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日常

「ではこの問題を、楓ちゃん」


ゆりは、真剣な表情で問いかける。もしも、先生をやったらこんな感じなんだろうと想像できた。


「はい、ホメオスタシスです。」


彼女の全力で協力するという意味を理解する。いい子ちゃんを演じているのが普段の彼女ということだろう。


「よくできました。」


ゆりが満足そうに、うんうんと頷く。


「次に滉誠君この問題の答えは?」


「 約8μm 」


俺は端的に答える。普段の授業風景であるように集中力を保って返す。


「正解」


何気ない授業の風景。何気ない日常をゆったりとした時間を過ごす。それは俺たちが彼女との関係を進める際に決めた1つである。限られた時間であろうと焦らない。彼女としっかりと向き合うと言うことを俺たちは誓った。


楓は想像以上に多くの物事を知っていて、ゆりも同様に多くのことを知っている。これは認識のすり合わせでもあり、そして楓と対等に話せるということへの意思表示でもある。1人じゃないというような感情をゆりの表情から感じた。


次は体育に決めていた。先生は俺で、2人でできる競技中でも距離が1番近いのは卓球という事から、卓球の授業を行う。


意外なことに楓の実力は高くゆり上回っていた。実際のポイント差は2ポイントか3ポイント位であるが技術的な面でもメンタル的にも落ち着いている分楓が負ける事はなさそうだった。


「滉誠先生、涼しげな顔で見てているね。」


少しイラついた表情でゆりが見つめて来る。


「そうだね、滉誠先生もやってみよっか」


楓もかなりの実力者である分、余裕が表情で俺を挑発する。


「わかった。その提案を受けようか」


それに乗る形で俺は卓球台の前に立つ。


楓のサーブから始まったラリーを2、3回ほど返して実力を測る。次に来た球をスマッシュで決める。確かにうまい方ではあるが卓球部程の実力ではない。負けず嫌いの俺があの時、練習しておいて良かったと思う日が来るとはな。結局、相手をバテさせての辛勝だったのは覚えている。


「相変わらず透かした顔はムカつくな」


ゆりが半ば俺を睨む形で、笑みを浮かべている。こいつも相当な負けず嫌いだな。


「確かにムカつくなー、その顔」


意外にも楓はギラギラとした目つきで俺を捉えていた。


「ねぇ、楓ちゃん、2人で滉誠先生を倒そうか。」


「そうしよう」


二人は真剣な目つきで俺を捉えている。俺は挑戦に応える様に告げる。


「かかってきな」


「あれ、素で煽ってるよね」


「あーいうタイプはモテないね」


声量も抑えている分、ヒソヒソと話しているつもりなのだろう。二人とも、やめてください。精神攻撃はマジで効く。


想定通りに物事は進む。確かに俺の打に返す球の速度について行けてないわけでなく、ステップなどの動きがついて行けてない事に気づいたのは単純にすごいが、チームプレイができていない。だから、油断していた。


3ゲームあたりから、雲行きが怪しくなって来る。自分の役割を理解した楓が守りを中心に動き、楓が反応できない部分を打ち返す様にする。


「滉誠先生バテてきているのかな?」


ゆりが煽って来るが俺は冷静に対処する。


「滉誠先生はこの程度じゃないよ、油断せずに行こう」


いや、ちょっと可愛こぶって言ってる分、楓も煽ってますよね!


楓は自分が届く範囲を返し、俺が崩れたらゆりが決めるなど適宜に反応をし出した。結果、徐々に拮抗していき、ついにゲームを落とす。


「負けた、、、」


おかしくない。急にそんなに伸びるものかと。


間抜けな顔をしていたのだろうかゆりと楓が2人で笑う。そして、喜びを分かち合う様に嬉しそうに抱き合っていた。そんな、ゆりと楓を見て思った、コレで良かったんだなと。

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