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宿泊!?

「泊まるってあのチームの部屋にか?」


チームに用意された部屋は16畳程の広さが用意されている。確かに四人寝てもスペースは余るが倫理的に良いのか?


「そうだよっ。申請出せば泊まる事だって可能だし。」


「いやいやいや、ちとせやヒナだって嫌がるだろう?」


「ヒナはワクワクするです」


フンスッ、フンスッと効果音がつきそうなくら両手を大きく振って喜んでいる姿が見える。


「私だって賛成だよっ。今の私たちに必要な事だし。やらないときっと後悔をする」


決意の固まっているちとせの顔を見て思う。そうだよな。後悔をしたくない。単純で良いんだ。


「まぁ、滉誠がヒナに欲情するって言うなら仕方ないけど」


本気で落ち込んでいる様な演技をするのはマジでやめてほしいっ。真実っぽくなるからっ。


「ぴぃっ」


先ほどの楽しげな雰囲気が一気に霧散して、怯えた様に両腕を縮めて躰を振るわせる。


「しないからねっ」


焦ったこともあり、口調が強くなってしまう。


「滉誠も焦ることあるんだ」


ゆりは冷静に分析しながら、俺を見ている。掻き乱しておいて、急に冷静になるのは本当にやめてほしい。


「ヒナちゃん、安心して大丈夫だよ。滉誠はそんな人じゃないでしょ?」


ちとせ、本当にフォローありがとう。これこそ、チームのあるべき姿だよっ。


「いえっ、安心できないです。男は皆んな狼ですから」


至って当然の帰結ですね。そうだよね。信頼できませんよねっ。


「まぁ、寝る時だけ他の部屋に移動すれば良いだろ?」


チームでいる事の重要性は理解しつつ、線引きを提案する。


「さっきのは冗談ですから、安心してください。滉誠なら大丈夫です。」


深く頷きながら得意げに言う、ヒナを見て思う。


「わかりずれぇ」


マジで本気の演技に感じた彼女の言動を信じられなくなる。


「さっさと行くよっ」


ゆりがそう言い放って俺たちは部屋にある端末を操作する。部屋から出ると床にラインが示されている。基本的に端末を持ち出す事ができない為、端末を操作する事でしか道を表示する事ができない。全ての施設を頭の中で構築している人間を施設内では三人しか知らない。


俺たちは床に示されたラインの通りに進み、申請課まで歩みを進める。


「それにしても本当に広い施設だよね、ここって」


ちとせが素直に感心している姿を見て、何度も感動できる感性の豊かさに関心を抱く。俺にここまでの豊かさがあるだろうか?ないな。


「うん。博士が用意をするにしてもこんな場所は無理って事は、相当な投資家がいたんだろうね」


ゆりが冷静に分析をしながら、注意深く周囲を観察する。毎回通される部屋が違く、見分ける為のオブジェクトが置かれていないが故に迷う対象になる。


「博士と白雪さんはこの施設を把握しているらしいですよ」


ヒナが淡々と伝える。


「まぁ、博士なんかさっき何の印もなく先導してたからな」


「というか、白雪さんは何者なのっ。まだ、一週間も経ってないのに把握してるんだよねっ」


体が前傾し背になりながらも、ヒナに尋ねる。


「私と同じアナライザーですが、彼女は未来が見えているかの様に、心拍数が高くなる瞬間を言い当ててます」


ヒナが真剣に考え込む様に、顔を下に傾けながら説明してくれる。


「未来が見えてるってどういうこと?」


ちとせが疑問に思った事を聞いてくれる。


「彼女は数値の変動からどの様な状況にあるのか見極めて、30秒後に起こしなさい。って命令した事がありました。」


「単独で判断したって事なの?ヒナちゃん」


「そうです。結果的に、25秒もすると心拍数の上昇が早くなり、30秒後には基準値を突破しました。私たちが数値が突破してから報告に対して、予測で完璧に把握した一人らしいです」


「滉誠はそれが可能だと思う?」


ゆりが俺に尋ねてくる。なんで俺なのかと思う疑問はあるが、皆がこちらを向いてくるので答える。


「相手を正確に分析していたら可能だと思う。けれど、それは日常から何にどんな反応をするのか見ておく必要がある。日常的に腕時計の数値を把握していたのかも知れないな」


「なるほどね」


ゆりが感心した様に頷く。いや、絶対に気がついていたでしょ。


「あくまで、可能性の話だよ」


「いえ、白雪さんに実際に聞いたら、同じような返答が返ってきました。9割正解です!パチパチ」


ヒナはそう言って、無表情に俺を褒めてくれる。褒めてないよねっ。


そんな話をしていると、俺たちは申請課に到着する。


「Aチームの皆さんですねっ。お疲れ様です♪こちらにはどの様なご用件で来られましたか?」


極めて事務的な対応で、完璧な笑顔で俺たちを迎えてくれる。


「私たちのチームが本日泊まるからそちらの申請と学校への連絡をお願いします。」


「滉誠さんも一緒の部屋に泊まるのですか?」


笑顔が無くなり、困惑気味に頭を少し傾けて聞かれる。


「現状の私たちには必要だと感じまたので」


「まぁ皆さんも成人はしているので止めませんが、何かあった際は申し付けて下さい。再起不能にしますので」


「その際はお願いします」


淡々と事務的にこなす二人を見て思った。やはりこの施設には変わった人間しかいないのだと。

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