選抜
さて、これから対策を練っていく。団長はすでに、集めた10名で作戦を決行すると判断したようだ。他の団員に対しては、部屋に入らないため、待機を命じていた。
「団長、敵の居場所は分かっているのですか?」
団員の問いに、団長は頷く。
「幸いにも、王女が身につけていた魔道具が反応している。その間は、少なくとも彼女が無事である証拠だ」
団長は一枚の地図を広げた。そこには、点滅する緑色のマークが刻まれている。俺たちの国から、徐々に離れていっているのが分かった。
「これが現在の王女様の居場所ですか?」
「ああ」
「なら、なぜすぐに助けに行かないのですか?」
そう問いかけたのはサイフォスだった。彼は珍しく動揺していて、団長に詰めよる勢いで問いかける。
「安心しろ。すでに王国の近衛兵が動いている」
団長は落ち着いた口調で言ったが、サイフォスの顔には焦りが滲んでいた。
「……じゃあ、俺たちの役目は?」
「この地図があるということは、俺たちにも何か指示があるんでしょう?」
俺はあえてゆっくりと言い放つ。冷静にならなければ、どんな失敗を招くかわかったものではない。内心の焦りを隠すためにも、ゆっくりと話す。
「あぁ。王国騎士団から、俺たちに依頼が入った。潜入部隊として、王女救出に向かえ、とのことだ」
「潜入部隊……ですか?」
団長は俺たちを見回し、5名の名前を呼ぶ。その中には、俺とサイフォスの名もあった。
「今選んだ5名を潜入部隊とする。魔法を持たない者を選んだのは、魔力探知に引っかからないためだ。だが、魔力に優れるサイフォスは必要になる。敵の罠を回避するためにな」
「はっ」
サイフォスが短く返事をする。
「私と副団長のルイスは、途中までお前たちに同行する。残る3名はここで王国騎士団と連携を続行しろ。何かあれば、連絡用の魔道具で報告しろ」
「了解!」
「はっ!」
命令が下ると、俺たちはすぐに準備に取りかかった。
「王女を誘拐した以上、彼らは相当な手だれか、彼女に近づけるだけの人物である可能性がある」
団長は注意点を事前に伝えていく。同時に、思考に意識を向けることで、冷静に対処する様にと案に告げている。
「その上で、騎士団の鎧は目立ちすぎる各自潜入用のローブに着替えろ」
そう言って用意されたローブと服装に着替えていく。その間もサイフォスは気が気でいのだろう。点滅する地図をずっと見つめていた。
着替え終えた俺達は、魔法で周りに誰もいない事を確認し、裏口から静かに宿舎を後にした——。