくれる?」
和男は渋々と受け入れた。理不尽な話だと、傍らで和夜は気まずそうな顔をした。
ある日、正和が和夜に勉強を教えた後、
「お前、もっと頑張れよ。男だろ」
和夜は眉間に皺を寄せて、
「父さん。今時、そんなの古いよ」
正和は腕を組み、
「お前はとんだ甘ったれだ」
和夜は呆れ顔で、
「いい加減、兄貴を男として認めてあげろよ」
正和はゆっくり頭を振って、
「お前は社会というものを知らない」




