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爪なき鷹2  作者: 叡智の神殿
幼年期
4/4

1.02 催夢

 私は夢を見ている、と気づいたのは起きた後。あまりにもリアルなので最後まで夢だと気づけないままだった。夢の中でするパンチがふにゃふにゃで力が入らないのに気付いて、おかしいなと思ったら起きてしまった。日月には話せないが現実世界では味わえないような私はすごい体験をした。

 私は物凄い深い森を孤独にただ歩いていた。今すぐここから逃げ出したい、と思いながら、いつもは日月がいて孤独は感じていなかった。だから、今この状態は人生で未だかつて味わったことのない孤独感であるということだ。そのせいか分からないけど幻覚なのか日月を見た。私は全力で彼に近づこうと必死に走った。なぜか走っている最中に鬱蒼とした森は徐々に視界が良くなり、彼に触れられる距離にまで接近したら草原になったていた。私は彼に抱き着いて安心を感じた。今まで本当につらかった。私は彼に抱きかかえられて、というより肩に担がれて荒れた川を越えて、どこかに移動していた。暫くすると都市が見えて人間が気持ち悪くなるくらいたくさん見えた。そのせいなのか、人々は成年に差し掛かる男性を崖から海に突き落とすようになった。それには私の身元保証人の日月も含まれていた。私を担いだまま荒れた川を越えられるほど彼は遊泳能力があるのだから、崖から突き落とされて溺れている若い男性を見ながら日月ならきっと崖から海に落とされても泳いで帰ってきてくれる、と楽観的に思っていた。しかし、私の予測とは違っていた。彼は突き落とされる直前に、遊泳能力が高いことを見抜かれていたのか、とても重そうなスイカみたいな大きさの鉄球を足首に括り付けられて突き落とされた。予測していた事態と異なっていて私は茫然としていた。彼は恐れるそぶりを見せずに海面を向いたまま落ち海に沈み、そのまま浮かぶことがなかった。私は背徳感に苛まれた。なぜおかしいと思って止めさせなかったのか、なぜ突き落とされる前に彼と共に逃げなかったのか、喪失感と後悔だけが私の背中を傷つけている。彼はもう帰ってこない。なぜ社会はこんなにもいびつで不健全なことが出来てしまうのか。私はもう都会には行かず、来た道を帰っていった。私が日月に抱き着いた草原に到着した時、日月は再び姿を現した。彼は死んでいなかった、と思ってその人に近づいたけど人違いだった。私は深い森に帰り日月の再来を願い続けた。しかし、会ったのは日月とは違った。人間というより精霊に近い、憧れるほど美しい女性が私の横に近づいた。

「自分を大切にして欲しい」

とその女性は言った後、私から遠ざかっていった。すぐに、妖精のような美女とは違う、初対面から敵対的だと感じられる杖を持った魔法使いが見え、そして言った。

「貴様は人間だ。取るに足らぬ道徳の化身。目先の欲ばかり目を向ける射幸心の権化。今ここで滅びねばならぬ」

そう言って、魔法使いは青紫色の魔方陣を彼女の背面に現出させ、私に向けて青紫色の火球を弓矢くらいの弾速で放った。私はそれを手の甲で弾き、手の甲には魔方陣が出来ているのに気が付いた。再び魔法使いは青紫色の魔方陣を彼女の背面に現出させ、私に向けて青紫色の火球を弓矢くらいの弾速で放った。前回同様、私はそれを手の甲で弾き、やはり手の甲には魔方陣が出来ていた。魔法使いは冷笑的に言った。

「我らから逃れられると思うなよ、人間。お前たちが我々にしてきたことを返してやる」

私が今まで魔法使いだと認識していた存在は大きさを保ちながら複数に分裂し数えきれないほどの人間サイズの昆虫になって私に接近した。私はその場から逃げ去ろうと必死に走ったが、トノサマバッタのような風格の生物に追いつかれ背中を噛みつかれた。嚙まれた部分は服を貫通し、肉を抉った。私は後ろから強く突かれその場に倒れて押さえつけられた。私はその場で食べられることはなかった。トノサマバッタは元来草食だ。私は建物に連れられ、アリの巣のような、しかしエレベーターはある地下施設に収容された。私は隙をついて脱走しようとした。昆虫たちは特徴的な風切り音のような呼吸音を発していたので簡単だった。私はエレベーターで地上に向かった。地上出た途端、特徴的な風切り音のような呼吸音を非常に近く、恐らく出て左側2~3m先にいるのだろう。私は音のする方に全力で接近し、人間サイズのカミキリムシがいたので、全力で脳神経がある部分を殴った。が、全く力が入らず威力不足に感じたので、カミキリムシの頭部と胸部の間の節をへし折ろうとした時、

「やめたまえ、君は私のことを無垢の巨人の様に見ているのか。複眼の視神経は表面に存在し、複眼の間には脳神経が君が思う以上にびっしりと詰まっている。昆虫はあなたが思う以上に脳が大きく賢い。遥か昔、このことを理解して我々と一時的に協力関係になった少女がいたのだ。その人は蟲を愛し、蟲に愛されていた。その記憶は我々、全ての蟲に共有されている。我々は個にして全体なのだ」

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