148 若狭後始末
148若狭後始末
永禄1年1558年 6月 六角治頼
治頼は、若狭の騒乱を収めた直後、政治的決着をつけるために石神館へと向かった。義輝への面会は、孫犬丸の後継を公的に認めさせるための重要な一手であり、六角の後見を正当化する場でもある。治頼は、戦場での勝利を政治の場で確定させるため、慎重に準備を整えていた。
治頼は、孫犬丸を別室に控えさせることで、義輝との対話に集中できる場を整えた。謁見の間には幕臣たちが並び、空気は張り詰めていた。義輝の足音が近づくにつれ、治頼は深く頭を下げ、礼を尽くす。政治の場では、言葉以上に姿勢が物を言う。治頼は、若狭の未来を背負ってこの場に立っていた。
「うむ、苦しゅうない。面をあげよ六角伊賀守。此度は、急ぐ報告があり直接出向いたと聞いておるが何か起こったのか?」
義輝の声は落ち着いていたが、内心では何かを察しているようだった。治頼が直接出向いてきたことは、ただ事ではないと感じていた。面を上げた治頼の表情には、戦場の疲労と政治の緊張が混じっていた。義輝は、六角が何を持ち込んできたのかを見極めようとしていた。
「はっ、お手を煩わせることなく問題を解決しようとしたのですが、問題が起きてしまい報告と相談に参った次第です。」
治頼は、あえて「問題が起きた」と言葉を濁すことで、義輝の関心を引きつけた。普段は報告を文で済ませる治頼が、直接出向いてきたこと自体が異例であり、義輝にとっても緊張を呼ぶ展開だった。治頼は、義輝の反応を見ながら、話の核心へと慎重に進めていく。
「ほう?其方がそこまで言うのは珍しいこともあるものだな。何が起こったのだ。説明してみよ。」
義輝は、治頼の慎重な口ぶりに違和感を覚えつつも、興味を示した。六角が自ら報告に来るということは、ただの騒乱では済まない事態が起きたと察していた。幕臣たちもざわつき始め、謁見の間には緊張が走る。治頼は、義輝の反応を見極めながら、若狭の騒乱の真相を語り始めた。
「事の次第としては、若狭についてです。先々月、若狭武田当主である武田信豊殿から家内の騒乱と一揆を収めてほしいと要請があり、許可を得た元で援軍を派兵したのですが、そこで問題が起きたのです。」




