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パラドックス

「次の授業は哲学です。まぁ高校に哲学なんで授業はないがちょっとした息抜きだと思ってくれ。」


俺は二人がポカンとしている表情を確認しながら、問いかける。


「ゆりと楓はテセウスの船と言うパラドックスを聞いたことがあるか?」


「私は名前だけは聞いたことあるよ」


「私はないかな」


二人が答えたのをみて、概要を説明する。


「テセウスと名付けられた船があったとしよう。古くなるたびに新しい部品に交換していき、すべての部品が置き換えられたとしたら、その船は元のオリジナルの船と同じ船か?ゆりと楓はどう思う?」


「先生意地悪な問題出すね?コレってつまりは、偽っている私は私であるかという問いを濁してるよね?」


「というと?」


楓は若干の苛立ちと、憎悪を向けた表情で睨んでくる。


「演じない過去の自分と、偽り続けている現在の私は同じかって事を問いかけるって事でしょ?」


楓と同じ様に偽ってきたゆりだからこそ、彼女の味方を出来ると踏んで、俺はこの話題を持ってきた。ゆりには、事前に言っていない。本気で俺に突っかかってくる必要があるからだ。


「二人ともそう睨まないでくれ。人は置き換えるものではないだろう?」


「そうかな、人の細胞は入れ替わっている。コレを人生単位で見るとする。環境により感じ方も思考も変わっていくなら、置き換わると捉えてもおかしくないよね?」


ゆりが俺を睨みつけながら、問い詰める。それは、絶対に逃さないという強い意志を孕んでいる。声量は小さいが、言葉の端々、語尾の強さから感じる。


「認めよう。だとしたら、君たちは何を持って自分を自分だと定義する」


「先生はどう定義するのかな?」


ゆりが俺にそう問いかけた。せめてもの意趣返しだろう。だからこそ即答する。


「船には竜骨という重要な部分がある。パーツ個々は特に重要ではない。最重要となるパーツが交換されない限り、私は同一と考える」


俺ははっきりと断言して答える俺は逃げないとゆりと楓はどうだと問いかける。


「滉誠はずるいね。この状態で問いかけるんだから」


ゆりには逃げる事が許されない状況で、楓と同じ様な思考を持つからこその問いかけと理解しているのだろう。


「私は、50%だよ。それがいい部品でも、納得がいない部品でもね。」


ゆりは、諦めたような少し遠くをみて答えてくれる。


「楓はどう思う?」


「私は51%かな。ゆりよりは範囲が少し広い。半分を明確に超えたら。それをいうと50.000と続いて1かもね」


何をさせたいのか、その先を見るためにポツリと呟く様に返す。俺はコレから二人に対して酷な質問を投げかける。それに対して、きちんと向き合う覚悟を決めてきた。

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