生まれ変わり前の夫がうざいです
すごくお久しぶりで申し訳ありません。
エディムシア〜エディムシア〜エディムシア〜。
今日も元気に低い美声で焦げ茶の大型わんこが叫んでる。
外見的には初老の色気のある筋肉質な美丈夫なのにその言動だけで台無しだよーと私は手で顔をおおった。
それに、私、もうエディムシアじゃないから……
昔、ファモウラ軍国っつー国があって、まあ今でもあるけど、世界征服を企んでるのか大陸制覇なのかわかんないけどその辺の国々に戦争仕掛けてきて、そのファモウラ軍国に対抗する国々にグーレラーシャ傭兵国の専業傭兵として雇われて戦場に駆り出された時、不味って戦死した記憶はあるさ。
激痛で最後は焦げ茶の大型わんこに会いたいって霞む目で血煙舞う戦場を倒れる寸前見たけど、居るはずのやつは見えなかったのは覚えてるよ。
まあ、意識がなくなってしばらくして次に意識が戻った時は赤子からちっと大きくなったちび幼児時代だった。
うん、お母さんは黒犬耳の獣人だしお父さんも赤毛の若い青年傭兵だし……あれだ、転生とか言うやつかい〜って思ったね。
でも、なぜか前回と同じグーレラーシャ傭兵国〜国民総傭兵国家にまた産まれちまった〜
まあ、いいんだけどさ、地方の普通より少し裕福な家で、前世みたいなバリバリの傭兵一家って感じじゃなくて、3人の兄ちゃんたちなんかもいて、前世は弟2人だったからなんか妹って立場がこそばゆい感じもあって楽しいけどね。
ヒフィゼギデル領の領都ロイディアで祖父母はパリアス商会って言うのをしてる、お父さんはそこの次男なんだけど、高等槍士で専業傭兵でお母さんは明正和次元からお嫁入りした超ちっちゃい黒犬獣人で、お兄ちゃんたちはお父さんに似ておっきいのに私はお母さんに似たのかちっちゃいだよね……
ちなみに私も黒い犬耳としっぽがある黒犬獣人でお兄ちゃんたちのうち一番上のお兄ちゃんも赤毛の犬耳としっぽを持ってる獣人なんだよね。
だから獣人の能力でちっちゃいけどまえより素早くてパワフルでハイスペックなんですけど、幼年学校で最強クラスなんだよね。
前は王都出身だったからこの山とか自然がいっぱいのところに生まれ変わって嬉しい〜と思ってたこともありました。
ええ、あいつに気づかれるまでは、ヘイワニクラシテタヨ。
私はまだ幼年学校の最終学年だ。
つまりお子様なんです、あのロ○○○めー。
「ブルーナちゃん、お迎えだよ〜」
今日最後の授業が終わったとたんアリアちゃんにつつかれた。
廊下に白髪混じりの焦げ茶のきれいな一本みつあみにちょっとあんた若すぎじゃないっていうワインレッドの戦衣ー防御力の高い生地で作られた縦襟の長衣でグーレラーシャの国民服でだいたいの人が着てる、専業傭兵のは一般人より防御力があるーのやつがいた……この間まで黒一色の戦衣だったくせに……目が合うとやつは焦げ茶色の瞳を細めた。
「アリアちゃん、帰ろう」
「ええ〜運命のコイビトが来てるのに私と帰っていいの〜?」
速攻で荷物を詰めてショルダーバッグをしょって立ち上がってアリアちゃんをうながすと下から両手を組んでウルウルした目でみられた。
何を吹き込んでるんだとジロっとやつをにらみつけるとエディムシアと妙に嬉しそうにやつが両手を広げた。
おい、このロ○○○抱きかかえる体勢取るんじゃねぇ。
それは恋人とか伴侶にしやがれ、私はもうエディムシアじゃないからね。
天下のヒフィゼのハルリウスが児童を追っかけてるなんて外聞が悪いだろうが……仮にも王国立傭兵ギルドの管理官長がここに来てていいの?
プイッと横を向いてやつがいない方からアリアちゃんの手を引いて出ていくと焦げ茶の駄犬が明らかに落ち込んでるのが見えた。
ブルーナちゃんたら素直じゃないんだからーとアリアちゃんに呆れたように横目で見られたけど、知るかーい。
アリアちゃん、私の親友だよね?
全くこのドヘタレ筋肉美丈夫め、初老になっても変わんないんかい〜先生を含めたみんなの生暖かい目がつらいよう。
グーレラーシャの男って愛するものを前にするとみんな押して押して押しまくって抱き上げまくるけど私はまだ、そんな歳じゃないんですけど〜
そもそものはじまりは1ヶ月前の事だった。
幼年学校も最終学年になってさ、そろそろ将来のこととか考える時期かねぇと漠然と思ってたわけだ。
そんなときに平和になってビミョーに志望者が少なくなったという専業傭兵の巣窟の傭兵ギルドのお試し体験のご案内が学校に来たんだよね。
どうしようか考えたけど長兄でハニータルト屋で修行中のリュラディウスお兄ちゃんも次兄で傭兵学校三年生のミリオスお兄ちゃんもしきりにうらやましがってたし、傭兵学校一年の三兄ギルニウスお兄ちゃんにいたってはなんで俺は幼年学生じゃないんだぁと叫んでた、今の傭兵ギルドも興味あったから両親と相談して申し込んでみたんだ。
そしてロイディア傭兵ギルドの門をくぐったのがウンノツキだったよ。
「すごいね、最新の依頼検索機かなぁ?」
「おっきいね〜ブルーナちゃん〜」
案内役のウルファス傭兵ギルド支部長とか言うヒフィゼ家の分家の見覚えある坊っちゃんがみんな〜こっちが依頼検索機だよーとか説明してる片隅でコソコソと親友のアリアちゃんと話すのなんか楽しいなぁなんて思った。
「みんな〜王都の傭兵ギルド本部のハルリウス•ヒフィゼ管理官長が来てくれたよー」
ウルファス支部長がテンション高く後ろに手を振った。
ハルリウス? ヒフィゼ? ギルド管理官長?
白髪混じりの焦げ茶色一本みつあみの髪に焦げ茶色の髪の初老の美丈夫な武人が漆黒の戦衣をまとってゆうぜんと歩いてくる……な、生ハルリウス? こんなとこになんで来てるのさ?
「ロイディアの幼年学校の諸君、傭兵ギルドへようこそ」
生ハルリウスが前で愛想笑いを浮かべた。
なんで、ここにいるのさ〜。
まあ、バレっこないからいいや。
相変わらずいい声だけど老けたなぁと思いながら前を見るとちょうど目があった……私、今回チビだから前なんだよね〜、前回は長身女だったから後ろだったけど。
「みんな〜闘技場に行くよー」
「はーい」「やった〜」「わーい」
そんな事を思ってると傭兵ギルド管理官長様も何故かついてきた。
あんた忙しいんじゃないの? あんたのお兄さんのダウリウスさんがギルド管理官長してた時も勝手に戦闘文官に会いに行くダウリウスさんに仕事押し付けられてひいこら言ってたよね。
まあ、暇なんなら良いけどさ、手伝ってやれないんだからね。
闘技場は各地のだいたい傭兵ギルドの隣にあって専業傭兵が訓練してたり兼業傭兵な一般人が決められた区域で運動してたりしている、年に何回か闘技大会が開かれるところで周りが観客席の円形になっている。
「えーい、や~」
「腰が入ってないぞ〜坊主〜」
ビルニウス君が最近流行りだって言う模擬の大槌をお試しで振り回されている横で体験指導役の傭兵のおっさんが楽しそうに支えた。
「ブルーナちゃんは何にする?」
アリアちゃんがレイピアが良いかな? ウイップかなぁとワクワクと並べられた模擬武器を手にとってるのを尻目にお目当ての武器を見つけた。
「これにする」
「やっぱり、それだよね」
模擬モーニングスターの柄を持つとアリアちゃんが笑った。
「嬢ちゃんには重いんじゃねぇか?」
ビルニウス君を指導してたおっさんがこっちを見た。
大丈夫ですと手を振って持ち上げた模擬モーニングスターを手に持ってアリーナの中に入った。
模擬モーニングスターを振ってみるといい感じだ、アリーナに設置されてる的に鎖を操って当てると倒れた、うん、流石、傭兵ギルドの模擬モーニングスターだねー、幼年学校のよりバランスがいいよ。
視線を感じて見ると腕を組んでこっちを見てるハルリウスがいた、そんなことしてる間があったら幼年学生と触れ合えよと思いながら的をもう一個倒した。
ウルファス支部長の方は向こうで模擬鎖鎌の使い方ランディアちゃんとファニウス君に教えてるじゃん。
「ちっこいのに力があるなぁ〜」
「当たり前だよ、明け星だもんなー」
「そうそう、弟が憧れて同じ武器にしたんだからーが口癖の」
おっさんが関心したように口笛を吹くとビルニウス君とファニウス君が何故か反応した。
そういや、小さい〜とからかわれたらついそんなこと言って戦術の実技でしずめてるかも?
前世の二つ名は明け星のエディムシアだったし、弟たちも私にあこがれモーニングスターが武器だったもん、うそいってないよね。
「……あれ? ブルーナちゃんってお兄ちゃんしかいないよね?」
アリアちゃんが小首をかしげた。
そりゃ、前世の弟だしね、二人いて大人になる頃には完璧背も体格も筋肉もぬかされてたけど、今みたいにちっこくなかったよ。
「明け星のエディムシア……」
「そうそう、そんなかんじ」
いつの間にか焦げ茶色の初老男が近づいてきてビルニウス君がうなづいた。
前世の夫と視線があってなんかそらしたくなってもう一つ的を倒した。
すげーな嬢ちゃん〜
ブルーナちゃんはうちのクラス最強だぜーというおっさんとビルニウス君の声が何故か遠くに聞こえる。
「エディムシア? エディムシアなんだな」
「……ブルーナ•パリアスですけど」
泣きそうな熱をはらんだやつの瞳から目をそらしたくなってもう一個倒そうとしたらもう的がなかった。
そう言う恥ずかしがりなところがエディムシアだ……
「エディムシア〜もう、離れない!!」
「ま、待ってハルリウス〜、私、今エディムシアじゃないから〜」
ブルーナだと言いかけたところで一気に距離を縮められて抱きつかれた。
どう言うことだとかええーとか周りが騒いでるのが聞こえて恥ずかしさ満載だった私は思いっきり蹴りを入れた……び、びくともしねぇ……
「ハルリウス、ハルリウス〜とりあえず離して〜」
「嫌だ、エディムシア、もう離さない……」
ハルリウスが妖しい口調でいって抱き上げられた。
うわー、暴走してるグーレラーシャ男こわー、普通の幼年学生なら泣き叫ぶよ、ほんとに、まあ、ハルリウスの美丈夫な顔も筋肉も懐かしいけどさ……なんか私もパニック?
「そこまでです、こんなにちっこい子がおそわれてるのにあなた達何してるんですか〜」
凛々しいお姉さんの声がして後ろからハルリウスの腕の中から助け出された。
「テルニア、エディムシアを返せ」
ハルリウスが低い声を出した、完璧にやばい目だ。
助け出してくれた赤毛のキレイなたぶん専業傭兵のお姉さんが私を下におろして剣を構えて後ろにかばってくれた。
「支部長、ゴルアウス」
テルニアお姉さんが支部長とおっさんを見ると呪縛が解けたようにそれぞれ動き出した。
「ハルリウスおじさん、落ち着いてください、エディムシアおばさんは十年以上まえに亡くなってます〜」
「ハルリウスギルド管理官長、ボケるのは早すぎるぜ」
鎖鎌を構えた支部長と槌を持ったおっさんがその前に立ちふさがった。
「……エディムシアだ……姿形は違うのに、私の本能がエディムシアだと言っている……」
大鎌を振り上げたハルリウスがこちらにやってくる、怖いよ〜。
「うわぁ……愛しい女? 前にしたグーレラーシャ男、怖すぎ〜人のふり見て我がふり直せねぇけど、これはアウトだぜ」
「僕も愛しい女性を前に抑えられる自信はないけど、幼年学生は……」
支部長とおっさんがなんか情けない声を出しながら攻撃してくるハルリウスを避けた。
「グーレラーシャ男って……まったくです」
ため息を付きながらお姉さんが剣でハルリウスの大鎌を受けた、エディムシア、エディムシア〜とつぶやくやつと鍔迫り合いしてるけどおされてるよ。
このままじゃお姉さんが怪我しちゃうよ〜
「ハルリウス、これ以上やったら嫌いになる!」
私は倒れそうなお姉さんの影から飛び出て叫んだ。
ピタっとハルリウスが止まったところでお姉さんの蹴りがハルリウスの脇に入って後ろから支部長とおっさんが羽交い締めにやっとした。
「エディムシアに嫌われたら……生きて……」
「嬢ちゃん、それは酷だぜ」
「そうですよ」
全てに絶望したようなグーレラーシャ男にグーレラーシャ男たちがハルリウスを抑えながら私を責めるような目で見た。
な、なんで私が責められるのさ。
「悪いのはそこのおじいちゃんですよ、この子は被害者です」
お姉さんが剣を鞘におさめて両手を腰に当てて怒ってくれた。
でも、これじゃ……傭兵ギルド管理官長が……
そうですよ〜
支部長とおっさんがブツブツつぶやいてるのが聞こえた。
ほんとにグーレラーシャ男ってしょうがない……
「ブルーナちゃん、どう言う事?」
「大人って怖いなー」
「俺も大人になったら、ああなるんだろうなぁ……」
なんかキラキラのアリアちゃん、振るえてるビルニウス君、遠い目のファニウス君の声にみんなが我に返った、ハルリウスは除く。
でも、ランディアちゃんもなんか普通に怖がって近づいて来ないのになんでアリアちゃんはキラキラしてるのさ。
「そういえば、なんでエディムシアの名前で呼ばれてるんですか?」
ロイディア傭兵ギルド支部長が爛々とした目のハルリウスを抑え込みながら聞いた。
エディムシアはエディムシアだぁと騒いでる前世の夫がうるさいけど、説明必要だよね。
「あー、信じられないだろうけど、ファモウラで戦死して生まれ変わったみたいな、まだまだ幼年学校生ブルーナ•パリアス、15歳です」
ポリポリと肩を掻きながら幼年学校生と15歳を強調しておいた。
寿命の長いこの世界で15歳ってまだ少女だからねハルリウス。
「そうか……そういや戦闘文官さんも転生者とか聞いたことがあるなぁ」
と支部長さんがハルリウスを抑えたまま、私を見た。
うん、それ私も聞いたことある、でもあーゆー面倒なハルリウスはついてなかった気がする、ダウリウスお義兄さんに執着されてたけど。
「生まれ変わりって……信じら……れる気がします」
テルニアお姉さんがエディムシア〜って騒いでる前世の夫をちろっとみて言葉を修正した。
「エディムシア〜」
「わー、支部長〜油断すんな〜」
前世の夫が振り切ってこっちに来た。
テルニアお姉さんがあわててかばってくれようとした。
思い切って言わないと止まんないよね。
「ハルリウス! いえ、ヒフィゼ傭兵ギルド管理官長、私とあなたは現世は今んとこ他人だよね」
指を突きつけるとハルリウスがピタっと止まった。
「エディムシア〜」
涙を浮かべる初老美丈夫ってありか? わかんないけど、とりあえず止まった。
「ひでーえれー悪女だ」
「うるさい、黙ってください」
おっさんがテルニアお姉さんに小声で怒られてる。
「私が成人するまであと十年以上あるよね、大人になってから求愛行動して欲しいな傭兵ギルド管理官長?」
「……それじゃ……諦めなくて良いんだな?」
小首をかしげるとハルリウスが目を上げた。
大好きな焦げ茶のカワイイ目にちょっとほだされそうになったけど……たぶん、いつか、絆されるんだけどね。
「まあ、ハルリウスとまた結婚するとはかぎんないけどね」
ニヤリと笑うとエディムシア〜とハルリウスが騒ぎ、小悪魔? 悪女? とテルニアお姉さんが小首をかしげた。
まあ、そんときはなんとかおさめたんですよ。
ええ、傭兵ギルド体験もハルリウスが途中で秘書のおじさんに仕事しろーと引きずられて王都ラーシャに帰ったので無事終わったし……
まさか、ハルリウスが度々、ロイディアに……幼年学校に来るとは思わなかったよ。
ええ、うちにも来てお母さんはハルリウスの一途さに絆されるし3人の兄たちはヒフィゼ傭兵ギルド管理官長が来たってだけで大騒ぎだし、お父さんにいたってはもう嫁入りかとなんかハニー酒一杯でポロポロ泣いてるし……まだまだ嫁にいきません。
未来は未知数のはず……なんだよね?
エディムシア〜エディムシア〜
今日も焦げ茶の前世の夫が呼んでいる。
せめて、今の名前のブルーナって呼んでくれたら……一発で落とされそうだから、あと十年以上はエディムシアでいいかな?
そんな事を思いながらハルリウスをみて、もう少しだけ待ってて、すぐに大きくなるからと思いながら手を振った。
どうして生まれ変わったかわかんないけど、たぶん私もハルリウスしか愛せない気がするんだよね。
でも、まだまだ子供だし、どうなるかわかんないしね。
そんな事を思いながら学校から緑豊かなロイディアの街の出た。
読んでいただきありがとうございます。
主人公15歳に2021/12/10訂正
パーウェーナ世界は平均寿命が230~250才です
10才までは1年1歳
10才~50才まで3年に1歳
なので主人公ブルーナは11から12歳くらいの成長となります。
グーレラーシャ傭兵国では幼年学校は5歳から15歳までで、その後に中等学校で2年くらい礼儀作法を学び20から十年くらい傭兵学校でまなびます、その後就職して見習いを何年かして一人前とみなされます、専業傭兵も同様です。
更に学ぶときは外国に国内に大学が無いため留学となります。
30歳で成人とみなされて15歳くらい
50歳で大体20歳です、そこから4年に1歳
60才で大体22歳~23歳くらいです。
複雑ですみません。