三日間
「今回だけは、あなた達に協力をしてあげる。何がやりたいの?」
楓からの挑戦を受けて俺たちの行動は決まっていた。必要なのは奇抜なことではない。楓の悩みを取り除くこと。つまりは彼女との学校生活が重要となると。
「学校での合宿を行おう!3日間くらいは居られるとはずだ」
最初のダイブの時に、ちとせが起こしてくれた事がずっと疑問に残っていた。ゆりじゃなくて、ちとせが俺に抱きついていたことに。
ゆりに事情を聞いた所、俺の心拍数が基準をかなり超えた時点で起こしたらしい。つまり、実際よりも夢の時間は長く過ごせる事が分かった。コレが事前に集めた情報の一つである。
「ふーん。合宿ね。いいよ」
楓はこちらの真意を押し計りながら、返答する。何を求めている等当にお見通しだろう。
「まずは、学校で勉強を受けようか。」
ゆりの提案に?マークを浮かべる楓を見て思う。これからが本当の勝負になる事を。
「先生役が私。滉誠と楓が生徒役ね」
俺たち二人を見渡して、告げる。
「良いけど」
「オッケー」
楓と俺が了承したのを見て、学校へと移動する。
「そういえば楓は何で今の高校を選んだの?」
「両親が通っていた学校だからね。偏差値も私が挑戦するのに丁度良いから受けたかな」
ゆりが移動の隙間時間に話を振る。相手を知る事が重要だ。本気で相手を知ろうとする事が相手が心を開いてくれる一歩だからだ。
「すごいね、それで偏差値71がある所は凄いよっ」
「ゆりはどんな高校に通っているのかな?」
楓も質問を返す。コミニケーションを取ることよりも、深く知られたくないと言う意思を感じる。
「私は、選択肢が沢山ある高校を好んで、部活や農業など様々な体験ができる高校を選んだよ」
「へぇー。と言うと八国高校かな」
ゆりが驚きと感心をした様に、何より嬉しそうに返す。
「そうだよっ」
「と言うことは、私よりもレベルが高い故に教師役ってことかな?」
どんな意図があるのかって探る様にゆりを見つめる。
「違うよ。それで言ったら滉誠が一番適任だし」
これは会話を繋げるための一環でもあり、感情やコンプレックスを探るための質問でもある。楓が何で感情を動かし、どんな言葉に反応をするのか俺たちは知っていく必要がある。
「滉誠ってそんなに頭いいんだね」
へぇー、意外と言う顔で俺を二人が見つめてくる。それは、一番俺が理解しているよっ。
「いや、俺は試験のためにかなり勉強させられてきたからね。土日でも12時間は当たり前にやってたしな」
「「12っ」」
二人揃って驚いているのは、何だか気分がいいな。二人は見合ってうんうんと頷く。
「だから、私たちに対してちょっと挙動がおかしかったんだね」
「そうだね」
ゆりと楓がうんうんと頷く。
「それは、男子校のせいです」
素直に女子慣れしていないせいで、テンションがおかしな自覚はある。けれども仕方がない。慣れていないんだから。
そんな会話をしながら俺たちは、学校へと辿り着く。これから3日間過ごす場所であり、楓との関係が決着する場所でもある。
3人とも思い思いの感情を抱きながら足を踏み入れた。