火山散策その2・・・
さて、とりあえずエスケーパーで出て、エスパシオで戻って来れるか試してみよう。
ここに戻って来れれば散策をぶつ切りにして少しずつやれるからメリットはデカイ。
戻ってこれないなら今日進んだ分はやり直しだが、
無駄になる期間は最小限ですむし、もっと準備が出来るはずだ。
ゲーム中にエスパシオで飛べるのはせいぜい街の入口と言ったポイントで自由度は高くなかった。
しかし、ディアナが使うエスパシオは直接ライルエル家の前に転移したり出来る。
そういう仕様の魔法なのか、ディアナが特別なのかは分からないが、試す価値はある。
「ディアナ、エスケーパーを頼む」
「あ、はい、ですが、少々お待ちを」
ディアナはそこらへんに落ちていた石を何個か拾いあげ、ぶつぶつ何かを呟いた。
何をしているんだ?
ディアナの手の中がモヤモヤしてるのがわかる。
あ、魔力を込めているんだな。
その後は、数個の石を小さい六芒星のような形においた。
さらにディアナは離れたところから手をかざし、またぶつぶつ。
最後には石同士の間に淡い線が形成された。
「・・・。よし、これでいいです」
「それは結界ですか?」
「はい、流石リルムさん、わかるんですね」
「そこだけ魔力の流れが止まっているもの、やるのは難しいけど、一応はわかるわ。」
「まぁ、エルフ以外にこんなことをする種族はあまり居ないでしょう」
「ディアナ、これは何のための結界なんだ?そんな小さい場所だと・・・」
「あ、いえ、アレンさん、これはそういう侵入者対策とか、守護結界とかではないんです」
「結界だけど、結界の仕事はしないと。じゃあ、魔力の痕跡を残す役目だね」
「ええ、わかっているじゃないですか、アレンさん」
ゲーム中に同じようなことをプレイキャラ以外がやるイベントを見たことはある。
が、残念ながらイベントが終わると魔力を浪費した術者が死んでしまう。
え?ディアナ大丈夫かよ。
「ディアナ、これはエスパシオに対する保険だね?」
「はい、もし通常のエスパシオでここに来れなくても、私の魔力の痕跡があれば、そこを辿って合流点にすることが出来るかもしれません」
「そういうことが出来るなら早く言ってくれれば・・・」
「セニア、ディアナが言わなかったのは多分、確実に出来るかは分からない、しかも結構負担が大きいからなんじゃないか?」
「そうなの、知らなかった、ごめんなさい」
「大丈夫ですよ、セニアさんが私を責めたり悪気があるつもりではないのはわかりますし」
「まず、アレンさんが言った通り、負担はかかります。この魔力の痕跡を残すやり方は、結構な魔力を使いますので。私は魔力の自然回復量が高いので今すぐにどうこうはなりませんが。」
「この結界は、離れていても魔力を常に供給する必要があります。これは私でも回復量より少し多い魔力を消費するので燃費は凄く悪いです」
「多用するわけにはいかないってことだな」
「はい、流石に魔力が枯渇するような話にはなる前に結界が維持できなくなるので、枯渇まではしませんが、少なからず常に消耗するので、魔力量Maxでは居られないです」
「結界から術者が離れた距離、離れている時間が増えると消費魔力が増えるのか?外に出るのは大丈夫か?」
「距離的には全く関係ないです。長くなっても消費魔力は変わりません、私はそこまで離れた場所でやったことはないですが」
魔力に取って距離は関係ないのか。
電力のように伝わる際に欠損するわけではないのか。
ま、考えてみると攻撃魔法とかも、遠距離から放つよな。
空気中に拡散する話なんか聞いたことはないし、
そんなことが起こったら至近距離から魔法を放つ必要が出て来て
魔法使いに近距離肉弾戦を出来る身体能力が求められる。
そんなわけはないし、マッチョなリルムやディアナなんか見たくないし。
あの二人は華奢なモデル体型だからいいのだ。
「ただ、時間についてはおっしゃる通りです。長く離れればそれだけ魔力は消費しますね」
「ま、それはそうだろうな、張る魔力と維持する魔力のどちらが多いかはわからんが」
「勿論、張るときの消費魔力が大きいですよ。大体ギガランク3発分くらいは一気に消耗します」
「結構だな、大丈夫か?」
「はい、私はギガリーフランサーだと30発以上は連発できますから」
余裕だった。
魔力の総量が半端じゃねえ。MPを数値にすると既に700強ってこと?
カンスト間近ですやん。
もしくは使ってる最中にも回復してるからか?
やはり反則くせぇ。
そんなディアナの魔力を枯渇させたバイアールは余程エグい方法で吸いだしたのだろうな。
とはいえ、ランニングコストについてはいまいち数値化してくれないな、よくわからんのか。
「あと、この技は一回、合流点として使うと、結界が壊れるため、再度同じことするなら張り直しです」
「なるほどな、意外に不便だな。他に使える条件みたいのはあるのか?」
「結界を張るのはヨリシロがあればどこでも。ヨリシロはその場に長く有ったであろう物質で魔力が通ればなんでも大丈夫です」
「ここでは、さっきの石ころがヨリシロだな?」
「はい、後、張った結界を合流点として使えるかは、張った場所の環境変化や、魔力の流れ方が変わらないことが必要です」
「要するに敵とかが出現しない、工事とかされないってことかしら?」
「はい、そういう感じです」
「使えない結界はどうなるの?」
「ただ、魔力を消費するだけのゴミです、戻ってこれくてもここに来て解除しないといけません」
となると、意外にリスクが高い。
勝手に解除されないのはちょっと不便だ。
また、回復ポイントのないダンジョンではこの方法は難しいってことだな。
ラストダンジョンや終盤ではどうするかだな。
広大だから直ぐには攻略出来ないだろうし、食料をかなりの量持つのは手間だ。
ストアにアイテムである食材は入るから、ダンジョン内で調理か。
うーん、戦闘で疲れた後に現実的ではないな。
まぁ、後で考えようか。ルーアならなんか出来るかもしれないし。
「じゃあ、ディアナ、今度こそエスケーパーを」
「わかりました。では・・・」
『脈々たる空層を越え、我らを安息の地へと導く標となれ・・・エスケーパー!』
火山入口の馬車近くにワープした。
うん、エスパシオとは違う感覚だな。
「あ、お帰り、早くない?」
「いや、実は・・・」
サキに、休憩ポイントで引き上げたこと、
散策はまだと言う話を説明する。
決して尻尾を巻いて逃げたわけではない、戦略的撤退だよ。
「そう。それは、大変ね。とりあえず今日は馬車で休むでしょう?」
「ディアナ、時間的には大丈夫か?直ぐに戻るつもりだったりしたか?無理はしないでほしいんだが」
「大丈夫です、睡眠時は結界へにの供給魔力量より回復量の方が勝りますので」
「じゃあ、サキ、今日は馬車で休もうかな、水も補給したりするしな」
「じゃあ、直ぐに食事準備するわね」
時間的にも夕暮れだし、しっかり休んで明日に備えた方がいい。
明日は早くから動こう。
パーティーのお母さん、もといサキが食事を準備し始めた。
それと同時にセニアから相談を持ちかけられた。
「ねぇ、アレン」
「ん?どうした?」
「あたし、火山の敵にあまり役に立たないよね?」
いやな流れだな。パーティーを離脱します!とかは止めてよ?
確かにスピリットには決定打がないが、戦力としては必要だ。
役立ってないよねを肯定するわけにはいかん。
しかもセニアのスイカが見れないのは、アレンのモチベーション低下を招く。
だめだ、断固拒否する。
居てくれるだけでいいから。
「いや、そんなことは・・・ヘルハウンド相手は全部任せてるし」
「それだけだからね。だから今の戦いを辞めようかと」
「ま、待って!セニアが居なくなるのは嫌だ、ダメだ!」
「ん?アレン、何の話?」
「いや、戦いに行き詰まったからパーティーから抜けるって話じゃ?」
「あ、そういうことか、違う違う。私はずっとアレンの仲間だよ!」
「しばらく爪での戦いを辞めようかと思ってるんだ、棍装備ならまだ何とかなるかもしれないし」
「え?なんだ、そっちか」
「ウェアタイガーが戦いに行き詰まったくらいで戦うのを止めるわけないじゃん」
「あ、いや、ごめん、そっか、そうだよな、安心した」
「で?どう思う?」
「うん、試す価値はあるかもね、いいよ、棍装備で使える技覚えるかもしれないしな」
「うん、戦力がダウンしない範囲で色々試すね」
「じゃあ、良い機会だからビーストネイルをブラミスに強化してもらうか」
「うん、そうだね、この前も出すか迷っていたしね、お願いしようかな」
セニアが戦線離脱しなくて良かった。
ずっと仲間だと。嬉しいけどさ、いつかは嫁・・・いや、なんでもない。
とりあえずは素材と合わせてブラミスに送りつけよう。
ゲーム中にビーストネイルがこれだけ序盤で手に入るのはあり得なかったが、後半は普通にドロップする敵もいる。
様々な武器の素材に使えるシロモノだが、何にしてもさして差はないだろう。
今の手持ち素材で作れるやつにすればいい。
ブラミスにはビーストネイル、酸液付き牙の二つの武器と、羽系素材を混ぜてもらって、
グリフォンネイルを作ってもらおう。これは、予定通りだ。
パーティー内で☆5を一番早く手にするのはセニアになりそうだな。
この日は、食事のあと、ブラミスに依頼の手紙と素材などをオクールで送り、
直ぐに休むことにした。
サキ、レイチェルを加え、1対5の延長戦と言うわけには行かなかったのが残念。
ま、レイチェルに手を出すつもりはない。
かなり年齢も上だし人妻だし、ヒューマンだし。
サキもちょっと幼いし。
いや、違う、明日の散策、戦闘に差し支えるからだよ。ということにしておいて、うん。
次の日、補給や、サキが作った携帯食を持ち、準備完了。
皆、元気だ。
そして、満を持して、エスパシオ!
とは行かず、エスパシオで昨日の回復ポイントまでは戻れなかった。
ディアナ曰く、やはり街とかじゃないと想像が難しいからかと。
「ですから、保険の方を使ってみます」
「頼む」
『汝、我が力の一翼にして、此に跨がる懸隔を虚無にし、我らを光となし其の地へ導かん・・・コンフィレンシア!』
エスパシオじゃないんかい!
コンフィレンシアか、スペイン語で合流だな。
カタカナだと少し違うんだよな。
まぁ、いいけど。
というか、こんな魔法、ゲームに有ったかな。
ディアナもルーアに負けず劣らずなんでもありやんか。
眩い光に目を閉じた。
そして、目を開けなくてもわかる。
間違いない、火山の中の水場だ。
「っと、成功だな?」
「す、すごい魔法ですね、ディアナさん」
「はい、良かったです」
「ディアナ、ありがとう!」
「いえ、皆の負担が減るなら、幸いです」
「次の回復ポイントでも同じことが出来るかな?レイチェル、わかる?」
「いや、セニアさん、祭壇はここから近いので、私はここの回復ポイントまでしか来たことがないんです」
結論から言うと、この奥にもう1つ回復ポイントはある。
いや、ゲーム時はあった。
48年の間に何もなければな。
使えたとしても、そこはイフリートの手前だからかなり奥になる。
長いため、途中休む必要がある。
しかも休むと言っても敵は出る。交代で仮眠が関の山だ。
そう、ここからが本番なんだ。
さ、頑張っていこうか。
さて、ケリューンのタイムリミットまで残り8日か。
帰りはエスケーパー、エスパシオで一瞬とはいえ、余裕綽々ではないだろうな。
あ、タイムリミットで言えばルーアの夏までもあるのか。
ま、そちらは気にしないでいくか。
さ、絞まっていこう。




