昼休み
競技は順調に進行していき、雫もまた、自分の出番を淡々とこなしていた。その姿を見ていると、「勝つこと」よりも「友達と一緒に楽しむこと」を優先しているように感じる。
人によって、競技との向き合い方って本当に違うんだな。そんなことを思いながら、雫のことを目で追っていた。
午前中の全競技が終了する。得点は相手チームがリードしているが、差はそんなに開いてない。午後からの巻き返しも全然可能だ。
「やはり、リレーが重要だったりするか?」
「あぁ、頼んだぜ滉誠」
「いや、お前も出るんだけどな」
そんな軽口を叩き合いながら、俺たちは昼休憩にはいった。他の学校だと家族とご飯を食べる光景を見たことがあるが、この学校は違うんだな。
そんな事を考えつつ、俺たちはご飯を食べた後抜け出して、体育館の側で二人集まっていた。
「にしても、今んとこ普通に体育祭って感じだな」
「逆に聞くけど、滉誠は何か起こると思ってたの?」
「いや、だって体育祭だぞ?もっとこう…熱い展開とか、イベントごととかさ」
「雫ちゃんは平穏を望んでるんだよ。そんなこと起きるわけないでしょ」
「ちょっとくらい変化が欲しかったけどな」
「雫ちゃん本人はめちゃくちゃ頑張ってんだから、そこは見てあげないと」
「見てるって。むしろ凝視してるから」
「それはそれでキモい」
「ただ応援してるだけなんだけどなあ…」
ふと、話題が過去に向かう。
「…案外さ、小中学校の運動会の方が盛り上がってたかもな」
「あー、それは言えてるかも。あの頃って何も考えずに全力で楽しんでたよね」
昔の自分たちと比べて、今の自分たちはほんの少しだけ、大人になっていると思うだから。
「今だとさ、やっぱりクラスの女子にどう見られてるかとか、クラスメイトにどう思われるかとかちょっと気にしちゃうじゃん」
「うん」
「自分をよく見せたいって気持ちもあるし……他の人にどう思われてるかって、少し引いて考えてる自分がいるんだよ」
俺の言葉に、ゆりは静かにうなずいた。
「滉誠が言いたいのって、つまり――雫ちゃんもそうなってきた、ってこと?」
「そう。進路の話とか出てきて、色々と選ばなきゃいけないものが増えてくる。もしかするとさ、人っていうのは、学べば学ぶほど、避けてた現実に向き合わなきゃいけなくなるのかもしれないな」
「嫌な現実だね。でも、、なんか分かる気がする」
ゆりは俺の言葉を噛み砕く様に、真剣な表情で考えていた。
「と言うか、滉誠が言うと真実味が出てきて普通に怖いんだけど」
「これが年の功って奴なんですかね」
「同い年でしょ」
ゆりは俺にツッコミを入れると同時に真剣な表情になる。
「でも、私達に出来ることがあるとすれば」
「あぁ、雫が現実を選択する手伝いくらいだろうな」
お互いに何も言わず、空を見上げた。涼しい風が吹いて、遠くでリレーの笛が聞こえる。
なんとも言えない昼休みを過ごして、俺たちは
午後の競技へと向かっていく。