事故の思い出
警察批判のような内容ではありますが、概ね、縦割り行政の持つ弊害の話であり、現場の警察官を全て否定するものではありません。
仕事で帰宅が遅くなって、途中のラーメン屋で夕食をとっている中で警察関連のエッセイを拝読しまして、何となしに思い出したエピソードを書いて行きます。
事の起こりは、仕事で使う重機の燃料を買いに社用の3トントラックで近くのスタンドへと向かったことでした。
会社のあるA市から市境の川に架かる橋を渡った直ぐ先、B市に目的のスタンドはありました。私は橋を渡る途中、橋詰の交差点にある信号に捕まり、丁度、橋の真ん中で信号待ちで止まっていました。
そこに、後ろから軽トラが突っ込んで来たんですね。
幸いにして、こちらは3トントラック、前に押されて玉突きに発展することも、私自身が怪我をすることも無かったんですが、相手の軽トラはフロントが凹んでフロントガラスに縦に亀裂が入って割れていました。
動揺して、謝罪を繰り返して慌てている高齢の男性に、取り敢えず橋の上では迷惑になるので、渡った先のスタンドに行きませんかと提案、幸いにして目的のスタンドは敷地が広いので、脇に3トンと軽トラを停めることが出来るスペースがあるので、スタンドの方に事情を説明して許可をいただき、相手の方には、自分は職場に事故処理で帰りが遅れる旨を連絡するので、警察を呼んでおいて欲しいことと、保険会社に連絡することをお願いしました。
それから、暫くして、A市の警察署から交通課の警官が来て事情聴取が始まりまして、私と男性に対して「事故は橋のどの辺りで起きました」と訊いたんですね。
私も男性も、ほぼ真ん中だったと答えて、その瞬間、やって来た警官二人は少し嫌な顔をしたんですよ。私は会社から数分の場所にある橋のこと、市境なんて頭にありませんでしたから、何で嫌な顔をしたか、その時はわからなかったんですが、それから数分して、B市の警察署から警官が来て気付いたんですよ。
「あー、縦割りの管轄問題か」
そう、内心で納得すると共に、面倒なことになったと。
案の定、A市とB市の警官たちは、事情聴取そっちのけで、どちらの管轄なのかで揉めはじめてしまって。
それも、大事件で手柄の取り合いでなく、小さな物損事故の事故処理ですから、面倒臭くて押し付けあってる雰囲気が伝わって来るんですよね。
しまいには地図まで出して、橋の上が丁度、境だ、どっちが処理するのが適切なんだと、どちらも直接、所管する市ですから、格的な違いも無いともなれば、決め手が無く、現場裁量では決められないと、やっと事情聴取が再開したのが数十分後、しかも、結局は現場判断で決められないために、帰って上に指示を仰ぐとのことで、万が一どちらで処理になってもいいようにと、A市、B市双方の警官から二重で事情聴取されることになり、処理が終了したのは1時間をゆうに超えてのことだったんです。
とにかく、管轄がどちらか決めないとと、何度も「橋のどちら側でした」と訊かれましたが、最初に「真ん中だった」と私も男性も答えている手前、今更、「○○市よりでした」と答えることも出来ず、然りとて、結論の出ない不毛な言い合いを、被害者と関係ないスタンドのスタッフを置き去りに続けてるせいで、加害側の男性の狼狽ぶりが酷く。
「さすがに仕事に支障があるので、優先することを間違え無いでいただきたい」
そう伝えて、やっと動いてくれたんですよね。
まぁ、このケースでは私には実害と呼べるものは殆どなく、会社の人からからかわれたり、ネタにされた程度、さしあたって緊急性の高い案件が無いからこそ、買い出しに出ていた訳なので、実のところ、業務への影響もありませんでした。
ですが、これが明確に害となることもありますよね。
私の住む長野には、松本サリン事件と、郵便局を狙った強盗事件と、管轄に拘り、広域捜査に切り替えなかったばかりに、犯行を繰り返された事件があります。
松本サリンは言わずと知れていますが、当時の県警本部長の誤った初動対応で、被害者男性を冤罪で容疑者とし、「サリンは農薬から作れる」などという、ちょっと化学好きな中学生でもわかる「とんでも理論」を展開した「社会学者」に踊らされて、「巨大プラントを秘密裏に所有管理、そうして運営できる組織犯罪集団によるテロ」という、サリンという科学兵器の特性を考えれば、至極当然に予測可能な犯人像から、広域捜査に切り替えなかったために、オウムを野放しとし、地下鉄サリン事件を起こされてしまいました。
実際、地下鉄サリンで広域捜査に切り替えてすぐ、日本各地でオウム関連の調査が進み、隠蔽されようとした証拠の押収に成功、たった一週間ほどで、精製プラントの家宅捜索を行っていますから、松本サリン事件後の初動対応が悔やまれますよ。
強盗事件も、隣県の新潟から、長野へと来ては郵便局強盗を繰り返した犯人について、県内に限定した捜査であったがために中々と足取りが掴めずに犯行を繰り返されたんですよね。
縦割りが必ず悪いと言うことではありませんが、時には柔軟な対応も必要ですし、たとえば連邦捜査局(FBI)のような広域捜査を基本とする組織を活用することも大切だと思いますね。
犯罪捜査で手柄を上げること、微罪の捜査を押し付けあうこと、そんなものはドラマの中の出来事で十分ですから、治安維持組織の本懐として、「未然に犯罪を防ぐ」ことに心血を注ぎ、「起きてしまった犯罪」に迅速に対応することを心がけて欲しいですよね。
まぁ、派出所の若い警官の方で、とても親切熱心に対応されていた方もいますから、現場の職員には熱心で正義感の強い方がいるのも事実なんですけどね。
サリンに関しては擁護のしようがありません。
テレビメディアにも出ていた「社会学者」は戦時中の日本軍が開発していたと主張する「毒ガス兵器」の研究をしていた「とんでも学者」です。
大学教授でしたが、化学の専門家では無いにも関わらず、「毒ガス兵器」の研究者として、唯一メディアの要求する「農薬からサリンが作れる」という荒唐無稽な主張をしてくれる「大学教授」として、呼ばれていました。
因みに、本当の化学の専門家だった、ビートたけしのお兄様である北野教授は、「農薬からサリンを作れますか」の質問をされて、「作れるわけ無いでしょ」と答えてましたね。
だって、レモンティーとコーヒー牛乳を混ぜてコップに注ぎなおしたら、ミルクティーとブラックコーヒーになって、レモン果汁が取り出せた、ってくらいにあり得ない話ですし、サリン精製には真空状態で慎重に行う必要から、巨大な精製プラントが必要なことは予測可能ですから。
郵便局強盗に関しては、銀行と違い、通し番号の控えなど、強盗対策が甘いところを狙われたこともあり、捜査が難航しましたよね。
感想、お待ちしておりますm(_ _)m