アオハルのリスタート
いじめ…皆さんも一度は聞いた事があるだろう。
いじめとは、肉体的、精神的、立場的に自分より弱いものを、暴力や差別、いやがらせなどによって一方的に苦しめる行為の事で大人であれば暴行罪として刑事罰も与えられる大きな問題だが責任能力のない子どもの戯れなら心配無いと学校側はそれを問題とせず校内だけで収めようとする。
いじめている方は口で叱るが罰を与えたりはしない。
いじめられている方にはそのぐらいと我慢をさせる。
そして、いじめ、いじめられを繰り返して辛くなり自分ではどうしようもなくなったものから現実からこの世から退場していく。そんな現状があるのにも関わらず国はそれを黙認し、世間でも一時のピークを過ぎるとその出来事は無かったかのように忘れ去り今となってはそうさせたいじめっ子達でさえ罪悪感を感じなくなりいじめられた子は親や親戚数人以外の頭から忘れ去られる何もしていないのに何かされただけで誰よりも酷い仕打ちを受ける。
ここから話すのはここから近い未来の話…
誰もが国すらいじめを問題としなくなりいじめ0と謳うのもやめて完全にいじめが黙認され、問題視されずに腐った日本でいじめに抗い、いじめから守り、いじめをこの国から無くそうと奮起した七人の少年少女たちの活動記録である。
1.アオハルのリスタート
朝。僕…一ノ瀬 蒼斗十六歳高校一年生は、いつもより少しだけ早く二階にある自室のベッドで目が覚めた。しかし、いつもより寝起きがよく身体を起こし少しのびをすると布団から出て自室を出て階段を下り、洗面台で顔を洗って食卓に座る。イチゴジャムを塗ったトーストを食べ、昨日準備した学校の道具を持って玄関を出た。今日から僕は、夏休みが明け再び学校に通う。しかし、夏休み前と違うところがある…それは、僕、一ノ瀬 蒼斗は今日から場科菜乃花高校を辞めて、ここ愛凜学園高等学校に転入するという事だ。
僕は、前の学校でいじめられていた。最初は、大した事無かったんだ。何がきっかけがわかんないがある日学校に行ったら教室内のみんなの視線が異様に冷たかった。本当に何が原因かわかんなかったそれでも元々仲が良かった友達は、普通だったし特に気にしていなかった。でもその内靴を隠されたり机が外に出されているなどオーソドックスないじめが始まり友達も一人また一人と僕と話してくれなくなっていっていった。しかも、僕には妹がいるのだが僕が重度のシスコンだとか有る事無い事、主にない事が噂で出回り、さらに学校に居づらくなった僕は橋から飛び降りて全てを終わらせるつもりだった。僕は、十六歳の誕生日を迎える直前、誕生日の前の日の深夜、誰にも見つからないように家を出た。飛び降りるため近くにある橋に行くとそこには先客がいた。それは、まだ中学生くらいに見える女の子だった。見ると彼女は橋の欄干に足を掛けていた。それは恐らく僕がこれからやろうとしていた事だった。そんな彼女を見て僕は何故か、無意識に、声をかけていた。
「何をしているの?」
愚問だった。僕はその答えを知っている。彼女は驚いたようにこっちを見て顔がよく見えなくても分かるくらいに焦った様子で飛び降りようと掛けていなかったもう片方の足を上げた。すると僕はこれまた無意識に彼女に手を伸ばしていた。両手で彼女の腰のあたりを抱き抱えて橋の上へと降ろした。そして彼女は口を開いた。
「————るでしょ。」
その声はとても小さくなにを言っているのかよく聞こえなかった。
「?」
僕が首をかしげると彼女は急に声を張り上げた。
「見ればわかるでしょ‼︎」
それが僕の質問への答えだった。
「逃げたかったの、辛かったの、苦しかったの…」
彼女の声は弱々しく震えていた。そして彼女は、こう言った。
「あなたこそこんな時間に何してるの?」
僕は言葉に詰まった。僕も彼女と同じ事をしようとしてたのに咄嗟に彼女の行為を止めてしまった。これで僕も自殺しようとしてたなんて言ったら変な人だと思われるだろうか…。でも、僕は彼女に言わなければいけないと思った。人間には100年前後の限りある時間しか無いのに自分から死に急ぐと言うのがどれだけ愚かな行為なのかを…自分を棚に上げて何を言っているのだろうか。それでも、言わなければいけないと思った。二人称で初めて気づいた僕らの愚行を一人称じゃ気づかなかった自分の愚かさを。
「僕もいじめられてるんだよ現在進行形で。」
「⁉︎」
彼女は驚いた顔でこっちを見た。
「僕も君と一緒でここから飛び降りようとしてここに来たんだ。」
「じゃあ、なんで?」
「でも‼︎」
俺は食い気味に彼女の言葉を遮るように叫んだ。そして俯いて静かに喋り始めた。
「でも、気づいたんだよ。君のおかげで。それは間違いだと思ったんだよ。僕は君に何があったか詳しいことは何もわからない、けど、きっと同じ様な経験をしたんだと思う。だから思ったんだ。あんな奴らのせいでこんな年若な娘が自ら命を投げるのは違う、死んだ所であいつらはなんとも思わない。知ってたはずなのに今までそのことは考えなかった、考えないようにしてた。自分が尚更惨めに感じるから。でも君のおかげで気づけた、考えられた、逃げてもあいつらからしたら何にも変わんないって。こんな悔しい気持ちであの世なんていけねーよ。だから君、も…。」
「アハハハハッ」
彼女の方を見ると笑っていた。
「な、なに俺なんか変なこと言った?」
「アハッ、ハッ、ご、ごめんなさい自殺志願者がいじめについてよくもまぁそんなペラペラと、ハァーァ。君面白いねぇ。予定では踏み留まってくれれば良いかなと思ってたけど、変更、変更。あなた良いわー。一ノ瀬 蒼斗くん。あなたを我がISBに相応しい人間と考えるわ。」
僕は、驚いた。
なんだこいつ!急にキャラが変わった、ていうかなんか元気になってんだけど。蒼斗がそんな事を思っていると続けて彼女が
「みんな出てきて。」
とそう言った。すると、今自分が立ってる橋の入り口と出口から複数人の男女が出てきた。その頃僕の脳内はあまりの情報量にショート寸前の頭をギリギリまでフル稼働させてこの状況を整理しようとするがどうやらメモリーが足りないらしい。全然この意味不明な状況に追いつけないまま急に出てきた計4人の男女がさっきまで俺と同じで自殺しようとしていた彼女の隣に並んだ。
「あれ?菜乃花は?」
そう言ったのは背の高めな男子だ
「はい!はーい。ここにいますよっと。」
そう声が聞こえた方を見ると橋の下から元気な菜乃花と呼ばれる女子が飛び上がってきた。
「うわぁっ!なに⤴︎⁈」
「やばっ、驚きすぎて変なイントネーションになっちゃった。」
「あれ?あーちゃん落ちてこなかったけど作戦はどうなったの?」
そう菜乃花が言うと反応したのは落ちようとしてた彼女だ
「作戦は変更したわよ。この子なかなか面白いしきっと役に立つから仲間にすることにしたわ。」
「待って待って。なに言ってんの?仲間?全然話が見えないんだけど。取り敢えず一つ聞くけど、あなたがたどなた?」
「そうだった、まだ自己紹介してなかったわね。じゃあまず私から。」
春はそう言うと一歩前に出て自己紹介を始めた。
「えっと、私は春 飛鳥って言います。えっと後はこいつらの紹介も私がするわ。左から大輝、佳、拓也、菜乃花、洸太よ。そして私たち何者かと言うと…」
「私たちは、ISBよ。」
彼女はこれで説明したつもりなのだろうが僕の頭はやはり話について行けないのだった。