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ナイトメアシンドローム  作者: 夢見る冒険者
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信頼を得るために

「それじゃあ、二人が話したいことについて聞いてもいいかな?」


「うん。ぜひ、話させて欲しい」


そう言って、俺たちは向き合い、静かに語り始めた。


「一つ君に確認したいことがあるんだ」


俺は彼女の瞳をじっと見つめて、問いかける。


「――この世界を作っているのは、君じゃないか?」


急な確信に驚きの表情を浮かべる。


「……どうして、そう思うんですか?」


「俺たちは、これまでいくつもの世界を渡ってきただからわかる」


「そうですか」


彼女は俯いて何かを考えていた。


「それで、この世界から出るために何かが必要というわけですね」


「あぁ、必要なのは君が抱えている悩みを解決することだ」


「悩み...ですか?」


彼女は俺たちのことを見つけて考える。逃げることは可能なのか、等色々と考えているのだろう。


「……ゆりちゃんが、私に接してきた理由も、そういうことだったのかな?」


「そうなるね。と言っても他の方法も考えて色々な人に接してもいるけれど」


「それじゃあ、あなたも」


「あぁ、そうだ」


「どうしてこのタイミングなんですか?」


雫は、警戒するように少しだけ目を細めながらそう問い返した。


「これ以上、警戒されたら君と話すことすらできなくなると思ったからだよ」


俺は静かに答えた。


「……私とですか?」


「そう。君が俺をつけていたのは、これで二度目だろ?」


その言葉に、静香の目が大きく見開かれた。一瞬、息をのむのが分かった。


「……気づいていたんですね」


「あれだけ見られたらね」


「いや、滉誠が特殊だから」


急なゆりのツッコミに雫が呆気に取られている。ゆりのこういった何気なく空気を緩和させてくれることに助けられるなと感心する。タイミングを見計らってゆりが続ける。


「安心して。滉誠が特別なだけで、普通は気づかない。でも、貴方がこの世界を把握できてるとわかったのは、同じような世界を旅してきたからかな」


雫は少しだけ表情を緩める。そして、わずかに頷いた。


「なるほど……あなたたちが沢山の世界を旅してきたというのも、嘘ではなさそうですね」


「ああ。君と同じようにな人たちに出会った。そして、外の世界に出るためには、その人物が抱える悩みを解決する必要がある」


「……そうですか」


「そうだ」


雫は言いづらそうな、表情で一点を見つめていた。そんな彼女を安心させるように俺は告げる。


「すぐに悩みを打ち明けなくてもいい。こうして宣言したのは君と話せなくなるような状況にさせたくなかっただけだから」


彼女の目が少し揺れた。


「急に困惑される状況でごめんね、雫ちゃん」


その言葉に、彼女はほんの少し表情を崩した。

どこか申し訳なさそうに、困ったように、でもほんのわずかに優しい光を宿して。


その姿を見て思う。本当に優しい人物であると。彼女は何かを言いかけて、唇を閉じた。それが“痛み”であることが、俺には分かった。だからこそ、俺から宣言すら。


「俺の初恋は14歳年上のお姉さんだったんだ」


雫は思わずきょとんとした表情を浮かべる。


「一年後には、その人、結婚しちゃってさ。完全に玉砕した」


「えっと...」


「急にそんな話をされてみんな困惑してるんだけど」


ゆりがフォローするようにそう告げる。


「え?こういうのってさ、自分の方から言っといたほうがいいもんじゃないの?」


未だに呆気に取られている彼女に向かっていう。


「だってさ。相手の悩みを聞きたいなんて言いながら、自分のことだけ隠してるなんて、卑怯じゃん」


雫は一瞬ぽかんとした後、ふっと息をもらすように笑った。


「変な人」


思わず呟いたその言葉に内心嬉しさを感じつつ、冷静に答える。


「何故だろう、よく言われる」


「でも……ありがとう。そう言ってもらえるのはちょっと嬉しいです」


彼女の声には、まだ不安があった。けれど、小さな灯火のような、信頼の兆しが見え気がした。


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