97 将軍足利義輝4
97将軍足利義輝4
「そうかそうか!それはよかった。送った甲斐があるよのう。では、その太刀に合う脇刀もいるよのう。薬研藤四郎を其方に送ろうではないか。これは感謝の気持ちと同じく刀剣を愛するお主にだからこそだ。これからも余のことを支えてくれ。」
脇差の贈与は、信頼の証であり、将軍からの私的な恩義でもある。治頼はそれを受け取ることで、幕府からの信頼をさらに強固なものにした。
「ははっ!」
俺は義輝の前を辞した。
今回の収穫は大きかった。合法的に黒鍬を送り込める上に、何かあった時に若狭への介入をしやすくなる。それと六角の噂を流してやろう。若狭は貧しく荒廃している。民は近江へと流れますます若狭は厳しくなる。そこで何も起きないはずがない。
民の流出は、領主の権威を揺るがす。六角の噂が広まれば、若狭の民心はさらに離れる。治頼は、戦わずして崩す策を既に描いていた。
なにか起きようとしないなら内部から揺さぶって煽ってやるさ。さて家臣達に名前を与える為にもさっさと安濃津城に戻るとするか!
帰る途中で観音寺城へ寄ったところ、浅井親子を俺の家臣として連れて行けと親父殿から許可を頂いたので遠慮なく連れて帰ることにした。
浅井家は近江北部の名門。彼らを家臣に加えることで、治頼の勢力はさらに広がる。父の許可は、家中の再編を進める合図でもあった。
「二人とも久しぶりだな。二人から俺についていきたいと父上に嘆願したんだってな。良かったのか?現当主ではなくて。」
治頼の問いには、試す意図もあった。家の名よりも人を選ぶ覚悟があるか――それを見極めるための一言だった。
「はっ、私は昔から亀松丸様の元で共に働くことを夢見てましたから。」
そう言ったのは賢政だ。賢政の言葉には、少年期から抱いていた憧れが滲んでいた。治頼のもとで働くことは、彼にとって夢の延長ではなく、志の実現だった。
「救って頂いた命、あなたの元で使いたく思いまする。あなた様の実施なされる内政は私にとってお手本にすべき最高のものです。これからも学ばせてくださいませ。」
久政の言葉は、命を救われた者の誓い。彼は治頼の内政を見て、理と情の両面に惹かれた。浅井家の未来を、六角の中に見ているのだ。
それに続いたのが久政だ。彼らにも名前を与えることになるのだが、さてどうしようか。名を与えるとは、家臣としての覚悟を問うこと。浅井親子にどの文字を授けるか――それは彼らの未来と、六角の血脈を繋ぐ選択でもある。




