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それぞれの印象

「それがあなたなんだね」


楓がポツリとつぶやく。


「滉誠、さっき言ってたよね父が厳しい人だと。いったいいつから?」


「正確には忘れたけど、5.6歳の時かな」


「そっか」


この話をすると大抵の人の反応は、憐れみだった。俺にとっては当然だでも、やっぱり他の人にとっては異常に映るんだね。ふと思い出す。滉誠君はなんでもできてすごいね。才能がある人は違う。じゃあ君達は毎日限界を乗り越えるために何かアプローチしたのか?と問いかけてみたい。


「そうか、見えないんじゃなくて私が見ようとしてなかったんだ」


パンッ。


そう言ってゆりが自分の頬を叩いた。俺は驚きのあまり目を丸くしてゆりのことを見つめる。楓もなぜか同じように自分の頬を叩く。


「一体どうしたんだ?」


彼女達のことが、初めて分からないと感じた瞬間だった。


「だってさ、私は滉誠のことを知ってるから、私の価値観の範疇で収めるのは良くないって思った。反省の意味を込めて気合いを入れたってわけ」


「私もそうだよ、相手を認めるって言っておきながら君自身と向き合ってなかった。君がせっかく話してくれたのにね」


「ふふっ、ふふふ、あはははは」


こんなに笑ったのはいつぶりだろうか。心の底から俺は笑っていた。


「お前ら馬鹿じゃねーの、ほんとに。でもそっかありがとう」


色々と経験した大人達なら理解があるかもしれない。けど、同級生に認められたのは初めてで、心底嬉しかった。自由を初めて感じて、理解する。一番枠にはめていたのは俺だったんだと。


「ゆり、楓、本当にありがとう」


何度も感謝せずにはいられなかった。


「滉誠らしくなくて、気持ち悪い」


「まぁ、それほどまでに自分を追い込んでいたのかもね」


同情の目を向けられても今はなんだか心地よかったなんとなくだけど理解し合えてるそんなふうに感じてるから。


「じゃあ次の質問に行くよ。互いをどう思っているか素直に話そう」


そう言って皆がフリップに回答を書く。フリップの上をペンが走る音。行が変わるときのキュッと言う音とともにあく間全てがいとおしく感じた。自身が緊張していたことを今本当の意味を理解する。


「ゆりはひまわり。楓はカモミール。」


「ゆりは勇気をくれる人。滉誠は、異次元の達成者かな。」


「滉誠は不屈の遂行者。楓は聖母。」


「ゆりの聖母ってなに?」


楓が椅子から立ち上がり、驚いた様な嬉しそうな複雑な表情で見つめる。


「型にはめた見方をする人達のことを、理解したいと思える人間性に感服してる。」


ゆりは言い終わると何度か頷く。


「逆に滉誠は何で花に喩えてるの?」


「意味を沢山込めるという部分、雰囲気を表すのに最も適しているからかな」


「素でコレをやるんだから凄いよね」


「確かに」


「自分の感性が人とズレてることはわかってるから、解説させてください」


「どうぞ」


「ゆりはさ、自分が苦しい状況でも真剣に誰かを想い行動できる活力や芯の強さを感じてひまわりを連想した。」


「悪い気はしないね」


顔を少し逸らしている彼女を横目に見つつ、楓の方を向く。


「楓は、相手の心に寄り添う優しさや包容力。ゆりと同じく困難に立ち向かう力強さを感じた」


「楓と違って私には優しさがないもんね」


「そんなことはない。ゆりは自分が相手の問題を解決するって力強さを感じて、楓は寄り添って癒す方を連想しただけ」


「ほんとに〜?」


「本当だよ」


「まぁ、いいけど」


俺たちのやり取りをじ〜っと見つめる楓は何を思っているんだろう。そんな事を感じながら、陽の暖かさが心地よく感じる。

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