~Stage3 激突!ゲス・プログラマー戦~③
目覚めたときには幽体離脱をした時の感覚とでも言おうか上空の俯瞰した目線で現実世界でTVゲームに夢中になっている私を見ていた。しかもだいぶ小さな子供の時でまだ5歳くらいだろう。
世の中にこんなに面白いものはまたとないとの調子で夢中になって楽しんでいる。
うーんこれはよく聞く走馬灯と言うやつではないか。
おーい、ここで死んだらもうお前の好きなTVゲームはできないぞ。
「起きるのじゃゴラッーー!」
右のほっぺにものすごい勢いでなにか激突してきた。
「おぶっ、痛ったーーーいっつ!!」
マドカはほっぺを押さえて飛び起きていた。
傍らには儂のおかげと言わんばかりの表情でこちらを見ているQ爺。
どうやら生死の境をさまよっていた私に向かって強引にぶつかってきて目覚めさせたらしい。
こんな手荒な起こし方しかできないんかい、このタマ金しわくちゃ妖精は。
「マドカっ!平気なの」
ミーアが足を引きづりながらこちらに向かってくる。
衣服もボロボロで体もいたる所擦り傷だらけでみるも無残な姿だ。
「ミーアさんあいつ全く攻撃が効かないよ。あのシールドをどうにかしないと」
「そうね・・・あいつがシールドを出現させる前にいつもキーボードを操作しているのに気づいた?」
「確かに!ゲス・プログラマーだけにキーボードを破壊できれば無力化できるのかも」
一筋の希望が見え二人の表情が力強くなる。
「そうね。一人があいつを引き付けている間に、もう一人が遠距離から攻撃を仕掛けてキーボードを破壊できれば」
「遠距離から仕掛けると言っても武器が・・」
マドカたちはは首を傾げて考え込む。
Q爺がこほんっと咳ばらいをしながら、
「なにを言っておる、お前らはデバッカーじゃろ。デバックモードのアイテム入手で好きなだけ武器を手に入れられるじゃろ」
「そうだった、それならID:42 バリスタなんてちょうど良いかも」
ミーアはあごに手を当てうなずく。
「マドカ、私が何がなんでも3分間あいつの気を引き付けてみせる。私が攻撃を仕掛け始めたらバリスタを出現させてあいつのキーボードを破壊して」
「重要な役目だからこそマドカ、あなたにかけたい」
ミーアさんは自ら囮という危険な役割を買って出てくれた、私がここで逃げるわけにはいかない。こいつらを倒してジジに謝るんだ。
「任せて!絶対に命中させてみせる」
これで作戦は決まった、この絶体絶命な状況をひっくり返してやる。
ミーアさんはこちらの動きを気取られないようあいつゲス・プログラマーに攻撃を仕掛けつづける、そして私は必ず攻撃を命中させキーボードを破壊する、どちらが欠けてもこの作戦に成功はない。
「行くわよ!」
ミーアは掛け声と共に敵にむかって突進していく。
マドカとQ爺は固唾をのんで見守る、ミーアが一太刀加えた瞬間にデバックモードでバリスタを出現させる。
「せえぇーっ」
ミーアは気合と共にものすごい跳躍を見せ、ゲス・プログラマーの頭上に飛び上がる。
そこから重力を利用して槍の穂先を下に向けて攻撃を仕掛ける。
「懲りないねぇ、お前さんも」
キーボードをカタカタっと操作すると、シールドが出現した。
シールド越しにミーアとデス・プランナーの目が合う、と遅れて衝撃が発生して。
「デバッグモード~・・アイテム入手・・」
ミーアは吹き飛ばされた瞬間に手に持っていた何かをゲス・プログラマーに向かって思い切り投げつける。
「なっ・・・これは」
あたり一面に煙がもくもくと漂っている、意表を突かれたのかゲス・プログラマーは困惑しているようだ。
「ナイスアシスト!今じゃマドカ」
Q爺はマドカに向かって親指を立てる。
「ガッテン、承知!」
「デバッグモード~【アイテム入手ID:42 バリスタ ON】、カモンっ!」
ボンっ、と煙と共に古代ローマの攻城兵器バリスタが出現する。
立派な土台に当たったら一たまりもなさそうな大きな石弓が装着されている。
「ところでお主バリスタの使い方は知っておるのか?」
「うん、ゲームで使った事があるし、なんとなくは」
「うむそれは心強い・・・、簡単に説明しておくと照準をやつに合わせたらこの横のハンドルを回して弓を発射するのじゃ」
「だけど、あいつの周り煙だらけで良く見えないよー」
「ワシに任せろ。このQ爺なんと何物をも見通す千里眼の持ち主なのじゃ」
Q爺はバリスタの砲身の上に乗り、カッと眼を大きく見開いた。
「そんなご都合主義な能力・・・まあ、今はとにかく任せたQ爺」
「もう少し右、今度は下」
マドカはQ爺の指示にしたがって照準を調整する。
「よし!ここじゃ打て」
マドカはハンドルを勢いよく回し始め、強い手ごたえがあり一層力を込めながら、
「いっけーーーぇっ」
ドスンっ、と弓を発射した衝撃で思わず後ろに倒れ尻もちをつくマドカ。