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ナイトメアシンドローム  作者: 夢見る冒険者
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邂逅

中央施設に入って中を見渡す。壁一面を覆う巨大なスクリーンと周囲には窓一つない、機械や人工物で構成された無機質な空間になっている。コンクリートの壁や音を吸い込む特殊な素材が使われた床が、空間全体を異様な静寂で包んでいた。


既に必要なメンバーが集まっており、博士を含め、チームメイトの姿も見える。 もちろん博士の横には、この場に見つかわしくない愚症な男二人がついて回っている。 いつでも博士を監視できるように、変な行動を起こさないように。


チームメイトの二人は、博士とは対比に位置しており、俺達二人も彼女たちの横に移動する。改めて二人を見ると正反対な印象を受ける。千歳は見た目からもわかるような明るい派手な少女である。周りのことをよく観察している彼女は、チームの空気を読み取りながら積極的に声をかける。サポーターというものに最も適した人材であるといえる。


もう一人のひなは小柄ながらも周りのことをよく観察する少女だ。常に人の機微は感じ取り、 些細な変化だって彼女は見逃さない。 たぶんこのチームで一番相手を観察する能力があるのはひなである。本人は臆病な性格ゆえだと謙遜をしているが、その観察力がアナライザーとしての適正の高さを示している。彼女の的確な言葉にドキッとさせられることがこの数日でもあった。


「諸君、よく集まってくれた。 これからの手順について説明する。 」


博士はそう言って、モニターを指差す。


「 君たちが救う対象、氷川楓だ。資料を見てわかってもらう通り彼女を構成する情報は少ない。だが私は君たちなら必ず彼女を救い出せると確信している。」


自分の最範を信じているのだろうか、それとも俺たちを信じているかの真相は分からないが俺たちが達成するということを疑っていない。


「ダイバーである、ゆり、そして滉誠にはこちら腕時計をつけてもらう」


よく見るスマートウォッチの形状をしたモノを渡される。


「こちらで心拍数やストレスレベルを測っていくき問題があれば、ひなが報告。ちとせがダイバー二人を起こす。いいか。」


「「「「はいっ」」」」


皆が返事をする様子を博士が観察し、頷く。


「最初のダイブは本日の16時半。これから30分後に行う。ゆり、滉誠、ちとせは病院へ迎え。ひなは私と中央コントロールセンターへと向かう。質問があれば聞くが」


俺たちは互いを見つめ合いアイコンタクトでうなずいて同意を得る。チームのリーダーである俺は博士に告げる。


「問題ありません」


そういうと博士は踵を返し、それにヒナはついて行く。 俺とゆり、ちとせは病院へと向かう廊下を進んで行く。


「それにしても、やっぱり博士は何考えてるかわからないね」


そう言って、少し緊張した空気をほぐすように ちとせは俺たちに声をかける。きっと俺たちが必要以上に緊張しているのを察しての気遣いである。


「まあ、俺たちに理解できるようじゃ、ここの所長にはなれないだろうな」


「そう、そう。頭がいい人は、見え方が違うからね」


ゆりもちとせの気遣いを察して、乗ってくる。初めてやる事に緊張しない人間なんかいないだろう。だからこそ、何かで気を紛らわす。


きっと俺たちはまだ 互いに許し合えていない 。けれども、こうやって寄り添っていくことが 自分たちを理解する一歩なんだとそう感じた。


「で、さっきは二人っきりで部屋の中で何してたのかな? 」


ぶっ、俺は内心吹き出してしまった。ゆりは気を使える子だ。そうだろ。俺は懇願にも含めた表情でゆりを見た。


彼女はにっこりと、安心感のある笑みで告げる。


「彼は童貞で私が処女という話をしてた」


「しょっ...」


意外と純情なんだなとちよせの事を意外に思いつつも、やはり言ったかと諦めモードになる。


「ちよせ、俺たちは互いを知らないといけない。そういう事だ」


「えっ、ごめん。私の理解力が低いのかな」


いつものギャルっぽさが消えた素の反応が見えた気がする。


「つまり、俺たちには時間がないって事だよ」


その意味を一番わかっているのは彼女自身だろう。この施設にいるという事は少なからず試験を突破してきているのだから。一人の例外を除いて。


「なるほどねっ、だから君たちがダイバーってわけか」


先ほどよりも、落ち着いた声で自然な感じがする。より素を曝け出した感じだ。


「私も目指してたんだよダイバーっやつ。でもなれなかった。」


俺たち二人を見て何かを感じる事があったんだろう。彼女の目には少し涙が浮かんでいる気がした。


「必ず救ってよね。楓を」


「任せろ」


「えぇ」


俺とゆりは彼女の気持ちに応える様に、深く頷く。本気になれない人間が誰かを救うことなんかできはしないんだから。


「二人で話していた事を聞かせてよ」


明るく、そしてさっきよりも自然な振る舞いに俺たちは少し打ち解けられた気がした。


「じゃあ、滉誠が、ロリコンって話からしようか」


「ちょっと待て、すごい風評被害だろ」


そんな普段と変わらないけれど、どこか心地よさを感じなら病院へと向かった。

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