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解なし

「コレには正解がない。君たちは半分かそれ以上とのことだが、どうしてもそう考えた。」


「私は、単純だよ。私が思う私と世間の決めつけた私の割合がそれが同じになれば私って言えるかな?」


ゆりが不満げな表情を浮かべながらも応える。


「つまり、評価という軸で自己認識と他者認識の割合で決まるのか?」


「少しニュアンスが違うかな、偽ってきた私が本当の私の様に感じ始めた時。全てが主観的な判断だよ。」


それもそうか。他者の認識などリアクションからしか分からない。


「私は評価軸は、多分他者からかな。先生からの評価、友達からの評価、家族からの評価、つまり客観的に見て私と言う人物をみんながどのように見てるかってことが1番重要かな」


「つまりは客観的な評価によって決まると言うことか?」


「そうだね」


楓は当然のことなのになぜ聞くのかと、ポカンとした顔で応える。


「では最終的な判断は誰がする?」


「それは私だよ」


「であればゆりと同じく主観とならないか?」


「相手のリアクションは主観じゃないでしょ?」


話が通じていないなと若干の苛つきを感じているのだろう。けれど彼女は無意識に気づかない様にしている事がある。それを突き詰めない限り、彼女はこの世界から出ることはない。


「相手のリアクションに対しての受け取り方は人によるではないか?」


「そう言われたら、そうとしか言えないけど」


屁理屈を言っていると非難をする様な目で俺を見つめてくる。


「じゃあ、具体的に何が、どんな評価があなたらしくて、あなたらしくないと感じる?」


楓にそう問いかけると難しい顔をしながら、応える。


「私が思う自然体な私と他者との評価のギャップだと思う。」


「もっと具体的に言うと?」


「わからない。わからないよ。だってそうでしょ?何が私なのかなんて知らないよ」


楓が初めて感情的になった瞬間であり、突破口が見えた瞬間でもあった。


「その通りだよ。君が悩んでる問題は君にしか解けない。だって答えなんてありはしないのだから」


「意味がわからないよ」


ゆりがその言葉に、拳を握っていた。服に皺がつくことも気にせずに硬く握られている。彼女は理解しているのだろう答えを出す事が重要でないことに。そして、向き合うことの辛さを。


「この問いに答えなんてありはしない。だから君自身が向き合うしかないんだよ。」


そう、この問題で一番厄介な部分は答えがないという事だ。結局は本人が向き合うしかない。


「辛いことを突き詰めていると思う。けれど問題を解決するときに1番重要なのは自己受容と素直さだよ」


「自己受容?素直さ?」


何を急に言っているのかという目で俺を見る。


「良い面も悪い面も自分と認める事、さっきみたいに分からないなら分からないという勇気が必要なんだ。」


「それをして何になるの?」


彼女は元の心を閉ざす状態に移行しようとしているのがわかる。嫌な事を避けるのは楽かもしれない。けれど、余計に考えるループに陥る。だから、


「君を知れる。俺は、その為に本気になる。どんな気持ちも否定をしない、俺も素直な気持ちで応える」


本気で向き合うという姿勢は相手に伝わるモノだ、嘘をついてもいけない。


「じゃあさ、滉誠先生私のことをどう思っている?」


「不器用な女の子。人を想いやれる優しい人かな」


「優しいね」


今まで何度も聞いたという呆れが入った言葉だ。


「それと、卑怯者」


俺は笑顔で応える。楓が俺を睨む。そこには先ほどと同じ様に強い感情が乗っていた。感情が本気で動かない限り、向き合うことなんてできない。第二フェーズの始まりだ。


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