~Stage2 デバッカーギルド~➁
そうこう話している内にそのギルドとやらに付いたらしい。
ギルドは二階建てで少し小ぢんまりとしているが立派な石造りの建物だった。
白とオレンジを基調としたデザインには可愛らしさをとセンスの良さを感じる。
すると、Q爺は扉の脇に付いているベルを鳴らす。
ベルとほぼ同サイズのQ爺なので体全体を使って、しがみつく様にベルを揺すっている。
「帰ったぞー、開けてくれミーア」
すると中からはドタドタとした足音が、そして陽気な女性の声と共に扉が開けられる。
「おかえりなさい~」
扉の奥から顔を覗かせた女性は、あらっとマドカの顔を見るなり驚いた表情を見せ。
「この子が新しいデバッカーね」
「可愛らしい子ねぇ。さぁ入って入って」
と、矢継ぎ早に話しながら、建物の中に招き入れられる。
どうやらこのミーアと呼ばれる女性は相当おしゃべりな性格のようだ。
年齢は20代半ばといった所か、長くウェーブの掛かった黒髪に女性にしては長身で肌は小麦色でグラマラスなセクシーお姉さんと言った感じだ。
建物内は小綺麗な酒場といった雰囲気だ。
丸テーブルや椅子がいくつも並び部屋の奥にはカウンターもある。
ミーアさんに奥の方にあるテーブルに案内され座る。
部屋内には私たちの他に人は見当たらず静まりかえっている。
「今は私以外のデバッカーはみんな出払っているの。それぞれ各地に遠征してバグを修正しているわ」
「そうなんですね。ミーアさんはお留守番ですか?」
「そうね、お姉さんはこのギルドの受付や新人のサポートを行っているのよ。だからずっとここで一人寂しくお留守番ってわけ」
目の前のお姉さんはしょんぼりした表情になる。
「でも、そんな所にこんな天使みたいな可愛い子が現れるなんてー世の中捨てたもんじゃないわ。」
と、思ったら今度はパアッと明るい笑顔を向けてくる。
「そういえばあなたお名前は?」
「申し遅れました、マドカといいます」
なんかこの人調子が狂うな、思わず敬語で話してしまう。
ただ嫌な感じはせず言動から人間としての温かさが伝わってくる。
「デバッカーは皆マドカと同じ様に現実世界から召喚されたと言ったが、このミーアも現実世界の出身じゃ」
隣にいるQ爺が口をはさむ。
「そうなの、私は現実世界では南米出身なのよ。」
「マドカは見た所、東洋人のようだけど。今はお互いにこの世界の共通言語を話しているから言葉が通じてるの」
そうだったのか、Q爺や先程の飯屋の店員とも普通に会話ができていたのはこの世界の共通言語を無意識の内に話していたからか。
「私は日本から来ました。ミーアさんはいつ頃この世界に召喚されたんですか?」
「私は10年ほど前に同じくQ爺から召喚されたわ。ギルドの一番古株のメンバーで15年くらいになるのかしら」
「そのメンバーよりさらに昔に召喚された人もいたようだけど・・・旅の最中で【あいつつら】に命を奪われたと聞いたわ」
ミーアさんの表情が急に暗くなる。
「あいつらとは?」
言った瞬間ミーアさんの顔が曇り思わず聞かずにはいられなかった。
「そこはワシから説明しよう。あいつらというのはデバッカーにとって最大の敵【ゲス・プログラマー】と【デス・プランナー】の事じゃ」
デバッカーにとっての最大の敵?この世界のバグを全て修正すれば元の世界に帰れるんじゃないの?色んな疑問がグルグルと頭の中を駆け巡る。
「この【ゲス・プログラマー】と【デス・プランナー】と言うのはこの世界のバグを生み出してる存在であり、魔物たちのの親玉の様な存在でもある。」
「魔物たちもこの世界にとってはイレギュラーな存在、いわばバグの様なものじゃ。こいつらを倒さない限りいくらバグを修正しても次から次へと新しい歪みが生み出される」
「しかしそいつらさえ倒してしまえばそいつらが生み出したバグも自動的に修復される、つまりはこの世界からバグが無くなると言うわけじゃ」
「そうね、そして遠征しているデバッカーたちは各地の街から報告のあったバグ情報について調査しながらそいつらの行方を追い続けているのよ」
デバッカーの遠征というのは想像以上に危険な旅のようだ。
そしてミーアさんがまた口を開く。
「デバッカーには旅が付きものでその最中で魔物との戦闘も頻繁に発生するわ。そのため生き残るたには戦闘スキル、サバイバル能力が必須なの。」
「というわけで、さっそく今日から私が教官となってマドカあなたを鍛えます」
うげぇー、今まで特訓、努力といった言葉とは真逆の生活を送ってきたのに。
「まずは何をするにも基礎体力が大事ね。さあこれから一緒に20キロのランニングよ」
「いきなりハードなやつキタ!」
昨日もこの街に来るまでに死ぬほど走らされたのに、昨日の今日でまたこれですか。
私は馬じゃないんだぞ。
「うむ、頑張ってこいよ。ワシは留守番しとくからの」
んで、Q爺~こいつはこいつで留守番するんかい。