熱意
「卑怯者ってどういうこと?」
「逃げているだろう、今だって」
俺はゆりの目を捉えて話す。絶対に逃さないと。ここで逃したら、3日間がただ彼女と楽しく過ごして終わるだけの日になると確信しているから。数秒待つが彼女は何も答えなかった。
「俺は本気で向き合うと楓に言った。けれど、君は考えない方が楽だと思ったんじゃないのかもしくは考えることをやめた。だとしたら楓は自分の人生を他人に委ねてるっていうことだよね?」
「そう想ってるの?」
失望をした目で俺を見てくる。完全な拒絶に入っている人の目だ。否定された人間が心を閉ざす何も聞かないなんてことはよく知っている。それでも
「人のリアクションで私を見てくれないからってさぁ、自己中心的な考えだって思わないか?」
「へぇー自己中心的って想っていたんだ?どれだけ私が相手のために尽くしてきたか知らないよね?」
「そうだね」
「じゃあ、知った気にならないでよ。気持ち悪いから」
「自覚はしているよ。」
幾度となく人を傷つけてきた自覚がある。だからこそ、俺はここで楓との距離を詰めないと行けないと思うんだ。
「じゃあ問うけどさ、相手の為にってことは当然感謝されることを望んだんじゃないのか?」
「それは、」
無いとは言えないように、怒らせた。感情的になったら冷静な判断は出来ないからだ。
「でも、多くの人は感謝されることを望むでしょ?」
「当たり前だよ。誰かから反応を気にせずに生きることなんて出来ない。」
俺は一旦区切りをつけて、厳しい現実を突きつける。
「けれど、多くの人を基準にした考えは自分の考えじゃない。他の人がこうだから、誰々が〇〇と言ったからそれで結局は誰かのせいにできる言い訳だよ」
「救うためなんて言っていたけど、本心では私のことをこの世界に閉じ込めておきたいだね?」
「そんな事は絶対にない。だって俺は楓の事が人として好きだ。誰かに優しくできる事は素晴らしいし、行動している時点で俺よりもできている」
「さっきはけなして、今度は褒めるんだね。急にご機嫌取り?」
そんなんじゃ私は揺るがない、信じはしないと決意を持った目で見つめてくる。
「違うよ、偽善的だといっている様に聞こえたかも知れない。けど俺は偽善って言葉が嫌いだ。良い行動に対して偽も何も無いだろう。その行動自体は正義なんだから?」
俺が伝えたい部分は、楓を認めているということだ。
「ホントに君が分からない。拒否されて終わるって言う未来を想像できてないわけじゃないでしょ?」
本気で意味がわからないという表情で俺を見つめてくる。
「俺は、上手くいかない事を恐れて、前に進まないことこそが失敗だと想っている。」
「エジソンの成功の反対は失敗ではなく、挑戦しないことである。とかいう言葉に影響を受けちゃったのかな?」
「それはもちろんある。けれどね。俺は行動しなかったことを常に後悔しているんだよ。妹が君と同じ様に夢の世界の囚われたときにね」
この言葉を放つ時に、本気で俺を殺したくなる。激情を抑えられなくなって語尾が強くなるのが分かる。それでも、俺は感情を抑えることができなくなっていた。俺は、我にかえり楓の方に顔を向ける。
飛んだ、何を言おうとしていたのか、沈黙の時間が逃れる。早く何かを...息を吐き出して落ち着く。
「絶対に君と仲良くなるっていう強い覚悟と意志だけは持ち続ける。結局は気持ちの問題だと俺は思っているからね。」
「私はそういう理想論が...」
そこまでいって楓は言うのを辞めた。
「結局は滉誠は何がしたいの?」
「素直に感情をさらけ出そうってことかな」
「は?」
「楓は誰かに素直な感情を吐き出したことはある?」
「急に何なの?」
「答えてみてよ」
「それは子供時代ならあるでしょ?」
「今は?」
「無いけど、いや今さっきかな」
「それだけでも、案外楽になるもんだよ」
「いや、なってないけどね!滉誠への怒りと軽蔑しか湧いてこない」
「ふふっ、それで良いんだよ。本当に」
俺は心のそこから笑っていた。そんな俺を心底おかしなやつだと見つめる楓と疑心に満ちた目で俺を見つめるゆりがいた。
「さっき滉誠は本気で向き合うっていったよね?」
「いったな?」
「どんなことでもやる覚悟は出来ているってことかな?」
「もちろんだよ。どんな質問でもどんなことでもやってみせる!」
「じゃあ本当にどんな無茶でもやってもらうからっ」
「任せろっ」
「そのスカした顔を絶対に歪ませて見せる」
彼女の表情を見て思う。彼女はまだ自分の感情を整理出来ていない。俺をおかしな覚悟を持った人間というのは理解しているだろう。けれど、本気でこられることに若干の恐怖も感じているはずだ。見ず知らずの人間が本気で向き合ってきてるんだ意味がわからなくて怖いのが当然。それをフォローしてくれるのはゆりお前しかいないんだよ。俺は未だに静観しているゆりに託した。未来をいつも見つめて行動できる彼女に。




