77 具房
77具房
北畠侍従具房が驚いた様にこちらをみる。
「治頼殿も先代に押しつぶされそうなことがあるのですか?私の聞く限りでは治頼殿も先代や現当主と比肩すると聞いておりまするぞ。」
「いえ、噂は噂にございましょう。父や祖父は家臣達からの信頼も厚くまだまだだと感じさせられまする。やはり具房殿も参議殿との差に苦しんでおられるのでしょうか?」
少し苦しそうに顔を歪めた後こちらを見る。
「ええ…、私はこの体でしてね。元々横に大きくなる前はこれからに期待されてはいたのですが私には才がありませんでな。刀を振っても馬に乗っても弓を射っても上手くいきませんだ。」
「では、指揮と統治で頑張るしかありませぬな…。私もそちらで頑張ろうと思っておりまする。それに、身体を動かすのが不得意でも活躍できる武器もございまする。今度手紙と一緒に送らせて頂きまする。」
「ありがとうございまする。これからもよしなにお願い致しまする。」
従兄弟殿と談笑していると父や祖父が呼んでいるので話を切り上げて二人でそちらに向かう。
「母上!」
従兄弟殿がそう言いながら側による。この女性が参議殿の北の方、つまりは叔母上か。
「お初にお目にかかりまする叔母上。六角治頼にございまする。」
「ええ、話はかねがね。話だけではありますが、本当に大きくなったのですね。具房とも親しく話していた様で嬉しいです。これからも六角と北畠共に栄えられる事を望んでおります。」
これは牽制かな?やりすぎるなという事だろうか。
「はい、具房殿とも話していましたが共に手を携えて頑張っていこうと意気込んでいた所にございまする。」
「そうですぞ、母上。おきになされるな。」
「それよりも参議殿の気分を大きく損ねてしまった様で、そちらの方が気になりまするな…。」
俺が申し訳なさそうに言うとバツが悪そうに具房と母親が目を伏せる。
「あの人としては伊勢の統一は悲願ですから…」
この悪くなった雰囲気を変えようと話題を転換する様に見せかけて追い打ちをかける。
「そ、そういえば具房殿には兄弟がいらっしゃるとか私にも義定という弟がいて、大叔父の大原家を継ぐ形で今も勉学に励んでおりまする。今度紹介致しまする!」
「そうでございまするか、六角殿の兄弟は仲が良い様で羨ましいことにございまするな。」
「というと、具房殿は…」
「いえ、仲は良いのですけども。父が…。」
「具房!」
それ以上のことを言うのはダメだと言う様に北の方が遮る。
「叔母上、従兄弟殿。何かお困りごとがあればすぐに私たちに申し出てくださいませ。出来ることの範囲でお助け致しまする…。」




