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とある天才が異世界でも規格外だった件  作者: dainasoa
第4章 四人は荒野をひた走る
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騎士団長に対面・・・

城門があき、ケリューンに入った。

とりあえずは入口に入ってすぐのところで待てとのことらしい。


まずは謁見をしたい。

確実性はないが、信頼に足る重戦士を紹介してもらえたりしないかとか、

サルトベルグを中心とする水の大陸に渡るための許可が欲しい。

サルトベルグにはカッシームから船で行くか、ケリューン西のコヌアス岬から飛行船で行くかしかない。

カッシームルートは誰でも使えるし安価だが、渡航に20日以上とかなり時間がかかり、

ルーアの宿題が間に合わなくなりそうだ。

しかも船酔いするやつがいるから20日も船に乗らせるとそれはやばいだろう。

一方、空路は使うにはケリューン王の許可がいるが、使えれば2日くらいでサルトベルグに行ける。

重戦士がどこで見つかるかわからない以上、早く動きたい。


さて、ケリューン内は一階に、武器屋、宿屋、食事処や、ギルドなどの街機能がある。

言うまでもないが一階には馬車もそのまま入れてしまう。

何台か馬車も駐車されているし。いや、駐車なのかは、知らないけど。

二階に町人達が住む区画、三階に兵士や憲兵達の詰め所、訓練所が配置されている。

三階から渡り廊下を抜けた先に王族、貴族の住居や謁見の間などがある構造になっている。

一つの建物なのに結構な広さがあるが、中はかなり涼しく調整されていた。

勿論、クーラーとかではなく、外壁の中に冷却用の水が循環しているらしい。

冬はどうするのか知らないが火の扱いはお手のものだろう。

水が貴重ではあるが、循環しているのだから綺麗な飲み水でない。

循環用にはポンプやモーター、それに熱交換器が使われているのかな、なら電気はあるかもしれないし。

いや、深く考えるのは止めよう。

古代エジプトなども同じことがあって、奴隷で支えているとのことだったし、

この世界の、この時代の奴隷制度にまで首を突っ込む話ではない。

し。


門のところで入国手続き、審査をしていたリルムが帰ってきた。


「アレン、二階までは自由にしていいみたいよ」

「ありがとう、でもそれだと王様には会えないってことか?」

「深夜だからかな?」

「うーん、しばらくは。って言われたから朝になっても駄目かもしれないわ。なんか水の問題が・・・って」


水・・・さしあたり思い当たるのは水不足か?

それは確かにケリューンにとってみれば由々しき問題だろうが、

ぶっちゃけいつもそれに近い状況になってるだろうし、

それで謁見出来ないとは思えないんだが。

ケリューンは結構開かれた王室なイメージがあって、

旅人から解決策を聞いたり、その逆も盛んなはずだったんだが・・・

二代目になって変わってしまったか。

いや、リルムの反応を見るとそうじゃない、普通は会えるけど今はなんらかで駄目と言われてる気がする。

となると、水の問題というのは一般旅人に対するカムフラージュか。

本当はもっと大きな問題をはらんでいる可能性があるか。


「いや待って、確か、キリアルの盗賊騒動で、名前忘れたけど、軍人のおじさん、えっと」

「ハルバー少尉だな」

「あっ、そう、それ。その人が特別謁見証ってくれなかったっけ?それで会えないのかな?特別なのに?」

「確かに。それで会えないなら実質何しても会えないってことじゃないか」


セニア、ナイス!すっかり忘れてたよ。

ただ、人の名前分からないからって、『あっ、そう、それ』呼ばわりは酷いが。


「まぁ、いいさ、明日の朝になったらわかるだろう、朝、兵士に特別謁見証見せてみようか」

「じゃあ、私と馬車はここにいるね、アレン達は宿に。飲み水はある程度持っていってね。買うとめちゃくちゃ高いはずたから。あ、そうそう、ブラミスから荷物が来てるよ」

「サキ、色々とありがとう」


出かけにハンカチを忘れないように声かけしてくれる母親か、ってくらい気が付くなぁ。

ブラミスからの荷物を受けとると、緋色の衣と、ブラックヘルムと金は後からでよく18000フィルとの手紙が入っていた。

相変わらずのどんぶり勘定である。

緋色の衣は火の耐性があがるし、カッコいい。

ブラックヘルムは守備力は今と変わらないが、闇耐性付きだ。

デザイン的には酷い・・・。

ブラミスの二角兜級にダサい。

今の黒耀の兜の方がカッコいい・・・。

まぁ、いいか。耐性は大事だし。


「緋色の衣はディアナだな、ブラックヘルムは俺だよな。守備力は変わらないが闇耐性があがる」

「アレン、その兜・・・ダサいわ」

「わかってる。でも仕方ないだろ、見た目はいいだろ、それより、ディアナ、ほら」

「え、いいんですか?ありがとうございます」

「火の大陸にいる間は、ディアナが属性的に一番やられる可能性あるからな」

「ですが、体力はあるので余程ないと思いますが・・・」

「まぁ、そう言うなって。これでディアナは火が+2か、弱点で2倍になって耐性で50%カットだから、火も普通になったな」

「へぇ、そうなんだ、+って一個が25%なんだ」

「あ、うん。+を4つ付けると無効化になるよ」

「+を5つ付けると?」

「普通は付かないんだけど、その属性の人、そうだな、例えば俺は風だろ、俺に風+5をつけると、吸収になるよ」

「きゅーしゅー?」

「ダメージは+4と、同じ無効化だけど、魔力を吸収して回復できるんだ」

「へぇ、凄いね」

「まぁ、+5なんか滅多に付けないよ、他を付けるのが一般的だな。例外があるとすると、種族的優位属性くらいだな」

「もう、アレン!わかる言葉で言ってよ」

「要するに、例えば火の精霊みたいなやつには何もせずに火+5がついている。さらに中には魔力だけじゃなく、体力を回復できる強吸収++5もついていることがあるんだ」

「凄いね!」

「いや、弱点属性に滅法弱くなるリスクもあるさ。++5の火がついている場合、-5の水が付くから水に対してはダメージ250%足されるからな」


そんな話をしつつ、宿に向かう。

料金は高くないが、食事はもう取れないらしい。

ド深夜だしな、仕方ないか。

まぁ、飯は馬車で食べたしな、腹は減ってないし、特にいいか。


次の日、朝は宿屋の食堂で食事をとる。

これまた肉の辛いやつがメインだった。そして水が糞ほど高い。

辛いのに水が飲めないって。

まぁ、味としては、不味くはない。

だけど、カッシームの飯は旨かったし

馬車でサキが作ってくれた食事も美味しかったからか、

旨い食べ物に飢えてないから、至極普通に感じてしまう。

パサパサ感も気になってしまうし。

むしろ辛い肉料理を嬉しそうに朝からがっつり行けるのは右にいる虎娘くらいなもんだ。

あぁ、肉、飽きたな。

朝飯には焼き魚に白米、納豆、味噌汁が食べたい。

飯だけカッシームに行きたいなー。


食事をゆっくりしていたら、兵士が一人訪ねてきた。


「もし?アレン・クルス殿とリルム・ライルエル殿はいらっしゃるか?」


声からすると女だ。

だが、フルフェイスの兜のせいで顔もステータスも見えない。


「はい?私達ですが、なんでしょうか」

「やや、探しましたぞ、クードで待っていても一向に現れないので焦りました」


ありゃ、クード飛ばした弊害がこんなところに有ったのか。

しかし、そもそも待ち合わせしたわけじゃないし、

『やや』って恭しく普段使わないような感嘆符を言われても

正直知らんがなって話だが。

この人はクードで何日忠犬ハチ公をしていたんだろう。

キリアルを出て、ルーアのところで寄り道もしたし、

クードを飛ばして最短で来たのだから計算上は3~4日待たせたことになるかもしれない。

うん、知らんがな。

しかも、キリアルから西には出たけど、ケリューンやクードに行くとも一言も言ってない。

待ち合わせもしてない見知らぬ俺たちを探すなよ。

ケリューンで手続きしたので、なんらかの方法で俺たちが入国した情報をゲットし、

エスパシオで来たということか。


「あの、失礼ですが、どちら様で?」

「そうですね、こちらこそ失礼しました」


兵士は兜を脱ぎながら自己紹介を始めた。


レイチェル・ロレンス 38歳

ヒューマン 女

Lv45 剣豪☆6


おっ、レベルもジョブもなかなか強いな。

ジョブは軽戦士のかなり上級者で、複数の種族特攻剣技が使えるはずだ。ただ、歳がなあ。

流石にダブルスコアは上すぎる。

見た目はかなり若めに見えるが、

俺はごまかされんぞ!

スキル的に魅力はあるとは言え、軽戦士は間に合ってるし。

あ、誰も仲間になってくれるとは言ってないか。


「私はレイチェルといいます、ここ、ケリューンの騎士団長、ルドルフの補佐官を務めています」

「はぁ、その騎士団長補佐官殿が俺達に何か用ですか?」

「率直に申し上げます。あなた方がキリアルで『赤き爪痕』を捕縛されたと聞きました。その腕前を見込みまして力を貸していただきたく・・・」

「『赤き爪痕』?なんですか、それ、鷹の爪みたいな?」

「あれ?あなた方ではないのですか?ハルバー少尉からアレン様とライルエル様の名前を聞いておりますが」

「あ、分かった、あの盗賊のおっさん達か、そんな団体名だったのか。うん、確かに。襲われたので返り討ちにしました、このセニアが」


率直にダセェ!厨二病全開や。

赤き爪痕って!爪痕かよ、本体無いじゃん!

ブラックヘルムの形くらいセンスがないな。


「え?お一人でですか?」

「はい」

「えっと、闇討ちされたのでは?」

「あ、はい、されましたね、気付いていたので、問題ありませんでしたが」

「それは凄いですね、まぁ、アレン様一行がパーティーで倒したという話でいいのかなぁ・・・ま、間違いなくあなた方が捕縛に関わった、でよろしいのですね?」


話をまとめると、やはりセニアは普通じゃないらしい。

ディアナとあの日の夜にアイコンタクトした通りだ。

セ◯ムしてますかならぬ、セニアしてますか。うむ、防犯面はバッチリだ。


「まぁそうなるのかなぁ、リーダーは逃しましたけどね」

「それについてはこちらで既に捕縛しておりますのでご安心を」

「そいつぁ良かったです。しかしながら、俺たちに何をさせるつもりで?とりあえず王様に会わせてもらいたいのですが?」

「うーん、王に会うのはいささか難しいかもしれません」

「なぜです?特別謁見証もありますが」

「ここではちょっと・・・ルドルフの執務室に行きましょう、よろしいですか?」

「着いていけばいいので?」

「はい」


そのまま3階に向かい、離れの前の部屋をノックした。


「団長、レイチェルです。皆様がいらっしゃいました」

「うむ、入れ」


髭を蓄えたおっさんが一人、椅子に座り、事務作業をしていたが、すぐ顔を上げる。

体躯は逞しいが、テッハみたいにガチムチではなく、すらっとしているが身長が大きい。


ルドルフ・ロレンス 62歳

ヒューマン 男

Lv57 ヘビーソーダー☆7


「初めまして、ルドルフといいます、騎士団長を務めています」


ロレンス?

レイチェルと家族か、娘かな。

ジョブのヘビーソーダーは重戦士の中でも両手大剣を専門に振るうスペシャリストだ。

一方、テッハのソードマスターは剣ならなんでもござれで、

普通はしないが、使おうと思えばダガーから両手大剣、長尺刀までも使えるジェネラリストである。

どちらが強いかは一概には言えないが。

アレン達も簡単に自己紹介をする。


「よくいらっしゃいました、赤き爪痕の件ではお世話になりました」

「まずは、これをお納めください」


皮袋を無造作に机においた。音からして金だな。まずは、金からか、嫌な男だ。


「これは?」

「なぁに、赤き爪痕を捕らえた懸賞金などです。10万フィル入っています。もちろんリーダー分は入っておりませんが」


捕らえたのは下っぱだけだとすると一人3万以上。多い、多すぎる。

先のバイアール団についての懸賞金は

多少見せしめで色を付けたらしいが、

ライルエル家だからといって多くしていたわけではなく、

かなり正確に戦闘能力に比例していたはずだ。

いや、ライルエル家が色を付けたなら尚更今回が高すぎる。

今回の赤き爪痕については、セニア曰く、各人を一発でのしたらしい。

いくらセニアのレベルが上がっているとは言え、

流石にバイアール達と比べて強いわけがない。

バイアール団の3万越えはバイアールだけで、かなり強かったゴーリやサルエル、レッジより高いのはやはりおかしい。

ゴーリだったらセニアの一撃にも耐えるはずだし。

これだけでなんか意図があるんだなと思う。

この金は気安く触ると火傷するみたいだな。

まったく、この騎士団長、いきなり金をちらつかせて出方をみるとか結構食わせものかもしれない。

が、そんな腹の探り合いに付き合ってやるつもりはさらさらない。

初対面を金で釣るのは黒い腹を探られたくないと相場が決まっている。

そうじゃなきゃ、補佐官を寄越して更に部屋までつれてくる手間は省きたいはずだ。


「『など』とは?要するに今から話すことへの口止め料ですかね?」

「ほう、言葉のアヤと聞き流しても仕方がないくらいの部分ですが、いやはや、参りましたな」

「私を試しておいでですか?そちらがそのつもりでしたら、その金は不要ですし今すぐ失礼いたしますが!?」


これはブラフだ。

金は特に要らないがすぐに失礼するつもりはさらさらない。

失礼したらどうやって水の大陸に渡ろうか問題で

またテッハかラルバに面倒をかけるはめになる。

だが、十中八九帰られるとケリューン側も困るはずだ。


「いやはや、なかなか優秀ですな、この私に対してそこまで毅然とされるとは」

「言葉での喧嘩は買いません、暇ではないので。では、失礼します」

「い、いや、待ってくだされ、試すようなことをし、お気に障ったなら謝ります、そんなつもりではないのですよ」

「なら、初めから『今から話すことは他言無用で』と言えばいいのでは?懸賞金などと回りくどいことをする必要はないし、そういうのは苦手なので」

「そうですか、すまないことをしました。何故私の意図がお分かりに?それに何故今からの話だとお分かりで?」

「赤き爪痕ですか、確かに闇討ちされるから大変ですが、殺されるような話ではなく追い剥ぎの部類でしょう」

「闇討ちに頼るということは戦闘力に自信がないためですね。つまり、奴等は強くもないですし、対策が出来ていればまず負けません」

「逆に言えばそんなに懸賞金をかける必要性はないということです。国としても多少の懸賞金はかけ、対策しているかのアピールはしていても、実際は人員を割く余裕がないだけで、あまり真剣に対処してないのでは?」

「なるほど、そこまでお見通しですか、いや参りました。なかなかに筋が通っておいでだ」

「ですから、この金には別の意図があり、受け取りをしたら拒否できない依頼をすると。

そして、赤き爪痕については既に起こっていますから、隠すこともないでしょう」

「ですから、今から起こることについて口外無用だと推論しましたが、異論はおありで?」

「素晴らしい、全くその通りです、いやはや試すつもりが試されましたな、大変失礼をいたしました、この通りです」


ルドルフは深々と頭を下げ謝罪した。

圧迫面接をされていただけで悪い人ではないのか。


「では、真剣に話をいたします。聞いていただけますか?」

「内容次第です、もちろん口外は致しませんよ」

「助かります」


ルドルフはケリューンが抱える政治的な問題を語りだした。

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