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読めなくても、書きたい

掲載日:2025/10/13

セミフィクションです。

「はぁー……」

 深く、深く息を吐く。

 目の前の窓から外を見れば、昼下がりの光の下、木々が風に吹かれている。

「伸びないよなぁ」

 パソコンで開いていたページを閉じ、椅子の背にもたれる。

(本が読めないのに物語を書くなんて、やっぱり無謀(むぼう)なんだ)

 さっきまで開いていたのは、小説投稿サイトに載せている小説へのアクセス数が見られるページ。

 そこに表示されていた数字は、0、0、0。


(最後に本を、物語を読了したのは、いつだっけ)

 ぼんやりとすらも思い出せない。

 読了の感覚が、そこまで遠い記憶になってしまったことに、もう悲しみすら感じない。

積読(つんどく)だけは、立派に溜まってるのにな」

 作業机の横、二つ並んだ本棚に詰まった本の背表紙を眺める。

 そのほとんどは、中身を知らない。良くて、あらすじだけだ。


「誰かの作品を読むことすら、出来ないで。繋がりたいなんて言えないよな」

 スマホで開いたSNSに流れてくる、繋がりたいタグや読了報告。

(読めて、うらやましい)

 本音を言えば、読みたくてたまらない。

 活字の海で、溺れたい。とっぷりと全身を(ひた)されて、目を閉じても活字が感じられるほどまでに、溺れたい。


 けれど、体はそれを拒否する。

 本を開いて目に入れた瞬間、意味を成している文章も言葉も、全てが理解できなくなる。

 紙に印字されていようと、電子だろうと、関係なく。

 調味料の成分表は読めて、報告書なんかは読めて、なぜ。

 なぜ、物語だけが読めないのか。


 原因は、うっすらとわかるが。

 もし原因がそれならば、今、物語を書く自分を全否定されることになる。それは耐えられない。

 だから直視しない自分も、きっと悪いのだろう。


 それなのに。

 脳内では、「読めなくて、なんだ。それに足取られず、まず“楽しく書く”が最優先だろうに」と大々的に主張している、自分が居る。

 

 実際、その自分が言うように、書くことは楽しい。自分で書いた文章だけは、例外で読めるのだし。


 読めない。なのに、書きたがる。

 そんなジレンマ。


 きっと、いつかは原因と、本や物語を読めないことと向き合わないといけないんだろう。

 でも、今は。

 どうか、ただ。

「書きたい……」

普段は「とくつみしょ」という作品を投稿しています。

そちらも読んでくださると、嬉しいです。

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