~Stage1 仕様把握~①
「目覚めるのじゃ」
耳元で誰かがずっと呼びかけている気がする。
人が良い気分で寝てるっていうのになんなのよ。
「コラーッ、起きろー」
鼓膜が震えるほどの大音量で耳元で叫ばれ、思わず眠気も吹っ飛び跳ね起きる。
「なんなの、うるさいー」
反射的に大声を張り上げる。
が、目の前には誰もいない。
はてな。
「こっちじゃ。下じゃ」
声のする方、下に目を向ける。
すると、直径10センチくらいの羽が生えたしわくちゃの仙人の様な風貌の小人、妖精?が目の前を飛んでいた。
周囲を見渡すと全く見覚えのない森、森、森どこまでも木が生い茂っている。
悪い夢でもみているのだろうかと、ほっぺをつねってみるが痛い。
紛れもない現実のようだ。
「これは現実じゃ。お前さんはこの世界を救う為にこのワシQ爺に召喚されたのじゃ」
目の前の妖精?が何か話しているが全く理解が追いつかない
「私はいつもの様に自分の部屋に引きこもってゲームをしてただけ、なんでこんな知らない所に連れてこられてるのよー」
しかも着ていた服まで変わって、いつの間にか部屋着からピンクを基調とした冒険者を思わせる服装になっている。
妖精?Q爺はやれやれと言う風に説明を続ける。
「新作MMOゲームのテスターになりませんか?
というメールは見たじゃろ」
うん?うん、何か見たような気がする。
「そしてお主はゲーム参加のバナーをクリックした。」
うーん?うん、クリックしたような気がする。
「その時点でワシとの契約が成立して、この世界【ロストエデン】によばれたのじゃ。」
「メールの文面にもちゃんと書いてあったじゃろ、下記のバナーをクリックすると【ロストエデン】の世界を救うために召喚される事に合意した事になりますと」
驚愕の事実を告げられ思わず頭を掻きむしる。
「14歳の多感な年頃の女の子がメールの文面なんて細かく読むわけないでしょ。」
「そんなのサギよ、サギ。私を元いた世界に戻してー」
駄々をこねる子供のように手足をばたつかせる。
「そうは言っても無理なのじゃ。」
「この世界ロストエデンを救うまでお主は現実世界に帰る事が出来ない。ちなみにこれもメール内にちゃんと書いておった」
グサッ、またメールの文面をちゃんと読まなかったという弱点を突かれた。
大人しくなったマドカを見てQ爺は説明を進める。
「本題に入るがお主はこの世界の修復者、通称【デバッガー】として召喚されたのじゃ。
ワシはこの世界のナビゲーターとしてお主らデバッガーをサポートする存在じゃ。」
「お前さんががデバッガーとしてこの世界の歪み【バグ】を全て正していけば元いた世界に帰る扉もおのずと開かれる。」
おおっ、現実世界に戻れる一筋の希望が見えてきた。
「そのバグとやらを正していけば現実世界に戻れるって、あんたそれホントにホントでしょうね」
胡散臭そうな視線を向けるとQ爺は大きくうなずき。
「それは間違いない古くからの言い伝えにもある。」
「まずはこの世界の仕組み、理を説明したほうが良いな。いわゆる仕様把握というやつじゃ」
とにかく前に進まないといけない、話を聞いてみよう。
「分かった。教えてこの世界の事を」
その前にQ爺を指差しふとした疑問を口に出してみる。
「本当ならあんたみたいな役割って、もっと可愛らしいマスコットみたいな妖精じゃないの?」
Q爺は手のりサイズのしわくちゃのお爺ちゃんと言った風貌である。
「よし、まずはデバックとはなにかを説明しよう」
うわ、スルーされた。図星を突かれたのか。
「あそこにある木を見てみるのじゃ」
言われるがまま、Q爺の視線の先に目を向ける。
「んっ、なんか一本だけ黒く塗りつぶされたような木がある」
明らかに周囲の木と比べて異質な外観である。と、思った矢先にショルダーバッグの中身がなにやら青く光りだした。
「うわっ、なにこれ」
慌ててバッグの中身を見る。
スマートフォンの様なサイズの端末が入っており、これから眩いばかりの青い光が出ている。
次第に光は落ちついて来たので、端末の画面を覗き込む。
画面には【バグLv1~修復完了~】の文字が表れる。
「お前さんみたいに選ばれたデバッガーがこの世界に潜んでいるバグを認識する事で、この端末が反応してバグが自動的に修復されるのじゃ。」
「ほれ先程の木を観るのじゃ」
Q爺に言われるがまま前方を見てみる。
「なぬっ!」
マドカは思わず目を見開く。