魔法訓練と文字を習ってみた。
「さて、では、まずは魔力を形付ける練習からしようかね」
「お願いします」
「ちなみに、この部屋は、結界が張っておる。中でどんな魔法を使っても外に出ることや、破壊することは出来ないから安心して使うと良いぞ」
「わかりました」
「さて、まずは、アレンちゃん、両手を胸の前に出して、卵でも持ってるかの格好で意識を集中してごらん」
「えっと?・・・」
「ふむ、こうじゃ」
マジャルは言った通りの動作をし、意識を集中させた。
するとマジャルの両手にモヤモヤした黒い霧みたいなものが集まり玉のような形をなした。
アレンにもそれが魔力の塊だということがわかった。
しばらくしたらマジャルは普通の姿勢に戻り、魔力玉も消えた。
「とりあえず、やってみぃ、これは魔法の基礎じゃ。基礎すぎて、魔法が使えるものでもやったことがないやつがいるくらいじゃ」
「リルム、やったことある?私はないわ、ま、魔法使えないし」
「ないわね、魔法はいつの間にか使えていたし、試しにやってみようかな」
そう言うと、先ほどのマジャルと同じ動作をアレンだけではなく、セニアとリルムも試してみる。
すると、リルムには、すぐに両手の間に集中線で表されるような光が、プリズムのように集まった。そして彼女の両手の間には耀く玉のようなものが出来た。
あれ?マジャルの色合いとか感じがちょっと違うな。
まぁ、そう言う個人差なのか。
「ふむ、リルムちゃんは普段から魔法を使っているから楽勝なんだね、まだ魔力密度は濃いとは言えないがね」
「そうですね、攻撃魔法は苦手ですし」
「魔力密度をあげれば、詠唱は早くなるし、攻撃魔法も威力が上がるぞい」
確かにさっきのマジャルのよりなんとなく空気っぽい感じで、薄いのがわかる。
だが、魔力の塊は形成出来ている。
続いてセニアも出来たみたいだ。形はマジャルに近い黒いモヤのような物だったが、薄い上に小さい。
「セニアちゃんは、魔力自体が足りてないようじゃな、密度も足りんようじゃな、これでは魔法を形成するのは無理じゃな」
「やっぱり。苦手だし、使えたことないし」
「いや、そう悲観するでない、魔力量を増やせば出来るようにはなるはずじゃ。威力はまた別の話じゃがな」
「ただ、普通のレベルアップで魔力量を増やすのは私達ウェアタイガーはあんまり増えないんです」
「まぁ、確かにそういう訓練は必要じゃな」
そして問題のアレン。
しばらくしても変化はない。
頑張ってみても難しい。
いやぁな沈黙だ。
あまりこういう挫折をしたことがないアレンはちょいと辛い。
「・・・。」
「・・・。」
「うーん、アレン出来ないね」
「おかしいのぉ、魔力持っとるんだろう?」
「属性付加攻撃とかは出来るのですが」
「やり方が悪いんじゃないかな」
「やり方がわからないからなぁ・・・やはり無理みたいだな」
そりゃ、魔法がない世界から来てるんだからさ、無理だよ。
「二人ともどんな感じでやった?」
「うーん、力を入れるわけじゃなくて、意識を集中させてる感じ?」
「ギューとしてバーってな感じでうにぁーって力を溜めるんだよ」
「セニア、力ではないと思うわ」
「・・・わけわからん」
二人して違うことを言うし。
リルムはきちんと考えて、
セニアはやはり感覚で生きているらしい。
うにぁーってなんやねん、可愛いけどさ。
そんなセニアにも出来るのに何故アレンには出来ないのか。
「アレンちゃんや、焦っても仕方ないわい、そうじゃな、これを持ってみぃ」
「これは?」
「トネリコの樹から切り出した杖じゃよ。武器としての価値はないが、まぁ、魔法使いの練習用の杖じゃな」
そんなアイテムはなかったはずだが。まぁ、気にしても仕方ないか。
「これを持っておくと、トネリコが魔力を少しずつ引き出してくれるんじゃ。魔法が使えるようになったら、杖に花が咲くんじゃ。エルフも幼児の時に使うんじゃ」
幼児・・・マジで?
「とりあえず、今日からはそれをずっと持っておりんさい。練習はまた明日にしよう」
「わかりました」
「明日またおいで」
マジャルの家を後にした。
するとすぐにギルが駆け寄ってきた。監視カメラでもあるのか。
ギルに顛末を話し、次は図書館のようなところに連れていってもらう。
「リルム、悪いけど、読み書き教えてくれないかな」
「いいわよ、ヤパナ語よね?」
「うん、そう、基本だけでいいからさ」
「では、紙とペンを用意します」
読み書きが出来ないのをギルは何も言わず、文具を貸してくれた。
こっちの世界でどういう価値があるものなのかは分からなかったが、パピルス紙みたいだ。
個人的に興味があるな。
字に関しては、この世界なのか、エルガルドなのかわからないが、識字率がそんなに高くないのかも。
「アレン、私は図書館は眠くなるんだ・・・」
「それでしたら、セニア殿は私と模擬戦闘しますか」
「アレン?いい?」
「ギルさん、いいんですか?」
「はい、構いません、ですが、先ほど言ったように私はそれなりに強いですが・・・」
「大丈夫です!」
「そうですか、ではセニアさんは広場に行きましょうか」
まぁ、勉強は無理にしても仕方ないし、今からは完全にアレンのワガママだしな、仕方ないか。
セニアとギルが出ていってからリルムに教えを乞う。
「何から教えればいいかな?」
「まずは文字だね」
リルムが教えてくれたことに依ると、ヤパナ語の文字は30種類。アルファベットに近いのかな。
日本語はひらがな、カタカナがあり、漢字もある。
また、撥音や濁音、半濁音や、れ抜きなど様々な用法違いがあったり、同音異義語や慣用句まで考えると、習うには複雑怪奇な言語である。
それに比べ、英語などは文字種類が一種だけであり、単語と文法を覚えれば読み書きが出来る。
ヤパナ語は英語とかの部類に近い。
「わかった。文字については練習しておくよ。文法や簡単な単語やらを教えてもらえるかな?」
「じゃあ、まずは、名前や、数字、簡単な名詞、動詞、文章かな?」
「うん」
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しばらく後。時間としては2時間くらいか。
理解したのは、ヤパナ語は文法的には日本語やドイツ語の並びに似ており、述語が最後に来る。
主語、述語の順番の英語ではない。
ピリオドで終わるのは英語に近いが。
だからか、かなり馴染みやすかった。
「ざっとこんな感じだけど、どう?早すぎたかな?」
「いや、大丈夫だよ」
アレンはペンと紙を使い、ヤパナ文字で、
『リルム、ありがとう、大体わかった。アレンより』
と書いてみた。
「どう?通じるかな、文字は書くのまだ不慣れだけど、文章はあってないかな?」
「え?アレン、すごっ!この短時間で、文章書けてる。文字の形も完璧よ!」
「リルムの教え方が上手いんだろう、ありがとう」
それも勿論ある。リルムはパーティーのお母さんであり、先生としてもやっていけそうだ。
但し先生としては美人すぎて男子生徒は集中出来るとは思えないが。
「いや、それにしても、ねぇ・・・まぁいいか、どういたしまして」
「後は語彙だね、辞書とかあれば片っ端から覚えるんだけどね」
「いやいや、本気で言ってるの、アレン?そんな辞書丸暗記なんて出来っこないじゃない」
「ま、そうだね、ま、本とかあればって話だよ」
「分かったわ、家に帰れば適当な本あるから、次に帰ったら貸すわ」
「まぁ、帝都ウィリアムに戻るときがいつかわからないけどな」
とは言ったのだか、アレンとしては本気で辞書丸暗記するつもりだった。
昔から言語を学ぶのは得意だし、必要な言語なら素早く覚える。
これが、元の世界でアレンが天才と言われた所以でもある。
「ところで、セニアはどうなったかな」
「見に行ってみようかしら」
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外に出て、広場にいくと、セニアが膝を付き、肩で息をしていた。
所々重症ではないが、怪我もしているようだ。
彼女は動き回ったのか、地面にも
かなりダッシュ痕があった。
一方、対するギルは、全くの無傷で、しかも恐らく動いていない?
勝敗は火を見るより明らかだ。
マジか、セニアは単体でもかなり強いイメージがある。
一方的にここまで負ける想像はしてなかった。
「セニア、大丈夫か?」
「あ、アレンにリルム、終わった?」
「まぁね、んで、セニア何があったんだ?」
リルムがヒールを詠唱しだし、回復させたようだ。
「リルム、ありがとう。いやぁ、完敗、悔しいな、もう少しなんとかなると思ったんだけどな」
「セニアさん、すみません、少し本気になってしまいました。大丈夫ですか?」
「大丈夫です、これくらいは日常ですから、また明日もお願いできます?」
「構いませんが」
「リルムもごめん、また回復してもらうことになるかも」
「それはいいけどさ、あまり無茶はしないようにね」
改めて、ギルを見てみる。
ギル・エルウェン 80歳(人間換算40歳) エルフ ♂
Lv38 チーフガード ☆7
主属性 木
まぁ、まずは敵ではなかったのは良かった。
でもわからないな。
レベルはそんなにもセニアよりずば抜けて上じゃないし、属性もセニアの弱点というわけではない。
装備までは見えないが、槍を常備しているみたいだから、魔法主体ってわけでもないだろう。
これでなんでセニアが完敗するのかわけがわからない。
ジョブランクがかなり上だが決定的とも言えないな。
後は単純に、年齢的に、戦闘経験の長さの差か。
「今日はお部屋に戻りましょうか、後で食事を持ってこさせます」
「ありがとうございます」
まぁ、夜ゆっくり、セニアから何があったかを聞いてみて、明日はギルとの戦いを見てみようかな。




