95 将軍 足利義輝2
95 将軍足利義輝2
「うむうむ。お主が言っておった水軍も用意できる様になりこれで三好との戦に臨めるの!」
いかにもと周りの幕臣共も同調する。三好との戦を語ると、幕臣たちは目を輝かせる。だが、彼らの期待は表層的だ。俺はその裏で、勝ち筋と損耗の計算をしている。
「はっ、あと数年もすれば六角水軍艦隊が三好の背後を突く様になれることでしょう。そこで三好を倒す為に公方様にお手伝いして頂きたいことがございまして…。」
あと数年というところで眉を顰めたがその後の助けて欲しいということに気分をよくしたのか直ぐに元に戻った。
「どうしたのじゃ?官位が欲しいならば御供衆に任ずるぞ?将来は祖父の様に管領代でも目指すかのぅ?」
管領代――祖父の名を継ぐ重責。義輝の言葉は冗談めいているが、将軍としての期待が込められているのは明白だった。
「はっはっはっ、お戯れを。私如きが管領代などと大それた事はできませぬ。それに、私はまだ元服したとはいえ父から学ぶ身、その栄誉は三好をどうにかした後に頂きましょうぞ。それとお願いにございまするが、公方様が期待を寄せている尼子殿との仲介を頼みたいのです。三好と雌雄を決するならば我々だけではなく尼子殿などと協力した方が…と思いまして。」
尼子との連携は、三好包囲網の要となる。将軍の威光を借りて、外交の道筋を整える。俺の狙いは、戦を始める前に勝ち筋を作ることだ。
義輝はさらに高笑いを始めそうなほど嬉しそうにしている。
「そうか!そうか!分かったぞ!一筆認めようではないか!尼子に六角!この2家が手を組めば三好なぞ!今年は楽しい年末が楽しめそうだのう!」
義輝はまるで子供のように喜んでいる。だが、その笑顔の裏には、三好への苛立ちと、六角への期待が確かに見えた。
幕臣達も高笑いしたそうにしているな…
「はっ、今年も私どもが貢物を持ってきまするゆえ盛大に楽しんで頂ければと…。それともう一つ公方様のお心を軽くするために取り組みたいことがございまして。」
俺の言葉に、幕臣たちが再び耳を傾ける。貢物は表向きの礼。だが、次の提案こそが本命。将軍の心を掴むための一手だ。
「ほう?其方はほんに足利の忠臣よのぅ。なんじゃ言ってみよ。」
「はっ、公方様の義兄弟であられる若狭殿へ米などの支援をしたいと思っておりまする。勝手に他国のことに介入したりするのは心苦しいのですが…。」
若狭武田は将軍の義兄弟。その支援は、六角の忠誠を示すだけでなく、北陸への足掛かりにもなる。俺の狙いは一石三鳥だ。




