71長野藤定の決断
71長野藤定の決断
天文24年1555年 6月 長野藤定
「殿、もう我々になす術は…」
「クソが!伊勢を統一するのは我々だと奮起してきた結果がこれだ!なんのために六角と和睦し北畠を再度攻めたのか分からんではないか!」
藤定はこのどうしようもなくなった状況を嘆いていた。父の時代から北畠とは長年伊勢の支配権を巡って争っていた。最初のうちはこちらが優勢だったのが徐々に徐々にこちらが押され始め1548年の大敗で不利になった。
「そう嘆くな藤定よ。潮時だ。長年精魂尽くして来たがもう我らの行く末を決めなければならないところまで来てしまったのだ。」
父である稙藤が諭す。
「ですが…!何故今になって六角が…!浅井攻めも手伝ってやったと言うのに!」
「調べさせたがやはり、六角からこちらに調略の手がが伸びていた事実はなかった。皆自発的に六角の傘下に収まりたいと臣従を申し出ておるのだ。」
「証拠がなくとも六角が我々の邪魔をしているのは事実にございましょう!?」
藤定としても分かっている。長野工藤氏は戦国大名になり損ねたのだ。しかし、今までの努力が無になった気がしてどうしようもなく当たり散らしてしまったのだ。
「今!我々がどうするかを決めねばどんどん家臣達は離れていき長野の勢力圏、領土が減るだけだぞ!当主であるお主が冷静でなくてどうするのだ!」
父親に胸ぐらを掴まれ叱られた。
「…はっ。六角の条件はどの勢力にも変わらず領土の管理運営権を渡して六角の奉行として働き俸禄を貰う形です。北畠は…分かりませぬが碌な条件ではないでしょう…。父上はどちらが良いと思いますか?」
父が元の席に戻る。周りの家臣達は皆悔しそうにしている。
「ワシとしては六角じゃな。定頼殿、義賢殿、そして幼いながらも名を馳せ始めた治頼殿と3代に渡って優秀な当主が揃っておる上に近江を統一し、伊賀も治めて、現在北伊勢も手に入れようとしている。勢いがあるのは六角じゃよ。それに比べて北畠は我らと争いすぎた。きっと苛烈な仕打ちをされるだろうし北畠がこれ以上勢力を拡大するには、大和か和泉、尾張に手を出すしかない。それを考えれば六角しかないて。」
父の言葉に北中部の国人達は大きく頷いている。実際俺もそう思う。
「私もそこに異論は有りませぬ。しかし、六角と北畠は縁戚であります。そこで六角から北畠に我々を差し出すと言う可能性も捨てきれませぬ。それならばいっそ…。」
この言葉には全員が黙りこくってしまった。
「一度、話し合ってみるか…ワシが名代として梅戸まで出向こう。戦準備をしている義賢殿へと会いに行ってくる。」
「頼みまする!」




