探し物を求めて。その2・・・ヘパイトスの火種 後編
強い。
それがミチルに対する率直な感想だった。
レイチェルのように種族特攻を活かしたテクニカルな戦いでもないし
セニアのように素早く手数+重い一撃を使い分けるトリッキーでもなく
派手さはないが、ただただ実直に強かった。
センスよりちゃんと修行をして順当に強くなった結果だろう。
得意な相手も苦手な相手もいない感じで、
基本に忠実かつ堅実な戦いをする。
ミチルの戦い方はどちらかと言えば受けが上手く、
敵に先手を取らせ、ガード、カウンターが面白いように決まる。
さらに自分から攻撃しても確実にダメージを与える。
流石、テッハの副官。
戦い方まで真面目か。
少し酔わせた方が可愛げある・・・いや、酔わすまでが大変だ、辞めよう。
セニア、リルム、ディアナが欠け、戦闘は大丈夫かと思ったが、
杞憂に終わりそうだ。
やはりミチルは軽戦士じゃなかったら是非欲しかったな。
強いし、可愛いし。
まぁ、ミチルも好きに動くみたいだからNPCだから、
仲間には成らないんだろうけど。
さて、ここ、コーランスの滝での新しい敵は、
アリゲータ、キングフロッグ、ランサーフィッシュ、ゼリーフィッシュ、アクアスライムが出現する。
大体レベルは41くらい。
今のアレンのレベルでは少し格上のレベルだな。
なんとかならないくらい離れてはないが。
と言うか、ミチルの戦力があるうちに戦いを重ね、
アレンとしてはレベルアップが出来るはずだ。
アリゲータは文字通りワニ型で、鈍いが噛みつかれるとかなりダメージがデカく、ワニ革をドロップする。
ワニ革は中級の装備に使われるほか、ご婦人の装飾品の材料として高値で流通してる。
キングフロッグは、魔法使いタイプの魔物で、メガスプラッシュを連発してくる厄介な敵だが、打たれ弱いので、真っ先に潰せば問題はない。
ドロップは魔法使い用の杖で、良いものもある。狙うなら☆5だ。
ランサーフィッシュは、カジキの小さいやつみたいな魚で、水面から飛び出し体を槍のように刺さる攻撃をしてくる。
どこかに突き刺さったランサーフィッシュは
そのまま戦線離脱するのはなんとも情けない話であるが、
実は即死判定が低確率であり、打ち所が悪いとマジで死ぬ。
頭や胴には絶対当たってはならない。
ゼリーフィッシュとアクアスライムは強さよりも、性質が悪い。
分裂はするわ、水面から不意討ちはするわで、
見えにくい上に顔面に攻撃するわで、面倒臭いことこの上ない。
但し、ゼリーフィッシュは、水撃スナイプと言う技を放ち、
ラーニングすれば水流撃になる。
これは欲しい。
水辺が近いからもちろん水属性が多いが、
その他、森の中を抜けるので今までも出現していた木属性や虫たちもいる。
今回は時間もないし、ラーニングやドロップを狙っての繰り返し戦闘はしない。
出来たらくらいで構えとこうか。
水流撃は覚えられたら儲けもんだが。
あくまでも突破するのを優先にしよう。
ミチルこそ無関係だし、あまり長く手を借りるわけにはいかないしな。
地味に上り坂で、草木の根っこもあるが、
ミチルはゆっくりでも確実に前に進んでいく。
止まるのは戦闘中だけだ。
最低限の回復魔法も使えるらしい。
有能すぎる。
アレンも負けじと横を歩く。
少しでも戦闘時間を減らしたいために、
常に白蓮剣状態にし、水辺からの攻撃に注意し、進んでいく。
魔力は食うが、ミチルに着いていこうとしたら仕方ないし、
常に属性剣状態にするのは、次のステップに行くのに必要なはずだし。
「アレン様、なかなか強いですね」
「ミチルさんこそ」
「私はまだまだです、アルベルト卿に比べたら」
「あれとは比べたらいけない気がしますが」
「あれって。借りにも四大貴族ですよ」
「仮にも。って言ってる時点でどうかとも思いますが」
「ですね、いやしかし、アレン様、正直もっと出来ないかと思ってました、すみませんです」
「いや大丈夫ですが、何故です?」
「アルベルト卿から、修行の手伝いをと言われていたので、もっと初歩的なことから必要なのかと」
「日々努力はしていますよ」
「なるほど、夏以降の修行時の参考にします」
だから、真面目か。
次の仕事のこと考えてるんですね。
「ところで、様ってやめません?むず痒いですから」
「わかりました、アルベルト卿に確認した上で、呼び方変えます。アルベルト卿のお客様ですから」
「いや、確認いらないですから」
だから真面目・・・以下略。
さて、しばらく戦闘を繰り返すうちに、幸いにも水流撃を覚えることも出来た。
空気中の水蒸気を使い、凝縮させて放つわけか。
乾燥地帯では魔力で水蒸気作ったりかな。
もちろん、ミチルには何も言わないが。
森を抜け、滝の上に出ると、竜胆はすぐに見つかった。
「これだ、間違いない」
「これがドラゴンハートですか、思ったより可愛い花ですね、アレンさん、知っているんですか?」
「いや、うーん・・・」
あ、さん付けになった。
しかし、返答に困るな。
ミチルはどこまで知っているんだ?
魔王云々は知っているだろうな。しかし、アレンが別世界の人間とかまで分かっているのか。
元の世界では竜胆と言う花です。という説明をしていいのか、
したとして通じるのか。
テッハが、彼女にどこまで話したかだな。
わからない説明を分かるようにするには時間がかかるしな。
出来れば夏以降の修行の時にしたい。
「ま、いいです、回収して、ドワンダさんのところに行きましょう」
「はい、エスパシオ、お願いします」
流石ミチル、本質とは関係ないだろうと判断したのか諦めたな。
助かります。
ところで考えてみたら、ミチルにディアナを連れてエスパシオ使ってもらったら、
サルトベルクやテトゥルジャに簡単に行けるようになるのでは?
ケリューンから飛行船の使用許可無くてもこれるなら、
解決しなくても先に進めるか。
いや、辞めよう。
ケリューンには恩を売っておいても損はないし、
困ってる人を助け、かつ自分たちが強くなるならやった方がましだ。
それが出来るかくらいは後で聞いてみようかな。
テトゥルジャ入口にまで飛び、
ドワンダを探すと、やはり墓の前にいた。
「お、ドラゴンハートはゲット出来たかしら?」
「これですか」
「ああ、これだわ、ありがとう、これで先生を弔うことが出来る」
「じゃあ・・・」
「うん、ヘパイトスリングよね、先生のだけど、持っていっていいわ」
「先生の?」
「ドラゴンハートを供え、ヘパイトスリングで火を付けると、ドワーフの魂はドラゴンに昇華すると言われているのよ」
「だから先生のヘパイトスリングは必要がなくなるんだ、あたしのはまだ無理だ」
「鍛冶屋、続けるんですか?」
「うん、昨日あんたに飲み比べ負けたことで、なんかスッキリした、もう一度最初からやってみる。まずは怪我を直すわよ」
「そうですか、頑張ってくださいね」
「ああ、ありがとう」
「では、僕らはこれで・・・」
「待ってくれ」
「まだ、何か?」
「悪いが、帝都ウィリアムに帰るんだろ?あたしをブラミスのところに連れていってくれないか?」
「ミチルさん、どうする?」
「私は構いませんが、ただ、ウィリアムの入口にしかいけないのでブラミスさんの所には徒歩になりますが」
「そういう話ではないと思うけど・・・」
変なところで真面目すぎる。
拒否するためにわざとか?
だとしたら、そんな遠回しの嫌みがドワーフに通じるわけないだろうに。
「ウィリアムの入口で構わないよ、頼む、あたしはもう逃げないって決めたんだ」
「・・・わかりました、すぐにですか?時間がないんですが」
「ああ、今すぐで大丈夫だ、荷物とかもここにある」
「では・・・行きます!」
結局、三人でウィリアムに帰り、
ドワンダをブラミスの家の入口まで案内し、
ドワンダが一人で行くと言ったので、そこで別れた。
ミチルとアレンはヘパイトスリングを手にテッハの執務室に戻った。
約束の2日でなんとかなった。
アレン達がブラミス邸を後にしてからしばらく後にブラミスの
『こんのぉぉ!放蕩娘がぁぁ!どこをほっつき歩いとったんじゃゃ!』
と怒号が飛んでいたのをアレン達は知る由もなかった。
正規ルートではない地域に来ているため、
全く、戦闘中描写を書いてないですが、
しれっとアレン君は水属性の付与攻撃を覚えます。




