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曲がり角  作者: 加藤無理
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朝倉と田中

 朝倉正和あさくらまさかず田中雪絵たなかゆきえは互いの上司の紹介で見合いして結婚した。正和と雪絵は同じ歳。正和は警察の鑑識、雪絵は中学数学の教師として働いてきた。二人は二年交際の後に結婚し、三十歳の時には子どもに恵まれた。


 雪絵は教師を辞職して家事と育児に専念した。その代わり正和は毎日早く起きては朝食を作って出勤した。正和は多忙であったが、夫婦仲は悪くなかった。雪絵が育児ノイローゼになりかけた時には雪絵の母親と正和の母親が家に来ては家事と育児を手伝った。時々夜泣きで皆を悩ませたが、子どもはすくすくと育った。


 正和と雪絵は話し合った結果、更に子どもを設けることにした。長子が三歳の時に次子が生まれた。


 それまで長子は大人しかったが、女子用の髪型や服装を極端に嫌がった。人形やぬいぐるみも受け取ろうとしない。雪絵がおままごと遊びを誘っても不貞腐れる。いつの間にか長子は、

「俺、男!」

 と頻繁に反発するようになった。だが、長子は生物学的には完全に女の子であった。正和は困った顔で、

和美かずみ。お前は女の子なんだよ」

 と、諭す。しかし和美は地団駄を踏みながら、

「違う!男!」

 雪絵は穏やかな声で、

「あとで病院で診てもらおうね」

 と、諭した。苦い顔をする正和に雪絵は冷静に、

「本当にトランスジェンダーかもしれない」

 それを聞いて正和は溜息を吐いた。


 次子である和夜かずやのオムツを雪絵が取り換えるのを和美は見つめながら、

「俺はいつチンコが生えるの?」

 と、母親の雪絵に尋ねる。雪絵は落ち着いた声で、

「ごめんね。貴方には生えてこないよ」

 和美は悲しい顔をする。


 正和のいない所では雪絵は和美になるべく男の子として扱った。男の子の格好や髪形をする和美に正和は嫌な顔をしたが、雪絵は冷静に、

「ボーイッシュな女の子なんて珍しくないでしょ」


 和美は更に坊主頭や角刈りを望んだが、雪絵は中性的な髪型にさせた。

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