二つ目の願い 猿と蜥蜴への願い
きっといつだってボクの目の前には不思議なことが広がっているに違いない。でもボクの眼はそれを捕えることなんてできないからボクはしょうがないと何時だって諦めているの。
真央は電波系の少女でもあった。それは学級でも知らないものはいないぐらいの電波系である。その明るさと人懐っこさからクラスの人気でいられるものの。もしただの電波系少女であったらただの変な少女であり、嫌われていたかもしれない
今日もいつも通りに夕人と一緒に帰るところだった。高校生になっても幼馴染の関係は崩れず声をかわさなくても二人一緒に帰るのが当たり前になっていた。そんな幾度目かの帰り道、真央が不図唇を動かす。
「ねえ、ゆう君。今、ボクが思っている以上に世界には不思議なことがいっぱいあると思うんだ。」
「はあ?」
いきなりの変な質問に呆れたような声が返ってきた。そんな夕人の返答なんて最初からどうでもよかったように真央は2、3度瞬きをして空を仰ぐ。空の色は夕日の色で染まっており、艶やかな橙色に姿を変えていた。昼間の青空とは思えないほどの空に真央がまた2、3回瞬く
夕人も真央の電波発言には誰よりも慣れているはずなのだが、突然の質問には夕人の最初の呆れがちな返答が返ってくるのはいつも通りでもあった。夕人はその呆れがちな言葉の次にそれで?という事がをつけたした。
「だってね。ボクの目で捉えきれないだけで、いっぱいいっぱーい不思議なことがあると思うの。そう、例えばね、この世にはパラレルワールドが幾つも存在するとかでも同じなんだけど。もしかしたらボクたちの目の前には幽霊がいたりしたり、突然異世界にトリップ!なんてこともこの世界のどこかではあると思うの。でもね、それが今無いのはきっとボクたちの目が退化したせいだと思うんだ。昔の人は妖怪とか幽霊が日常茶飯事に見えてたっていうでしょ?だけど現代のボクたちにはそれが見えない。ってことはボクたちの目は能力的に退化しているってことでしょ?トリップだって最初は何か異世界的な何かに遭遇したり異世界の扉を見つけるとかではじまるじゃない?でもボクたちにはその異世界的な何かは見えないわけだから、異世界にトリップしないわけでしょ。―――ただボクたちが見えないだけでボクたちの周りには色々な不思議があると思うんだ。ボクはそんな不思議なことを捉えられる瞳になりたいなぁ。そしたら、異世界のお友達だって、幽霊のお友達だって、妖怪のお友達にだってなれるかもしれないし、なにより、皆と過ごす時間だって、今ゆう君とこうして帰る帰り道の時もさもっともっと楽しくなると思わない?」
長い言葉をつらつらと言い終わると真央は自分の鞄にあるミルクティーを口に流し込んだ。これだけの言葉の羅列を頭の中で処理するのだって大変だろうにそれを一切噛まずに言うのもまた難しいだろう。
そして最後の真央の言葉である疑問形に対して夕人は自分はどう返答すればいいのか分からなかった。その意見に賛成するのか、イヤ、賛成したらしたらで夕人も同じ電波系の位置におかれることはまず間違いない
しかしここで反対してしてもその夕人の意見である反対という言葉に対してそれはどうして?どうして私の意見に反対なの?なんて答えられるのが関の山であり、そんなことを言われた日には夕人は応えられる言葉の羅列はないだろう
昔に真央の意見に反対して疑問を投げかけられた時、夕人はその理由について何も述べれなくなってしまい、理由を言わないでいると真央から疑問の連発に苛まれるといることなってしまったのだ。
そんなことの二の舞なんてしたくはない。賛成も反対もできないのならもう一つの選択肢は中立的な意見を述べるしかない、そして今回の夕人からの中立的な返答はこうである。
「まあ、真央の言うとおりオレらには見えない何かがあるとしよう。そしてそれが昔の人たちに見えてオレらには見えないのは、その異世界的な何かがオレらに見える必要がないから目の能力から排除されたんじゃないか?それが見えなくても人間は生きていけると判断して進化していく過程としてその見える能力が無くなったんじゃないかとオレはおもうけどな」
少し電波じみた言葉だろうかと夕人は少し感じながら真央に目をやると真央はあまり納得していないような瞳で夕人を見ていた。だけどすぐに夕人から目を逸らして大きくため息を吐きだす。
夕人は自分の意見に納得したのだろうと思ったがそうでもないらしい、少し気が薄れたような瞳はどこかまだその異世界的な何かがあってほしいと願うような、イヤ、願っていない確信しているような瞳である
きっといつか自分は見えるようになって、きっといつか自分は異世界にトリップもしくは妖怪やら幽霊などと友達になれると思っている真央の心の中は幼馴染であり親友とも言える夕人でもその意見は覆せないのだろう
だったら最初から意見を言うなと言う話なのだろうが、思ったことはすぐに言ったり行動しなければ気が済まないというタイプである真央は言わずにはいれなかったのだろう。そんな真央の事を知っている夕人で無ければ切れているのは間違いない
どんなに変人扱いされようとどんなに邪険扱いされようと真央はその他の多数の人間の意見なんてどうでもよかった。真央にとって、自分の意見に対する周りの意見などそこら辺に生えている雑草と同じ存在なのだから。
そして唯一真央の意見に唯一干渉できるのは夕人の意見だけだった。その夕人の意見にのっとり真央は口元を釣り上げて言葉を紡ぐ
「一人でも不思議なモノが見たいと思ってるんだから世界中にはもっとそれを望んでいる人がいるんだよね。だとしたらさ、きっと見えるようになるよ。だって、皆望んでいるんだから!」
猿に願った少女の願いは
不思議なことが起ること――――
* *
きっといつかはオレをに気付いてくれる存在がいて、その子はいつだってオレの名前を呼んでくれてオレの話しを聞いてくれる。でもそれってオレの妄想で、でもオレは、そんな不思議なことを望んでいるんだ。
昔から匝は人とは全然違うモノを好んだり趣味として選んでいた。それのせいか人と話は合わず幼稚園のころから孤立した存在になっていた。匝も小さい時はそんなに気にしないでいたが、周りに人がいないこと違和感を感じたのはは小学4生の時のまさに夏真っ盛りの時期である。
夏休み友達同士で遊んだりするはずなのに匝は誰とも遊ばなかった。夏休みの宿題で友達と遊んだ内容を書けというものがあり普通ならすぐに書けるものなのだが、唯一匝だけがその宿題を出せなかったのだ。
そんなことで先生からは叱られ、周りから異端の目で見られ、匝はやっと自分に友達がいない事を気付き、周りに友達がいないことは可笑しいのだとこの時初めて匝に可笑しいのだと気付かせた。
可笑しいと疑問を膨らませながら今まで生きてきてもう9年になろうとしていた。だが、9年も経てば匝の思考能力もあがるわけだ。そして匝が突き当たった答えが
"誰も自分を必要としていない"
そんな悲しい考えだった。実際家族以外はそうなのでそれは真実であるのだが、匝の心はもうすぐ壊れてしまいそうだった。初めて高校に来て話しかけてきた男子は自分は優しくクラス思いでいい奴だと思われたかったのだろう。
自分の優越感と羨望の眼差しで見られたいが故に話しかけてきたことは匝にはすぐに分かったが初めて話しかけてくれたこともあり、匝は心を躍らせて笑みを零す。男子もそれに気を良くしたのか質問をしてきた、それは本当に他愛もない質問
お前なんか好きなモノとかないの?んー例えばでいうと食べモノとかさ!そんな他愛もない質問に匝は自信ありげな笑顔を零しながら
「ドロップの残りカス」
普通に答えただけだった。そう、匝にとってはそれは普通の答えだった。自分の好きなモノを問われそれに答えただけただそれだけのことだった。だが男子はもっと違う答えを求めていたのだろう。
その顔は苦虫をいっきに5匹噛み潰したような顔であった。その顔を見て匝は絶望した、どうして自分は質問を答えただけなのにそんな顔をされなければならないのであろう。そして男子が最後に残した歪な笑みはどれほど匝を傷つけただろうか
そしてまた、匝は"人"から離れていった。
きっともう誰もオレを必要としてくれる人はいないのだろうと思うと匝の心の中は悲しさで埋め尽くされ不安で埋め尽くされた。そして今現在に至る、匝はもう影の様な存在になっていった。如月は今日いた?えっ如月ってこのクラスだったの?っという会話は当たり前
そんな匝にとって不条理なこの空間を変えたいと匝は幾度となく願う。変えてほしい誰か、オレを見つけてほしいオレを受け入れてほしい必要としてほしい
「誰かオレを、―――見つけて必要として受け入れて、それが不思議な事でもかまわない!」
蜥蜴に願った少年の願いは
この場の打開と不思議なことが起きてほしいということ―――
これが、猿と蜥蜴の願い。
次は猫の願いを書きたいと思います。
匝は私の体験の様なものを手を加えて書いています
蛍の墓でドロップの残りカスが好きになりました…。