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Ep1. 夢現に名を呼ぶモノ





 ん?


 ああ、相席?


 いや他にも開いてるテーブル有るんじゃ…あれ、あの時のニーチャンか。元気?

 ああ、いいですよ、相席。一応顔見知りなんで。

 すいません、アイスティーお代わりお願いします。



 どうしたの君、平日のこんな時間に。

 俺? 俺は月一の病院帰り。定期健診と検査して、処方箋貰ってきたとこ。

 バスの乗車時間と待ち時間だけで疲れたから甘いもの欲しくなってさぁ。

 喉も乾いたし。



 へぇ、転職考えて職探しか。

 まあいいんじゃないか? 心機一転やり直すなら早い方がいいし。

 若いんだから探せばいくらでも道はあるだろ。

 二日酔い大丈夫だった?

 記憶がない? それは…ラッキーだったな、うん。



 俺?

 今現在ニートだよ。

 ははっ、冗談冗談、自営業とは名ばかりのほぼ無職状態。

 店閉めちまったから、家の事やって喰ってる。

 田舎だからできることだけどな。


 都会育ちだと分かりにくいか。


 田舎で山奥に棲んでると、都会では手に入らないものが有る。

 そういうのを自分の山から採ってきて、売ったりしてる。

 茸とか山菜とか、山野草とか、育ち過ぎた庭木とか、変わったのだと苔とか?

 あと写真。

 都会じゃ見られない珍しい花や、絶滅危惧種の植物、珍しい昆虫とか、結構需要あんの。

 塵も積もれば山だ。

 何が金になるか世の中分からんもんだなと思うよ。

 一番デカイ稼ぎはお袋の育てている蘭の仲間だな。一株に六桁出すヤツもいる。

 毎年枯らして毎年購入するやつなんて『いいお客』だったりするワケ。

 自然のやつは採取禁止されている野生蘭だけど、採取禁止になるよりずいぶん昔、お袋が子供の頃に取ってきて庭に植えたのが勝手に増えたやつを売ってるから、お上も口を出せない。

 あ、紅茶のお代わりきた。うまいなー。



 ……あのさ、何か聞きたそうな恨めしそうな目で見るの止めてくんない?

 相席頼んできたのって何か話したいか聞きたくてだろ?

 そうじゃなかったら「初めまして」ならぬ「二度目まして」の相手に寄って来そうもない面相(かお)して。

 

 あの夜に何があったか知りたい?

 ……世の中には『知らぬが仏』の言葉もあるぞ。


 あー…俺が言えるのはただ一つ、

『死なずに済んでよかったな』

 それだけだ。



 どうした、狐につままれたような顔をして。

 信じられないか、まあ無理もない。

 事実と言えど記憶になければ無かったも同じか。


 はあ、霊体験は初めて、と。

 霊……と言うよりどちらかと言えば『あれ』は妖怪に近いかな……。


 は? 俺が霊能者?

 んな訳ねーだろ。

 少しばかり気配に敏くて、ちょっと妖怪について知っているだけだ。

 俺は水木先生の妖怪図鑑を愛読していたからな。

 馬鹿にできんぞ、あの書籍は。


 何そのチベスナ顔。

 そんなに信用できないなら、安井金比羅宮にでも行けばよかったろうに。

 神様ってのは想像しているより頼れるぞ。

 まあ、お参りするときに詳しくお願いする必要はあるが。

 パワハラ上司との縁切りをお願いしたら会社が潰れたという極端な例もあるしな。


 だいたいなぁ、この世には気が付かぬだけで不思議なことなど珍しくもないぞ。

 見て見ぬふりをして気付こうとしないだけよ。

 人が存在する限り、不思議も存在し続ける、そういうものだ。


 俺だって忘れた頃に思い出させられるからな。

 『そういうもの』だって。



 聞きたい?

 変わったヤツだな。

 大して珍しい話でもないぞ?



 あー……俺はな、年に一度か二度、寝ている所を呼び起こされるんだ。

 半分眠った状態で、家族の誰かに起こされている。

 名前を呼ばれるんだよ、『起きろ○○』って。

 しまった寝坊でもしたかと思って返事をしようとすると、いつも必ず誰かの手が口を塞ぐ。それもしっかりと。

 驚いて一気に目が覚めるな。


 普通夢だと思うだろ?

 確かに家族に呼ばれたはずなのに、起きてきて誰か俺を読んだかと家族に聞いても、誰も俺を呼んでいないと言うんだ。

 思い返してみると、俺の名を読んでいたのは父親のような気もするし、母だった気もする。

 そういう事が時を置けども何度も続けば正体を知りたくもなる。


 まあ、いつ呼ばれるか分からんからどうしようもないんだが。


 ある時、徹夜でレポートを書き上げて、窓の外が白々と明けてきたのを見てからベッドに入った。

 まだ眠くはなかったが、とりあえず目を閉じたよ。その内眠るだろうと思って。

 それから五分も経たないうちに、名前を呼ばれたんだ。

 即座に目を開けて返事をしようと思った瞬間、やっぱり口を塞がれた。背後から回ってきた手が口を塞いだんだ。

 ぶったまげて飛び起きたね、そん時は流石に。

 起きると同時に背後を振り返った。


 でも、誰もいねーのよ。


 声の正体は分からない、俺に返事をさせたいんだろうな。

 手の正体は分からないが、俺に返事をさせたくないらしい。

 だから一度も返事をしたことはない。


 もし……一度でもあの声に返事を返していたら



 俺はどうなっていたんだろうな。




 

 

後半ほぼノンフィクション。

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