130若狭侵攻6
130若狭侵攻6
そのうち戦闘に参加せず周りを索敵させていた伊賀の者達から伝令を出し続々と増援として控えている軍を呼び寄せた。
次の日の朝から体調が良くなった熊谷一党は自主的に治政の側で仕え、兵達も六角達へと協力的に周辺の地理や道などを伝えた。
熊谷の者たちは、かつての敵であったにもかかわらず、六角軍の秩序と礼節に心を動かされていた。彼らの情報は、国吉城攻略の鍵となる地形図の補完にも繋がった。
これらは、治益に大倉見城の攻略を任せられてから僅か1週間の話であった。
「治政様、治益様から大倉見城にて朝倉までの道を最優先で整備し制圧のための増援の兵も派遣するように指示が来ております。こちらが文になりまする。」
伝令が持ってきた指示書を読み進めるとすぐに治政は雨森に命じて、援軍として大倉見城まで来ていた1000の農兵とは別に500の足軽兵を国吉方面へと向かわせた。
治政は、文を読み終えるとすぐに雨森に目配せした。戦場では、判断の速さが命を分ける。雨森も即座に動き、足軽兵の編成と出発準備を整えていった。
永禄1年1558年 5月 滝川治益
治頼様から任された治政殿に武功の機会と実力の証明の場を与えて治益は朝倉を抑えるために国吉城へと足を進めていた。
「治政殿をお一人にして良かったのですか?」
「良いさ。あの男は一国を任せられる男だと思っている。それだけの気概と才はある。この程度の試練超えられぬようならそこまでと言う事だ。」
「中々に手厳しいが、期待も重いのですな。」
「当たり前であろう、俺の競い合う相手となるであろう男だぞ。」
治益は、治政をただの後輩ではなく、六角家の未来を担う同志として見ていた。互いに切磋琢磨することで、六角の武威と統治力を高めていく――その意識が言葉の端々に滲んでいた。
口元を大きくにやけさせて治益は馬を進める。副官である男もそれに合わせて馬の足を早めさせた。
「さて、そろそろ粟谷殿がいる国吉城につきまするぞ。」
「そうだな。信豊殿から貰った文を届けるようにしてくれ。」
「はっ!」
横にいた伝令が信豊殿の文を懐に入れて国吉城へと馬を駆け足で走らせる。国吉城が遠くの目の先に見え始める。
「お前達!気を引き締めろよ!敵ではなく味方なのだ!武力を示すのは戦ではなく我らの行動だと心得よ!」
「はっ!」
今までも揃っていた足並みがザッザッとさらに音を合わせていく。
兵たちは、戦場での威圧ではなく、秩序ある進軍で信頼を示すように訓練されていた。治益の言葉は、武力ではなく礼節で味方を得るという六角家の方針を体現していた。




