小学生の頃
はじめに。
これまで生きて来た中でいろんな事がありました。
この歳になって改めて自分を振り返る為に書いています。
かなり昔の事も含まれますので、今とは違うって事をご理解いただけたらなと思います。
私と同じような経験を持った人はたくさんいると思いますが、そんな方達に共感してもらえると嬉しいです。
生まれつき体が大きかったせいか、女子では幼稚園から高校を出るまでずっと一番後ろに並ばされていた。男子には『背高のっぽ』『たけのこ』酷い時には『ジャイアント』なんて呼ばれていた。
可愛くもなく愛想もない陰気な子で、母には『見てるだけで暗くなる』とよく言われていたぐらいだった。同級生の女の子達はみんな小さくて可愛いのがとても羨ましくて、小さく生まれたかったと母を恨んだ事もあった。
背が高くて痩せてて色黒は私は自分自身が嫌で嫌で仕方なかった。
あれは小学校5年生の運動会の練習の時。
組体操をやる事になっていたので、全員体操着に裸足だった。
その時私の近くにいた男子がでかい声で「お前の足でっか!!」
と叫んだから恥ずかしくなり、足の指を縮めたりして少しでも足を小さく見せようとしてたのを覚えている。
その時すでに私の足のサイズは22センチだった。
男子の一番大きい子と比べても変わらないぐらいのサイズだ。
組体操や騎馬戦なんかは体がでかい為に絶対に足場にされ、女子が足りなくなると男子の役をさせられたりした。
組体操の他に創作ダンスのような種目があったのだが、輪になって男子と女子が手を繋いでいくパートなどは男子が私と手を繋ぎたがらず、両手を後ろに隠してまでボイコットされた。
先生にちゃんと手を繋ぐように怒られた男子は、渋々小指だけを汚い物を触るかのように差し出した。
それでも普通に手を繋いでくれる男子もいるにはいたが、大半は拒絶された。私だけを。
クラスの中では友達以外とは話さないし、のっぽとからかわれても怒る事さえできないおとなしい子で、通知表にはいつも『もっと元気でいきましょう。引っ込み思案からは卒業しましょう』と書かれるぐらいだった。
友達と言えば聞こえはいいが、気弱なあまり誘われたり頼まれたりしてもノーと言えず、実質なんでもいう事を聞く家来のように成り下がっていた。
私がいつも一緒にいるグループは私含めて女子5人だ。
その中にいるAちゃんがもうすぐ誕生日だと判明して、リーダー格のBちゃんが『これからこのグループの誰かの誕生日が来たら、みんなでプレゼントを渡し合おう』という提案をした。
他のみんなも二つ返事で同意し、私は躊躇した。なぜならプレゼントを買う程の余裕はない。
この頃のひと月のお小遣いは200円で、せいぜい安い菓子を買うぐらいしかできなかったからだ。
母は小学生にお金を持たせるのは贅沢だと考えるタイプで、どうしても必要な物(例えば文房具や参考書など)は追加でお金をくれる時はあったが、ちゃんとレシートを持って帰りきちんと金額があってるか確かめる程厳格に管理されていたからだ。
それでもみんなが同意してるのに、私だけ同意しないわけにはいかなかった。
200円でいったい何が買えるだろう。必死に考えた。
キャラクターグッズはとても高価だ。小学生には買える金額じゃない。
結局、よく使うものとしてノートとペンを選んだ。これならギリギリ200円で買える。
可愛い系は割高なので普通のノートとペンという味気ない結果となったが、これまた普通の可愛くもない包装紙に包んでもらい小さなピンクのリボンも付けてもらって、どうにか形にはなった。
だが私は過信していたのである。
Aちゃんの誕生日当日、教室にみんなが集まり綺麗に包装された包みを各々手渡していた。
彼女が嬉しそうに中を確かめると、なんと、可愛いクマのぬいぐるみがあった。
どう見ても何百円で買えるものじゃない。
他にはキャラクター物のティーカップだとか、筆箱とハンカチセットだとか、とても小学生のお小遣いで買えるような金額の物ではなかった。
最後はあなたよね、と言わんばかりにみんなの視線が集中した。
200円ばかりの貧相なプレゼントを渡すには恥ずかしすぎた。
「プレゼントは?」
とBちゃんにせっつかれて咄嗟に嘘をついていた。
「プレゼントは買ったんだけど、うっかり持ってくるの忘れちゃったよごめん」
本当は鞄の中に入っている。みんなのプレゼントを見てから渡そうとまだ取り出してなかったのが幸いした。
Aちゃんは気を使って、いいよいいよ、と言ってくれたがBちゃんは鬼のような顔で「明日ちゃんと持っててきなよ」
と言い放った。
それからはもう、プレゼントをどうしようかとその事で頭がいっぱいで宿題も手につかない。
今月のお小遣いはノートとペンで全部消えてしまった。
母に友達の誕生日にプレゼントあげたいからお金が欲しいと言うと「お金でしかあげられないプレゼントなんてやめなさい」と怒られた。
考えて考えたあげく、自分が持ってる物で良さそうなのをあげる事にしたがその良さそうな物が見当たらない。
家の中を歩き回ってキッチンへ入ると、食器棚に何やら可愛らしい絵が書かれてある白いプラスチックのコップが目に入った。
家族の誰かが一度でも使った形跡はあれど、新品に見えなくもなかった。
よく見るとおしゃれだしいいかも!と、こっそりそれを取り出して、母がいつも溜め込んでるデパートの包装紙を貰いコップを包んでノートとペンと一緒に渡す事にした。
これでみんなのプレゼントと遜色ないじゃないかと、次の日意気揚々と学校へ向かったのである。
教室に入るなりBちゃんがニヤニヤしながら「プレゼント持って来た?」と聞いたので、私は得意げに2つの包みをAちゃんに手渡した。
グループのみんなはどんなプレゼントなのかと興味津々で輪になった。
それから、Aちゃんがワクワクしながら包装紙を開けて普通のペンとノートを見るなり無表情な顔になった。
「それ普通のノートとペンだね」
みんなの目が、なにその安物……って言ってるようだった。
そしてAちゃんはもう1つのへたくそな私が包んだ方を開けた。
中から出てきたコップにCちゃんがひきつった顔で言った。
「それ、家にあったやつじゃないの?」
その一言でBちゃんが大笑いした。
「ほんとだ!これ使ったやつだよね!」
「使ってないよ……お母さんがあげなさいってくれたから……」
私はすべてばれたショックでまた咄嗟に嘘をついていた。
「絶対嘘!ここ絵がはげてるじゃん!」
Cちゃんが粗探しするようにコップをあちこち傾けている。
もう何を言っても言い訳にしか過ぎず、みんなのバカにする顔と大笑いする声を聞きながら黙っているしかなかった。
それから『あいつは使い古しを誕生日のプレゼントにする最低な奴』と笑い者にされて、その後誕生日にはスルーされるようになった。
これでもうお金を使わずに済む、と思うとホッとした。
ちなみにそのコップはAちゃんが受け取り拒否をしたので、元にあった場所へこっそり返しておいた。
母にはばれていたようだったが、知らん顔をしておいた。