エルフの国で引き続き訓練してみた(後半)
「ふむ、こ、これは!?いやはや、とんでもないね、この子・・・」
マジャルは驚きを隠せずにいた。
魔方陣の術者であるマジャルは、内部の魔力の流れや乱れを見るとどれだけ深い瞑想かがわかる。
始め、マジャルは3人を邪魔をしようと話を色々したり、魔法で派手に光や音を出したりしてみた。
が、アレンはあっという間に瞑想に入った。集中力が半端ではない。
続いてリルムがしばらくしてから、最後にセニアが瞑想に移ったが、
リルムも早くはなかったが、
セニアは浅いみたいで深い瞑想になるにはかなりの時間を要した。
これが普通なのだ。
アレンの毛色が違っていた。
昔から勉強などを短期集中でこなしてきたアレンには造作もないことだったが、マジャルはそれを知る由はない。
そしてアレンが瞑想に入るとアレンの持っていたトネリコの杖から大輪の花が咲いていた。
マジャルはこの大輪の花に驚いていた。
ここまで見事な花を咲かせるのはエルフでも少ないはずで
これだけで、かなりの魔力量を持っているのがわかる。
密度はわからないので、また別の話だが。
環境を少し変えただけでこうなるはずはない。
元からアレンにはかなり高い魔力が内在していたと言うことになる。
アレンはそれを引き出す方法が分かっていなかっただけなのでは?
いや、それは昨日教えて出来なかったんだ。
マジャルはずっとアレンを眺めていたが、魔法を使えない原因がわからなかった。
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アレン達が瞑想に入ってからどれくらいの時間経っただろうか。
マジャルによって魔方陣が解かれ、アレン達も瞑想から戻ってきた。
魔方陣が解かれると同時にトネリコの花は萎み、元の姿に戻った。
「どうじゃ?気分は?」
「なんかすっきりしました」
「あたし、眠くなっちゃったよ、アレンは?」
「うーん、魔法を使うイメージがなかなかね」
「まぁ、最初はそんなもんじゃって。セニアちゃんのように眠くなるのも仕方のないことじゃ。ところで、アレンちゃん」
「はい?」
「瞑想に落ちるまでの時間もかなり短くびっくりしたんだが、それよりも、アレンちゃん、とてつもない魔力量を秘めているね」
ゲームでは魔力と賢さはかなり密接な関係がある。
賢さには自信があるが・・・
「え?」
「実は、アレンちゃんが瞑想に入ってから、トネリコが咲いたんじゃよ。しかも今まで見たことないくらい立派じゃった」
「でも今はこんな感じですよ」
杖を出して確認するとただの杖に変化はない
「恐らく、察するに、アレンちゃんは、常に魔力が大量に消費されている可能性があると見た。だだ漏れなんじゃよ、きっと」
「この魔方陣には魔力を体内に封印する働きがあるんじゃ、だから瞑想中との違いは、と考えるとの」
「あ、そうか、なるほど!」
「アレン、どうかした?」
「さっき、魔方陣に入ったらマジャルさんの言ってることが分からなくなったんだ」
「うん、確かにそうだった」
「なんじゃ、お主ら二人はかなり早く瞑想に入ったのはそういうわけかい、ん?セニアちゃんはどうだったんだい?」
「私も一緒ですよ、でもなかなかわからない言葉でも無視するには心苦しいし」
「セニアちゃんは優しいな、しかし、なかなかに意味がわからんわい、そもそもアレンちゃん達はどうやってエルフ語を理解しとるんじゃ?」
アールブの存在は女王から伝えられていたらしいが、詳しい説明をしておく。
「エルガルドに着いてからずっとフラウに同時通訳、しかも俺、セニアとリルムと全エルフ対象だから大量に魔力使ってる?」
「あっ、そうかも」
「ふむ、要するに、ワシらと話すにはアレンちゃんが魔力を使って話をしとるんじゃな?」
「そうです、ただ、具体的にどれくらい消費しているのかはわかりませんが」
「ふむ、それでどうするんじゃ?」
「正直、フラウの同時通訳がないとここでは困るのでしばらく、少なくともここではこのままですかね」
「分かったわい、まぁ、ワシでも何か考えよう、要は魔力を供給出来る何かがあれば良いんじゃろ、方法はあるわい、準備する時間はいるがな」
「わかりました、でもこの魔法の訓練は続けてもらえませんか、いざ使えることになったときにヘロヘロですじゃあ話にならないので」
「アレンは真面目ねぇ」
リルムには言われたくないが。
「構わんよ」
「でもさ、魔力を浪費していて魔法が使えないなら、なんでラーニングした技は使えるの?」
「それな、俺にもさっぱりわからないな」
確かに。セニアはたまに鋭いことをいう。
まぁ、それは後々分かるかもしれないし、分からなくても良い。
大して意味がないことだ。
重要なのは、戦力として使えることが分かっていれば良い。
「とりあえず、動の鍛錬をしようか、セニアちゃん、リルムちゃん昨日のように魔力を込めてみぃ」
「はい」
すぐに二人は胸の前で魔力を込めだした。
心なしかリルムは昨日より色が濃い気がする。
「自分の魔力が続く限り込めて、最後に壁に向かって主属性の魔法を放つんじゃ、初級で良いからな」
「ま、最初から出来るかは二人の魔法センス次第じゃがな」
しばらくすると、リルムの手の中にある魔力はかなり濃くなったようだ。
そのままスプラッシュを放つ。大量の水流が壁に向かって大噴射した。
「おお!すげぇ、メガスプラッシュくらいにあるんじゃ?」
「格段に威力が違うよね・・・あっ・・・」
リルムはふらついてしまった。アレンが手を差し伸べ支えてやる。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう、アレン。少しふらついただけよ」
「そりゃそうじゃ、動の鍛錬は魔力を酷使するから精神力を使うんじゃ、まぁ、ゆっくり休むがええ、直に戻るわい」
「威力はどうです?」
「今はリルムちゃんは魔力が加速状態にあるんじゃ、だからあれだけになるが、通常に使う魔法の威力はそんなに簡単にはあがらんよ、まだまだ水鉄砲のままじゃて」
「み、水鉄砲・・・はぁ、攻撃魔法が得意ではないのは自覚してるけど、ちょっとショックだわ」
「まぁ、落ち込みなさんな、魔力は流れを整理する、使う、休ませるを繰り返すんじゃ、荒療治だが確実に魔力量も魔力密度もあがる」
筋肉の超回復みたいだな。
マッチョなリルムを想像してしまった、うえぇ。
「それに、一回目できちんと攻撃魔法になるのはそれなりに魔力センスがあるぞい。まだ全魔力を込めるには覚悟が足りんようじゃな
「そうですか」
「なまじ魔法を使えるから限界が分かるんじゃ、だからリミッターがかかるんじゃよ、これを取り壊すには結構修行が必要じゃな」
「はい、頑張ります」
続いてセニア。集中して魔力を塊にする。そして詠唱に入る。
『地の力よ、無数の石榑となりて闇を穿て・・・ストーンスプレッド!』
しかし、石ころが一つ転がり、さらさらと砂になっただけだった。明らかに失敗だわな。
「・・・あれ?」
「ま、とりあえず石ころは出たわけじゃし、大丈夫じゃ、これが普通じゃて」
「そうだよ、セニア、全く使えない状態から魔法で石出せたんだから凄いよ!」
「・・・」
「あれ?セニア?」
セニアは立ったまま気絶していた。
「ちょっ!セニア!」
「まぁ、慌てなさんな、とりあえず寝かせるか」
「セニアは大丈夫なんですか!?」
「問題ないわい、動の鍛錬を全力でやると、こうなることもあるんじゃ、精神力が全部持っていかれるからの、しばらく寝れば戻るわい。とはいえここまで全力になれるのも才能じゃ」
「そうですか」
「魔力量や密度や魔法を形なすことは全くまだまだじゃが、リミッターを外すことに関してはセニアちゃんの方が早いかもしれんな」
「アレンちゃん、二人とも良い素質があるよ、良い仲間に恵まれたのぉ」
「はぁ」
「さて、次はお前さんじゃな」
アレンの番になった。
一人ではできないのでマジャルに手伝ってもらう。
マジで情けないな。
マジャルは説明をした後、フラウとの魔力を一時的に切るよう指示をした。
どうせ出来ないのだから、魔力をより詰められる最上級魔法をとのことだった。
その方が全魔力を詰め込む訓練になるとか言って
詠唱も教えてくれたが、いやいや大丈夫かよ?
気絶するんだろ!
マジャルの指示通り、左手を前にかざし、魔法を詠唱する。
右手にはマジャルの持っていた杖を持ち、杖の反対側にはマジャルもいて、杖の下側を持っており、なんかぶつぶつ呟いていた。
アレンにはマジャルの話すエルフ語はわからないので、気にせず詠唱に入る。
目を閉じて集中だ。
「行きます・・・」
『・・・大いなる風神、アイオロスよ、荒ぶる大気に依りて、その力を示せ・・・さすれば聖なる刃となりて全てを切り刻め』
その瞬間・・・
大量の魔力がアレンの手のひらに集中し、アレンを中心に暴風が吹き荒れた!
ミシミシと小屋も軋みだしている
『!!???!???!』
マジャルが何か言っているようだが、フラウとの魔力を切っているアレンには何のことかわからない。
いや、集中していて聞こえなかったのかもしれないが。
そして、アレンは気を失い、大量に集められた風も一気に解放され、
修行部屋の天井を吹き飛ばした。
アイオロスブレードとしては形を成さなかったし、
直接ダメージを与えるようなものではなかったが、
凄まじい魔力の奔流を見せることになった。
リルム、マジャルは呆然としていたが、皆無事だった。
が、その後ちょっとした騒ぎになった。
『???!!???』
マジャルがギルを呼び、アレン、セニアを順番に担ぎ上げ寝泊まりしている部屋まで運んでくれた。




