ボス戦を経験してみる
ゴブリーダーは体の一際大きいゴブリンで、
通常攻撃の他、火炎撃、仲間を呼ぶ、一斉攻撃命令、痛恨を放つ敵で、序盤ではまぁまぁの強敵だ。
火炎撃は稀に火傷の状態異常も引き起こすし、
痛恨は文字通りダメージがデカイ。生身で受けたら涙がチョチョ切れるだろう。
いや、骨が折れるかもしれん、比喩ではなくマジに。
なにせダメージを痛みに置き換える指標がない。
痛恨で約30ポイントのダメージだが、そもそも30ポイントってどれくらい痛いんだよ?
自分のHPもわからないし。
ただし、痛恨はゴブリーダーが一人になった時だけに放ってくるのが救いだ。
また、仲間を呼ぶで呼ばれるのが、ゴブやハイゴブならいいが、エリートゴブを呼ばれると苦戦は必至。
エリートゴブは強さもあるが、経験値も高いし、所持金も多い、ドロップも序盤にしてはいいものを落とすので、少しレベルが上がっていれば狩り対象になる。
ゴブリーダーが呼ぶ以外では遭遇率が低いため、ゴブリーダー戦ごと狩り対象になるわけだが。
一斉攻撃命令は手下にゴブ系が2体以上いる場合、タコ殴りにされるためかなりダメージを食う。
要するに、ゴブリーダーは後回しにして一人にすれば痛恨でダメージが増えるし、
先に倒そうとして手下を無視するとタコ殴りにされてやはりダメージが増す。
戦略や数の調整が必要だ。
一番良いのは常に手下の数を一体にし、ゴブリーダーを速攻で倒すか、
常に全体攻撃を仕掛けるのどちらかになる。
今は全体攻撃手段がない、くそっ、攻撃魔法使えないのがなぁ。
「セニア、常にハイゴブを一体残した状態にしてくれ、ゴブリーダーは仲間を呼ぶ、増えた敵はすぐ倒す。たまに来る赤いやつは要注意だ!」
「はい、分かりました、でも、なぜわかるんですか?」
「詳しくは後だ、まずはハイゴブ一体片してくれ」
「かしこまりました!」
セニアにハイゴブを任せる。
Lv5のハイゴブ一体くらいは処理してもらいたいし多分問題ない。自分はゴブリーダーに向かい合う。
どの攻撃も痛いが最低でも痛恨だけは勘弁だ。
「来いよ、デカブツ!」
「オマエオデノアイテ?ナラ、ゴロス」
ゴブリーダーが振るった棍棒をヒラリとかわし、銅の剣を一振り。
ゴブリーダーの腰辺りにヒット。
駆け抜け様にもう一発。
リーチはあちらに分があり、スピードはこっちが勝っているという感じなのが分かった。
そしてやはり銅の剣は切れ味が鈍い。切るというか殴るに近い。
流石に雑魚とは違い、二発では倒れない。
振り返ってみるとゴブリーダーの棍棒が赤くなっていた。
火炎撃がくる!
そう咄嗟に判断しバックステップで距離を取る。
それにしても棍棒が燃えないのは何故だ?どうでもいいが。
アレンはギリギリかわしたが、体勢を崩した。
だが、ゴブリーダーは火炎撃の後は必ず仲間を呼ぶ。その為、追撃は来ない。
モンスターの多数はパターンで動くものも多く、アレンは頭にそのパターンが全て入っている。
パターンが1つのモンスターもいれば複数あるモンスターもいる。
ゴブリーダーは初手はランダムだが前者だ。
「セニア!仲間呼ばれる!早いところ一体片してくれ!」
「はい!」
体勢を立て直しつつセニアにお願いする。
「ギギギ、キシャー!」
ゴブリーダーが奇声をあげるとどこからともなくゴブが出てくる
ゴブLv6
一体だ、レベルは6だが、複数じゃなく良かった。
ちょうどその時、セニアが相手をしていたハイゴブLv5が一体倒れた。
「セニア、引き続き先にこっちのゴブ任せた。ハイゴブ一匹は倒さないでくれ!」
「はい!」
指示すると同時にアレンもまたゴブリーダーに向かいジャンプし上段から銅の剣を叩き下ろす。
頭にクリーンヒット。
「イダイ」
「もう一回!」
下から剣を切り上げ左腕にブスリ。
「イダイ、イダイ!」
ゴブリーダーはダメージが蓄積しますます遅くなってきた。
アレンも無傷ではないが、痛恨や火傷という大ダメージはさけられている。
ゴブリーダーの攻撃をかわし、もう一発上段から剣を振り下ろす。
そろそろなはずだと思うんだが、ダメージが数字で見えないのは戦闘の終わりが分かりにくいな。
セニアはどうなったか、そちらを見てみた。
セニアは呼ばれたゴブLv6を既に倒していた。
その上で最初から居たハイゴブLv5の攻撃をかわし続けていた。
遊んでいるか、踊ってるようにも見える。
自分で言っていたように回避が得意なんだろう。
ハイゴブ程度の攻撃はかすりすらしないってか。
というか、セニア殆ど無傷では?あれが一人でも平気な理由か。
いけない、戦闘に集中しないと。
その後、ゴブリーダーが火炎撃を放とうとしたとき、アレンの中で閃く感覚があった。
さっきの火炎撃よりも動きがはっきり見える。なんだ、この感じは・・・?
難なく避けたが、さっきの感覚が分からず、アレンは少し意識が遠退いて攻撃が出来なかった。
「アレンさん!しっかり!」
セニアからの檄で気がついた。が、その間にゴブリーダーは仲間を呼んでしまった。
エリートゴブLv10
うぁ、一匹だけど来ちゃったよ、あの赤い奴。
しかも初のレベル二桁。
それにしても、エリートゴブは自分よりレベルの低いゴブリーダーに従うのかよくわからんな。
「セニア!今着た赤い奴は強い。すぐにハイゴブを倒して、赤いあいつの相手を頼む」
「はい!」
セニアに取っては2対1になってしまうが仕方ない。
エリートゴブは攻撃魔法も使うため放って置くわけにはいかないが、タコ殴りにされるのは避けたい。
倒しやすさを考えると、一体残すのはエリートゴブになる。
後はエリートゴブより先にゴブリーダーを倒すのが最善策だ。
セニアはすぐに大木槌で一発、ハイゴブを沈めた。
どうやら後一発で倒せるところまでは攻撃をして削っていたようだ。頼もしすぎる。
エリートゴブは素早さも攻撃力もハイゴブと比べて高い。3倍ではないが。
早いところゴブリーダー倒して加勢したいところだ。
気合いを入れ直し、ゴブリーダーに銅の剣を構え直す。
そして左上から叩き下ろしその勢いのまま右上から叩きつける2連続攻撃を放った。
「イデ、オデモウムリ、ネル」
ゴブリーダーが倒れた。やった、けっこうかかったな。殺すまでは必要ない、侵入者はこっちだ。
振り返って
「セニア!大丈夫か?」
「きゃあ!」
エリートゴブの一撃がセニアに入った。
ただの通常攻撃だが、セニアは防御が低いらしい。
「だ、大丈夫です」
「セニア、先に傷薬を」
「はい」
セニアは自分の腰袋から傷薬を取りだし治療をしはじめた。
「俺が相手だ」
「ギギギ!」
エリートなのに喋れんのか。
向き合ったら自然に体が動いた
「・・・火炎撃!」
「ギャアァァァァ」
「 あれ?出来ちゃったよ」
一撃でエリートゴブを倒せた。セニアからある程度のダメージ貯まっていたのかも知れないが。
「セニア、無事か?」
「大丈夫です、大したダメージではなかったです。当たるとは思わなかったで、びっくりしました」
「ハイゴブとかの攻撃は当たってなかったの?」
「あれくらいは避けれます」
「だから一人なら平気って自信あったのかい?」
「それだけではないですが・・・内緒です、女の子の秘密です」
「そ、そうか。」
女の子って、お前♀じゃん、まぁ良いけど。
「それよりもアレンさん、最後の一撃、凄かったですね」
「あ、あぁ、なんで出来たかわからないが、火炎撃出来た。ゴブリーダーの真似が出来たらしい」
「凄いですね、記憶無くしてても強いし、モンスターに詳しいですよね?」
「ま、まぁな」
「でも一撃って・・・私あまり攻撃出来なかったのに」
「あ、そうか、属性だ。火炎撃だもんな」
「え?」
「エリートゴブは木属性なんだよ。使ってくる攻撃魔法からして。まぁ今回は使われる前に倒したけど」
「なるほど」
「だから一撃だったんだ、多分」
それがゴブリーダーに従う理由か。逆らったら火炎撃食らうことになると。パワハラか。
ドロップを集める。やはりエリートゴブは良い。落とした金も殆どエリートゴブだ。
鉢金☆3
折れた棍棒
藁の草履☆1
小鬼の牙×2
860フィル
「これ、なんですか?」
「鉢金だ。エリートゴブが落としたんだな。頭に巻いて頭の前面を守るためのハチマキだ。鉄が入っているから見た目より防御力が高い」
「じゃあ、アレンさんがつけて下さい」
折れた棍棒と小鬼の牙は素材であり、武器じゃないから☆が見えないらしい。
草履は売りだな、もうあるし。
「さて、セニア、帰ろう。お母さんが待っている」
「はい」
帰路についた。
帰り道はたまにフラワー系の敵と戦ったが、
ゴブ達は遭遇してもすぐに逃げ出すので戦闘にならなかった。
ゴブリーダーを倒したからだろう。
森から出てアリアナの村に帰るころには夕暮れになっていた。