~Stage2 デバッカーギルド~①
「あーっもう無理、一歩も動けましぇーん」
マドカは宿屋の部屋に入った途端にベッドに大の字に倒れ込んだ。
あの最初にいた森からぶっ続けで3時間弱走り続け、ようやく王都ロストエデンに到着した。
森から出た時はまだ日が昇っていたが、今は日も落ち始め夕暮れになりかけていた。
この世界と同じロストエデンと名前が付いているだけあって、この世界の中心的な位置づけの街のようだ。
豪華なお城、活気のある商店街など元気さえあれば色々見て回りたい所だが、少し前までか弱いヒキニートだったのに2時間ぶっ続けで走らされたのだ。
Q爺の驚きのスパルタぶりである。
今はさすがにデバックモードをOFFにしている、がなんか吐きそうだし、多分顔面蒼白になっているだろうし一刻も早く休みたい。
「Q爺~、早く休ませて~」
完全にお爺ちゃんに甘える孫である。
「うむ、今宿屋に向かっておる。しかしお前さん元ヒキニートのわりに意外に体力あるのう」
「MMOゲームで世界トップランカー張ろうと思ったら意外と体力はいるの。いいから早く宿屋~」
そうこうしている内に宿屋に到着して、今に至るのだ。
そのままマドカは翌日の昼まで実に20時間も爆睡し続けた。
そして、翌日
「うーん」
目が覚めて軽く背伸びをしながら起き上がる。
周りを見るといつもの自分の部屋じゃない。
RPGのゲームで良くあるような宿屋の一室である。
やっぱり昨日の事は夢じゃなかったのか。
「おっ、やっと起きたのかマドカ。もうすっかり昼じゃよ」
Q爺がやれやれと言ったような呆れ顔をしている。
「昨日からなにも食べておらんじゃろ。ご飯を食べたらデバッガーギルドに行くぞ」
デバッカーギルドはてな。
まあ今はご飯だ。
「うん、お腹すいた。ご飯」
寝起きと空腹のコンボで知能が低下しているようだ、恐るべき語彙力になっている。
Q爺に連れられ宿屋の向かいにある飯屋に入る。
席に座って辺りを見回して驚いたが、周りが食べているものを見ると現実世界の中華料理と見た目がほぼ変わらないではいか。
「良かった、普通に食べられそうなやつだ」
かなりの偏食家であるマドカは、この異世界でとんでもない料理が出てきたらどうしようと内心ドキドキしていたのだ。
「この世界の食文化はお前さんが元いた世界とそう変わらんよ」
ほうほう、この世界で食生活に困る心配はこれで無くなったようだ。
とりあえずQ爺がオススメと言う料理のパオタイを頼んでみよう。
しばらく待っていると、見た目がほぼチャーハンに麻婆豆腐が掛かった様な見た目の料理が運ばれてきた。
だが実際に食べてみるまでは油断ができない。
こわごわと一口食べてみる。
「うっふまぁ~い」
まんまチャーハンと麻婆豆腐である、しかも味のレベルも高いときている。
「そうじゃろ、そうじゃろ」
Q爺もすすめた料理がマドカの舌にあったようで満足気にうなずいている。
ちなみに本人も横で妖精サイズ?の同じ料理を美味しそうに食べている。
妖精もこんな俗世間的な物を食べるんだ。
てっきり大気のマナ?とからエレルギーを吸収しているのかと思った。
「ふぃーっ、ごちそうさま」
昨日から何も食べておらず空腹だった事もあり一瞬で完食した。
「ゴチになります!」
この世界の通貨を持っていないので当然と言えば当然だが飯代はQ爺が支払ってくれた。
この世にタダで食べる飯ほど美味いものはない。
銅の様な材質の硬貨を何枚か取りだしお店の人に渡している。硬貨の表面には太陽と月の模様が刻まれていた。
Q爺の手元を見ると他にも金と銀と思われる材質でできた硬貨があるようだ、やはり同じ様に太陽と月の模様が刻まれている。
お金に関しては現実世界とあまり変わらないんだな。
「うむ、腹も膨れたしギルドに行くぞ」
飯屋を出て前を行くQ爺の後に付いて歩く。
「朝から言ってるけど、そのギルドってなにするとこ?」
率直な疑問をぶつけてみる。
「まずデバッガーというのは皆お主と同じ様に現実世界からこの世界に召喚されておる。」
「皆目的はこの世界の歪み【バグ】を修復する事、その同じ目的を持つ者同士が協力する為に創られたのがデバッカーギルドじゃ」
なるほど、この先Q爺と二人で旅を続けていくと思っていたが他にも仲間がいると聞くと心強い。
「しばらくはこのギルドが活動拠点になるぞ」