72 義賢の決断
72義賢の決断
長野工藤氏の先代である長野稙藤が俺の元にやって来た。丁重に扱い面談の機会を設けた。
「お久しゅうございまするな。稙藤殿。」
「うむ、浅井との戦以来であろうかのう。あの時は定頼殿の元で頑張ったものよのぅ。」
「えぇ、最近では浅井も傘下に収まり近江全体が豊かになりつつありまする。特産品もできたので今年の年末にでも長野にも送らせて頂こう。」
「それは忝のぅございまする。近江だけでなく伊賀やこの伊勢も六角殿は豊かにされるので?」
ふむ、まずは小手調べといったところかな。
「えぇ、まぁ。伊賀は息子が取りまとめた様なものですが、伊勢に関しましては我々を頼って来てくれたものを見捨てるのは武士道にま反すると思いましてな、公方様たっての願いでもありまするので伊勢でも頑張っているだけにございまする。」
「なるほど、大義名分はあると。はぁ、隠し立てしてもしょうがないのでお聞きしまするが、我々が六角家に降伏する際はどの様な条件が必要となりましょうか。」
いきなり本命が来たな。しかし、対応は変わらぬ。
「他の方々と同じにございまする。持っている土地の管理運営権を全て渡す事、俸禄で報いる制度を受け入れる事。ただそれだけにございます。」
「なんと!我々の領地を減らさないので?」
「我々はあくまで土地の管理運営を行うだけです。その代わり貴殿らが確りと働いていない場合は元の状況よりも悲惨になることを忘れないでくださいませ。」
長野稙藤は驚いて考え込んでいるな。もう一つ二つ強めに押すか。
「それと六角の傘下に入るのならば軍役は無くなりまする。六角家が希望者のみの兵士を訓練し揃えているので、もし武官として働くならば兵を徴兵せず練度の高い兵を指揮してもらいまする。文官ならば土地の管理運営を六角のやり方に従って行うことになりまする。」
長野稙藤が覚悟を決めた様にこちらをみる。険しい表情をさらに強張らせている。
「もし、六角家にお世話になった場合、我々は北畠に引き渡されるのだろうか。勿論我らは武士、北畠と争った結果死ぬ事は特に不満はない。しかし、六角に降ろうとも北畠に処されるのならば最後まで抵抗する覚悟がありまする。」
なるほど、そう言うことか。北畠と六角は縁戚にある。それを警戒しているのか。
「それはないな。北畠が何を言ってこようとも六角家に降ったのだ我々が好きにしようと問題にさせぬわ。安心されると良い。だが、交渉次第ではいくつかの土地は差し出す可能性がある事は努努忘れられるでないぞ。」
「はっ!」




