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私を見て

「滉誠くんはゆりちゃんのことをどう思ってるの?」


無邪気な顔で楓は俺に聞いてくる。ゆりの前で素直に答えられるのかと俺に問いかけてくる。


「めちゃくちゃかわいいと思ってるし、意思が強いところが、本当に素敵な女性だと思う。何より、周りのことを見て行動できる彼女を俺は信頼している」


素直な気持ちではっきりと俺は宣言する。


「へーじゃあ付き合いたいと考えてるわけだ」


にやにやに近い笑みを浮かべて、こちらを覗き込む様に上半身を折り曲げて聞いてくる。


「いやそれはない」


即答した俺をゆりがぱっと振り向いたことに意識が一瞬持ってかれる。


「だってよゆりちゃん」


残念だねーという顔でゆりのことを見つめる。


「そうね、滉誠はひなちゃんが好きなんだもんね」


にっこりと微笑んでいる彼女を見て動揺する。

待っておかしくないなんで2対1の状況になっているんだよ。


だけどもゆりの目を見て理解する。信頼してくれてるってことを。この状況でも瞳の中から強い覚悟が伝わる。仲良くなる為に彼女の味方をするのだと理解した。だから俺は全力で答える。


「好きかは分からないが、人として気になっている」


「ヘェ〜、ひなちゃんって子が好きなんだね。どんな子か教えてよ」


考えろ、彼女はどんな事を求めている。その予想を反するにはどう返せば良い。


「誰よりも冷静に物事を見ている点。だからこそ、人と距離をとってしまう所かな」


それはヒナの気になる部分でもあり、楓に向けたメッセージでもあった。俺は楓の瞳から目を離さない様に、しっかりと見つめて話す。


「そう。」


楓は諦めた様に、深くうな垂れて数秒間目を瞑る。


「君は諦めてくれないわけだ。ゆりちゃんもね」


俺たち二人を冷静に見つめてポツリと呟く。


「君たちをナイフで脅しても意味がないよね。」


そう言ってナイフをゆりの方に投げる。ゆりは一歩も動かずに静止する。頬を掠って顔に切り傷がつく。それでも動揺をしなかった。


「滉誠くんは顔に傷がついたゆりちゃん見てどう思う?」


「より好きになったよ。ゆりはゆりなんだなって」


「だよね... うん。うん。そうだよねっ」


何が嬉しかったのかは理解ができない、けれど彼女の表情はこれまでの偽りの表情ではなく、本当の感情が浮き出ている様に感じた。


「あなた達は私を助けたい。理由は分からないけれど、覚悟もある。」


「「そうだね」」


俺とゆりは即答して答える。


「きっといつかの私は流されて、日常に迷いながらも戻っていくんだろうね。きっと。」


空を見上げながら話す彼女は未来の姿を見ているのだろう。


「だから、今回君たちが私を心の底から生きたいと思わせられなかったら私は会わないことに決めた。君たちもそれで良いかな?」


なんて事のない問いだ。彼女ならその選択をするだろうとゆりが予測していた。その時に答えた言葉をそのまま返す。


「当たり前だろ」


「当たり前でしょ」


しっかりと彼女の瞳を捉えて、俺たちは答える。


その時、やっと彼女が少し微笑んだ表情を見る事ができた。


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