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Ep4. ドッペルゲンガー?




『世の中には自分にそっくりな人間が三人いる』



 この言葉を誰しも一度くらいは聞いたことがあると思う。


 この場合、身内はなしで考えるものとする。

 そうしないとこのケースの場合、身内だけで3人いるのだ。

 あくまで血のつながり無し、他人のケースである。



 今回のケースは『不本意ながら童顔の自覚有』な女性の体験談。

 彼女は、赤の他人の、10才は年下の少年に間違えられたことがあるという。


 まだ彼女が26才くらいの時だ。

 あれは、本屋巡りをした日の帰り道だったという。



「おーい、○○」

「呼んでるんだかこっち向けってば」


 少し離れた斜め前方から、高校生くらいの少年たちが、友人らしい人物の名前を読んでいた。

 もちろん男の名前だ。彼女の名前じゃない。


 まさか彼女も自分を呼び止めようとしていたなんて知るわけもないから、そのまま通り過ぎて駅前のバス乗り場へと歩いていた。


「おい、○○!」

「無視すんなっての、聞こえてねーのか?」


 聞こえているが、()()は彼女の名前じゃないので、当然彼女が足を止めることはなかった。


 少年たちは友人に無視されたと思ったんだろう。

 駆け足の音が近付いてきたかと思うと、彼女はの肩をつかまれ後ろを向かされた。


「どこ行くつもりだよ、これから遊ぶっつったろ?」

「言い出したのお前だろうが」

「自分だけ先に私服に着替えてどこ行くつもりだよ…あれ?」


 流石にこの段階になって全くの別人だと気が付いたらしい。

 そして次の瞬間、爆発する勢いで赤面した。


「…おっぱいあんじゃん?」

「○○って女の子だったっけ?」


「全くの別人で君らとは初対面ですが、何か?」


 その時の彼女の服装。

 メンズの黒いスラブデニムのトラッカーズジャケットと、黒のスラブデニムのストレートパンツ。

 後ろ姿だけだと男にしか見えない。

 しかしジャケットの下はリブニットのハイネックを着ていて、インナーにシームレスカップのブラを付けていたものだから、間近から見るとDカップの胸がボリューム3割増しに見せていた。


 少年たちは彼女の肩から手を放すなり二三歩後ずさりして、音がしそうな勢いで頭を下げて謝ってきた。


「人違いでしたすみません!」

「ダチと間違えましたゴメンナサイ!!」


「分かってくれたのならいいよ、そんなに似てる?」


「そっくりっス!」

「顔も髪型もだけど、背格好や着てるモンも似てる」

「あ、あとそのバッグ! ロスコのメッセンジャーバッグ、色もおんなじ」

「靴も似てる。アイツもゴツいトレッキングシューズ履いてるし」


「そっかぁ…そこまで似てるんだ」


 顔かたちから背格好、服や持ち物の趣味まで似ているなら、間違えるのも無理はない…のだろうか?


 人違いという事を謝罪され、彼女は少年たちと別れた。

 自分に似ているという少年に会ってみたい気もあったが、帰宅の為のバスの時間が迫っていた。



 

 そんなことがあったなと思い返したのは十年ほど経った、親戚が正月に集まっていた時の事だった。

 彼女の姉が、子どもと孫を連れて里帰りしていた。

 親子四代そろいぶみである。孫と曾孫の顔を見れた母は嬉しそうに曾孫を抱き上げてあやしていた。

 その時に、彼女と、彼女の年の離れた姉と、姉の息子の顔がよく似ているという話になった。

 実際、まだ一歳を迎えたばかりの姉の孫が、彼女と彼女の姉を交互に見ては不思議そうにしている。


「どっちがおばあちゃんか判らないのかな?」

「そんなに似てるかな?」

「ピ○チュー、眼鏡取って見な」

「誰がピ○チューだよ、しょうがないなぁ。ほら、だーれだ」


 姉に言われて彼女が眼鏡を取ると、今度は姉の息子と彼女を交互に見比べ始めた。


「ピ○チュー息子と見間違えられて笑える」

「髪切ったのまずかったかな。こっちは大おばちゃんだよ~」


 実際、彼女と姉とその息子はよく似ている。一目で身内と分かる顔立ちだ。

 ただし『瓜二つ』というほどではない。血のつながりが分かる程に似ているというレベルである。


 ふと、昔の体験を思い出した彼女は、姉にその時の体験談を笑い話として話していた。

 話を聞いた彼女の姉は、何かを考えるかのように下あごに手を当てていた。


「……見たことあるわ、あんたのそっくりさん」

「マジで? だって男だよ?」

「あるよ。一回職場に来た電気修理工の○○君って若い男の子があんたにそっくりで。あんたかと思って『何時ここに来たの?!』って言っちゃったもん。男だったから別人だって解ったけど」

「うっわ、ホントかよ」

「息子よりアンタにそっくりでビビったわ」


 自分が知らないところで、自分の姉と、自分はまだ会ったことがない自分のそっくりさんが顔を合わせていたということに、彼女は驚いた。

 一体どんな確率だろう、誰か計算してみてくれ、と彼女は思ったという。




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