大陸を渡る準備を・・・
「さて、そろそろカッシームに行く旨をテッハに伝えないとな」
「じゃあ、帝都?オードリー?」
「まずは、帝都だ。テッハは多分オードリーだろうが、執務室に伝えればいいだろう。ブラミスにも顔だしたいし」
「ブラミス?なんか装備を頼むの?」
「とりあえずは、ディアナの装備をな・・・」
「・・・あのドワーフですか・・・わかりました、帝都ウィリアムですね。では掴まってください」
「え、えっと?」
「魔法で移動出来ますが、まさか歩いていくおつもりでしょうか」
「お、ディアナはエスパシオが使えるんだ」
「はい、というか、皆さんは使えないのですか・・・なかなかに不便な旅をしていたのですね」
エスパシオ。スペイン語で空間を意味するが、この世界では転移魔法である。
行ったことがある空間に転移する魔法だ。
「すまんな、まだ大陸を渡ったりしてないんで、なんとかなっていたんだ」
「そうですか、私もこの緑の大陸からは出ていないので、行けるのは、まだ、アリアナ、イレイン、ウィリアム、エルガルド、オードリーだけですが」
「十分だよ、ちなみにエスケーパーは?」
「・・・使えますが」
やばい、ディアナが(こいつら大丈夫か?)みたいな感想を持っているかもしれん。
切れ長の目で蔑まされ見られるのは悪くないが。
それはさておき、エスケーパーはダンジョンからの脱出魔法でこちらもスペイン語だ。
エスパシオもエスケーパーも風属性なのに、何でアレンが使えないんだよって話だがな。
助かるな。
ダンジョンでボスを倒した後、歩いて帰るのは本当に面倒くさい。
エスパシオにしろ、エスケーパーにしろあれば旅が楽になるのは間違いない。
「・・・じゃあ、改めて行きますよ。掴まってください」
「我が力、千里をかける光となりて汝らを彼の地へ導かん・・・エスパシオ!」
いやいや、彼の地って。
まばゆい光に包まれ、次に目を開けたら帝都ウィリアムの入口に立っていた。
飛んでいくような感覚はないんだ、気づいたら周囲の景色が変わっている不思議な感じ。
まずはテッハの執務室に行く。
やはりテッハはいない。
若い兵士がおり、伝言が出来た。
ここらへんはリルムがつつがなく行う。
「リルム・ライルエルです。テッハ・アルベルト卿に言伝てを願いたい」
「は、ライルエル様、かしこまりました」
「私達一行は、これからカッシームに向かいますので、おいおい宜しくお願いしますと、伝えてください」
「は、必ず、アルベルト様は今はオードリーにいますので、本日中には伝わります」
「頼みました」
「これで良さそうです」
「リルム、ありがとう、手慣れているな」
「まぁ、日常ですから」
「どうやってテッハに伝わるんだ?」
「連絡、伝言などの類いで同一大陸内であれば早馬を走らせますね」
早馬。かっこいいなぁ。
次はブラミスのところに行くことにした。
そういや、バイアールから奪ったシルバースタッフがアイテムストアに入ってはいるが、ディアナは使うかな?
自分を拐って閉じ込めていた相手が使っていた武器なんか使いたくないか。
と聞いてみたら、
「いえ、あの男が使っていたとかそんなことはどうでもよく、スタッフですよね?私はスタッフは使いませんが」
さいですか。前の持ち主なんかどうでもいいんだ。
ワンド系が欲しいわけね。
まぁ、ワンド系は魔力を高める効果が優先されているため、物理的には弱く、スタッフ系は殴れる反面、魔力的にはイマイチなのは分かっているが、
使えませんではなく、使いませんときたか。
ゲームでは魔法使いに関係なく装備させていたが。
まぁ、はっきりしてるということだ。自分の戦い方をよく知っているということか。
ま、いいや。どうせブラミスの所に行くしな。
「ブラミス、邪魔するよ」
「お前さんたちか、まぁ入れ、こっちも用があったんでな、丁度良いわい、んで?今日はどうしたんじゃ?」
「そろそろカッシームに渡るんだ。だからちょっと装備を頼みたい。仲間が増えたから整えたいな、後は初心者でも使える盾を見たい」
「ん?エルフか!!ふん、いけすかないが、まぁ良いわ、お前らに罪があるわけでもないからの」
「私はエルフ王女です、口を慎みなさい!ドワーフ風情が・・・」
え?な、何?二人ともどうした?
(ドワーフとエルフは仲が悪いんだよ、昔なんかあったみたい)
リルムが耳打ちしてくれた。
それは48年の間に何かあったのか、ゲーム中そんな設定あったかな?
やれやれ、エルフは結構種族に拘るね・・・
「二人とも、やめてくれ。そんなことじゃあ、魔王を倒すのに邪魔になる。ブラミスの鍛冶もディアナも必要なんだがな?」
「使命は果たしますわ、勿論ドワーフが作る武具は性能が高いのもので存じています」
「ブラミスも、エルフ相手でもきちんと頼むよ?」
「ふん、当然じゃ、相手が誰じゃろうと、鍛冶屋としては仕事するでの、職人を舐めるでないわ」
やれやれ。まぁ、すぐには打ち解けないのはわかるがな。
まぁ、お互いにきちんとやってくれれば問題はないが。
「後、素材を預けるんじゃないの?」
セニア、ナイス。
話題を変えてくれた。ドワーフとエルフが何故仲が悪いのかはまたの話にしたい。
「そうだった、これなんだが」
レッドオーガーからドロップした物を渡す。ついでにお役御免となったシルバースタッフを渡す。
「こっちはオーガーからじゃな、倒したんか、流石じゃな、ただ、大変じゃろ、まだお前さん達のレベルじゃ危険じゃな」
「成り行きだよ、無茶してオーガーの谷に行ったとかじゃないからな」
「まぁ、それなら良いが、お前さん達はなんかデカイ敵と戦うことが多いの、重戦士が必要じゃないかの」
「そうだね、ま、それは適任が居ればね。今回は魔法使い系の仲間が増えたからさ、前よりは戦いやすいんじゃないか。後衛が充実してきたなら、俺が盾使うのもありかなって思ってさ。実際にどうするかは別だがな」
「まぁ、エルフは魔法に長けておるからの」
なんだかんだ言って、ブラミスはエルフの魔法を認めているし、ディアナもドワーフの鍛冶技術認めている。
「どれ・・・ふむ、魔法使い用装備と軽い盾だったら、少し作ったものがあるでの、格安で譲ってやろう」
「お願いします」
「じゃが、アレン、お前さんが使う盾としては能力的に足りんな、今の竜の手甲の方が明らかに良いじゃろ、特にこれから火の大陸に行くんじゃし」
この世界では、アリアナ~オードリーまでの初めの大陸は緑の大陸と呼ばれており、豊かな自然がある大陸で、植物や動物の魔物が多く、火属性が弱点の敵が多い。
一方、これから行くカッシーム以降は火の大陸と呼ばれ、砂漠及び火山が中心となって出来ている大陸だ。
火属性を使う魔物も多いため、火耐性の装備は役に立つ。
だから今、竜の小手を外すのは得策ではない。
そりゃわかっている。
「なるほどな、確かに。まぁ、見るだけ見てみたいな」
「まぁ、好きにせい。それから、この素材からは何が欲しいんじゃ?」
「うーん、まだ決めてないんだ。必要性に追われるまで、預かっておいてくれないか」
「わかった、構わんよ、ちょっと待っとれ。あ、釜には触るなよ、見た目以上に熱いからな」
ブラミスは奥に入っていった。
しばし待機。
それにしても、THE工房って感じでかなり物が沢山ある。
「待たせたの、ほれ、盾じゃ。好きなのを持っていけ。ただし、盾は需要が少なくてのあまり無いんじゃ、ま、お前さんが必要になれば作っても良いがの。あと、分かっているだろうが、盾と小手は両立はせんからの、良く考えるんじゃな」
重たくなくて手頃なのはライトシールドか、バックラーか。
鋼鉄の盾などは重たいから、アレンが持つにはちょっとなぁ、という感じだ。
バックラーだと、後で鍛冶してもらうとかもありかな。
ただ、今の装備よりは守備力が落ちるしな。うーん。
慣れるならもっと後でも良いかな?雑魚相手のときに使うくらいで一つは持っておくか。
よし、バックラーにしよう。
「よし、じゃあ、今度はエルフの・・・」
「ディアナ・エルハンブルです、種族で呼ぶのはやめてくださいまし」
「・・・」
「・・・分かった、では、ディアナ、あっちに装備集めたから好きに見繕って装備してくるんじゃ」
「・・・わかりました、しばしお待ちを」
ディアナは王女なのに、侍女に着せてもらうとかなかったのかな、一人で奥に行った。
「ブラミス、今回はコーディネートしないのか?」
「ふん、ドワーフのワシとエルフ、しかもエルハンブル姓の者が一緒に行動したら色々まずいでの」
「ふーん、そんなもんかね?」
「まぁ、おいおい話をしてやるわい」
しばらくしたらディアナが装備を変え出てきた。
「すみません、弓はありますでしょうか」
「なんじゃ、杖があったろう?」
「はい、ですが、杖は魔法を使うためでして、打撃をするのはいささか杖が可哀想です」
「なんじゃ、お前さん、よく分かっているじゃないか、エルフにしては武器を気遣っておる、ふむ、悪くないの」
「はぁ・・・」
「弓はこっちじゃ」
にかっと笑ったブラミスは機嫌が良くなったみたいだ。
鍛冶屋だからか、武器を大切にしない奴は嫌いなんだろうか。
結局、ディアナの装備はフルスペックで変わってしまった。
一部他のメンバーと被るものもあるが、それはまぁ、いっか。
ディアナ・エルハンブル 90歳(人間換算18歳)
ハイエルフ ♀
Lv20 セージ☆4
主属性 木
ソーサラーワンド☆3
(ブラックアロー☆4)
紅玉の髪飾り☆4
ワイズドレス☆4
オペラグローブ☆3
ブラックタイツ☆3
ルーンシューズ☆3
紅の首飾り☆3(火+1)
靴以外をみると、舞踏会にいきますわよ、とか言いそうではあるが、靴は流石に歩きにくいヒールにはしなかったみたいだ。
オペラグローブは、貴婦人が着けてそうな二の腕まである長いグローブだ。
首飾りは申し訳程度だ。あまりいいのはないが、火+が欲しかっただけのようだ。
全体的に黒と赤でまとめてありシックで大人っぽい。
肌が白い上、ハイエルフの美貌も手伝い、尚更引き立つ。
パーティーを見ると美女だらけだ。うん、困っちゃう。何が?
「よし、じゃあ、全部で23000フィルでどうだ?」
安っ。進んでからの町で買ったら2倍くらいはするはずだ。
心配していたら
「いやいや、お前さん達から鉱石やら武器やら貰うときに、ワシも金払ってないじゃろう?貴重な物以外は一般にも流通させるからの、イーブンじゃ」
「まぁ、使わないものや、手に入りやすい鉱石を勝手に使うのは一向に構わないが」
「ダマスカスや、紅銅や魔物からのドロップなんかは他の物には使わんから心配するでない。どうしても必要になったら必ず許可を取るわい」
「勿論、今後手にはいるだろう、ミスリル、白金、ブルーメタル、ルーンメタル、オリハルコンなども取ってきた人だけじゃ。それはどんなことがあっても、取ってきた人だけじゃ。国王だろうが無理に奪いとるのはまかり通らん。そんなことをすれば全てのドワーフを敵に回すでの」
「逆にお前さん達も自力で用意する必要があるがの」
「なるほど」
「ブラミスは作れないの?」
「セニア、ワシは錬金術師じゃない、それは他をあたれぃ」
「確かに」
この世界では、鉄鉱石や、銅、各種宝石の原石(純度が低いので精製しないと石クズと変わらないが)などが大量に手にはいる。
アレン達も大量にブラミスに渡した。
それらを言っているんだろう。
全くどうでもいい代物だ。
「また、素材になるものや、欲しい装備などがあれば、来い。なくてもたまには顔を見せい」
「ブラミス、ありがとう、じゃあ、行くな」
ブラミス工房を後にした。
後は、雑貨、道具屋で必要なものを買う。
まぁ、馬車のお陰で、ディアナ用のリュックサックとかは要らないが、服やら食材やら、携帯トイレやら、必要なものは結構ある。
とは言え、女王から貰った金でお釣りが出る。
ライルエル家には顔を出さないでいいらしい。
リルム曰く、「父が居ないなら、行っても意味ないし、居るなら長くなって、出発が結局明日になるから」
だそうだ。
確かに、ブラミスにしろラルバにしろ、じいさん達は話が長い。
じゃあ、改めてカッシームに行こうか。
カッシームには、ウィリアム南の岬から定期船が出ているはずだ。




