討伐
白い炎を纏ったサイフォスが宙に浮いた様に、壁から離れる。圧倒的な存在感を放つサイフォスが地面に降り立つと、白い炎が消えた。
纏っていたオーラが彼の体に収束し、髪とマントが重力に従って落ちていくのを見届けながら、俺は息を呑んだ。
同時に、このまま戦いが始まれば、足を引っ張る事を察する。
「サイフォス、リカードを任せていいか?」
そう問いかけると、彼は無言で頷き、近くに転がっていた剣を拾う。
その姿を確認すると同時に、俺は残った敵兵の方へと駆け出した。
敵兵の大将が警告する様に、告げるが、遅い。剣を振るい、次々と敵兵を斬り伏せていく。先輩たちも呼応するように動き、戦場は一気に俺たちの優勢へと傾く。
気づけば、残る敵は八人。1対2の構図になる。敵兵が被る位置に移動して、1体1に持ち込んで倒す。返す刃で敵の剣を弾き、もう一人も倒す。
他の先輩方も敵を切り伏せて、残りは大将とリカードのみとなる。
焦った敵の大将は、心愛を人質にしようとナイフを振り下ろすがバリアに阻まれて一向に攻撃が通っていない。
俺は颯爽と駆けていき、敵の大将に迫る。何を思ったのか分からないが、心愛の下に引いてある木の板を持ち上げ、心愛を持ち上げて逃げ出す。
俺が斬りかかろうとすると、心愛を盾にする様に俺と向き合った。先輩達もその様子に気づいてこちらに駆け寄ってくる。
その瞬間敵は心愛をこちらに放り投げて、攻撃に移行する。俺は心愛を片腕で受け止めて、敵の剣を片手で防いだ。
技量としては、一般兵よりは上って感じか。何度か剣撃を防いでいると、駆けつけた先輩によって、敵の大将は囲まれて取り押さえられた。
俺はゆっくりと心愛を降ろし、サイフォスの戦いへと目を向けた。
剣が交わる音が響く。
一撃一撃に、力がこもっているのがわかる。
リカードも、両手の剣で受ける形に追い込まれていた。さらに攻撃が重くなったか...
スピードも今までより早く、正確に、敵の体制を崩す様に攻撃を紡いでいっている。
今までの急所に的確に攻撃するスタイルではなく、敵に勝つための戦略的に倒すスタイルだ。
カンッカンッと続いていた撃ち合いも、段々とサイフォスが押しているのが分かる。相手の重心を崩して、力でも圧倒している様だった。
剣を弾いて、体勢が崩れたところに斬りかかると見せて、防ぐ武器に合わせて剣撃を放った。その時、初めてリカードの表情が崩れた。
剣は弾き飛ばされて、一本の剣のみになる。リカードが両手で持って攻撃しようとした一瞬を見逃す事なく、リカードを切り伏せた。