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曲がり角  作者: 加藤無理
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男の道を歩む和男

 和男が中学二年の時、約束通り保健体育も部活も男子と一緒に活動するようになった。男子達は最初は躊躇ったが、和男の懸命な態度に気付いて対等に扱うようになった。和男は負ける事もあったが、勝つ事もあった。男子達も教職員達も舌を巻いた。


 担任は更衣室でそっと、

「生理の時は大丈夫なの?」

 と、尋ねると、和男はあっけらかんとして、

「俺は軽いから大丈夫です」

 と、答えた。


 女子達も和男を一目置くようになった。和男も女子にはなるべく親切にした。


 二学期の始まったある日、部活が終わって着替えて帰ろうとすると、教室から奇妙な声と音が聞こえてきた。和男は不審におもって教室の扉を開けた。


 黒板の前で全裸になった男子生徒が自慰をしていた。和男は呆然としたが、なるべく冷静に、

「お前、大丈夫か」

 と、声をかけた。男子生徒は、

「出てけ!」

 と、怒鳴った。和男は黙って静かに扉を閉めた。何事も無かったかのように下駄箱に向かう。


 校門を通り過ぎようとした時、

「朝倉!朝倉!」

 と、大声がした。立ち止まって振り向くと、先程の男子生徒が駆け寄ってくる。男子生徒は二歩前で立ち止まり、泣きそうな顔で、

「さっきのは誰にも言わないでくれ」

 と、懇願した。和男は無表情で、

「ああ」

 と、返事をした。踵を返して帰っていく。


 その男子生徒は和男の同窓生の的場典之まとばのりゆき。的場は水泳部に所属していた。的場とは挨拶するくらいでじっくり会話したことはなかった。


 翌日から的場はチラリチラリと和男を盗み見るようになった。和男は視線を感じつつもしばらく誰にも漏らさなかった。音楽の授業で音楽室に向かう途中、和男はそっと耳打ちした、

「あの事は誰にも喋ってないぞ」

 的場は頷いた。和男はそっと離れる。


 近くにいた川町かわまちが、

「どうしたんだ」

 と、尋ねた。的場は目を泳がせて少し考えると、

「後で話す」


 昼休みに誰もいない下駄箱で的場は川町に打明けた。川町は眉間に皺を寄せて、

「あの変態野郎」

 と、和男を罵った。的場は頭を振って、

「悪いのはアイツじゃなくて俺だろ」

 川町は溜息を吐いた。


 その後、的場と川町は何となく一緒になるようになった。休み時間も登下校も一緒だ。川町の所属している野球部の後輩達と水泳部の後輩達が二人を噂するようになった。

「あの二人、付き合ってんだろうな」

「ゲイだったんだな」

 それを聞いた二人の同輩達は注意した、

「ゲイを差別するなよ」

「お前達に手を出すわけじゃないだろ」

 後輩達はシュンとなって俯いた。先輩達は、

「皆には内緒だぞ」

「特に先生達には黙っておけ」

 後輩達は頷く。


 ある日、和男は何となく的場と川町に、

「最近、お前達は仲が良いな」

 的場は苦笑いしたが、川町がギロリと睨んで、怒気を含んだ声で、

「キンタマのえお前には関係が無いだろ」

 和男は瞬時に飛び出して川町を掴むと巴投げをした。驚いている川町に十字がためをしながら、低い声で

「キンタマが有るだけで男だと思うなよ」

 怒りで変わった和男の顔を見て、的場はゾクリと身体が痺れた。快楽に似た感覚で的場の顔が緩む。男子の一人が、

「朝倉、もう止めろ」

 和男はすぐに力を緩めて川町から離れた。的場は川町に近寄り、耳許で、

「俺達、別れよう」

 と、囁いた。


 

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