鉱山に潜ってみた
馬車はサキに任せて、シードン鉱山前の広場に降りていく。
サキは馬車で待つらしい。というか御者がいないと馬車は只の箱であり、離れない方が良いのだそうだ。その方が馬車も御者も荷物にも魔法がかかり、安全だとか。
だから御者は食事、トイレも馬車で済ませるようだ。
確かに馬車には持ち運び用の使い捨てトイレが常備されている。
トイレはさすがに女性には可哀想だと思っていたら、キャットウーマンであるサキはあまり気にしていない感じだった。
人間の女性だったらセクハラで訴えられるだろう。
広場に行くと結構な人数がいて、色々準備をしているようだった。
サキがかなり飛ばしてくれたし、早く着いたつもりだったが、ピエール陣営はかなり前からいるようだった。
今日が初日というわけではないのかもしれない。
多くの人が、寝床や食事を忙しそうに準備している
中央に豪華な椅子を置き、ピエールがどっかり座っているのが見えた。
あぁ、やっぱりそういう感じなんだな。早速うぜぇ。
偉そうだし、そもそも動かないと。自分の味方なら、セニアではないが、間違いなく殴りたくなるな。
リルムに気づいたピエールがうやうやしくお辞儀をしてきた。
面倒くさい、話はリルムに任せておこう。
どうせ、ピエールはアレンの話など聞きはしないだろう
「これはこれはリルム殿、なかなかお早いご到着ですね」
「いえ、お待たせしました」
「まぁ、いいでしょう、ここでは私が指揮を執りますので」
「ピエール様は鉱山には入られないのですか?」
「ん?なぜ私がそんな危ないことをする必要があるんです?そういうのは身分の低いものがすればいいんですよ」
「え?ご自身で調査はしないんですか」
「下僕たちがしますよ、リルム殿もここで私と待機しましょう、そのために家来を連れてきたのでしょう?」
「はい?アレン達は家来ではなく、仲間ですが?それから私は調査に中に入ります」
「理解できませんな、我々、高貴な家の者に万が一あったら国も含め大変なことになります、それがわからない貴女ではありますまい」
「それは家来達も同じです、1つの命を失うのは誰であろうが、一大事です」
「話になりませんな、下賤な者共などいくらでも代えがききます、足りなくなったら奴隷を買ってくればいい、私達とは違います。それが貴族の常識です」
「私は物事は自分でみて自分で考えて、解決します、ライルエル家はそういう教えですから」
「・・・まぁいいでしょう、ですが、くれぐれも怪我や、ましてはお亡くなりになることはありませんように、お父上に合わす顔がなくなりますし、私の責任問題になりますから」
「父は自分で動かない方が叱りますね、間違いなく」
平行線なので、リルムが先だって離れ、鉱山入口まで移動する。
改めて、うぜぇ。
貴族だからなんじゃい!
家来のことも下僕と言われるだけで凄くムカつく。
同じ貴族でもリルムとこうも違うとはな。
「リルム、君がピエール様を嫌いな理由がわかったよ」
「でしょう、いつもあんな感じよ、言ってることはわからないでもないけど、考え方が違うわ」
「リルム、殴っ・・・」
「殴っちゃだめだからね、セニア」
「自分は、絶対前線に立たない、その上で人の成果で手柄は立てるから腹が立つのよ」
「戦闘としては強いのか?軍属なんだよな」
リルムは何も言わず首を横に降り、溜め息を1つ。
あぁ、なるほどね。
「まぁ、ピエール様のことを考えるのは、やめて、シードン鉱山に入りましょう」
「リルム、有害なガスとかは平気なのか?」
「そういう情報はないわ、ただ、魔物は増えているようね、それでピエール様達も時間かかっているんだよ」
「よっし!イライラしたから魔物退治も含めて頑張っていこう」
セニアは切り替えが早い。
こういうところは頼りになるな。
リルムに常備アイテムを渡す。主には魔力水だ。
アレン達のように腰に皮袋をつけているわけではなく、胸元にしまっていた。
それ、どこにしまっているの?見せて?とは言えなかったが、気になる。
ああ、リルムの胸で温められた魔力水か、効果上がりそうだ、そんなことはないけど。
「アレン、どうする?魔物を倒していくならそう案内するけど」
「え?案内?セニア、あまりここ知らないって言っていたけど」
「あぁ、私は匂いである程度、魔物のいる場所がわかるんだ、道はわからないけど、戦闘はさけたり、増やしたりは出来るよ」
「凄いね」
「うーん、セニア、先に進むことを優先しよう、戦闘は道すがら発生したらで大丈夫だ、特別に戦いたい敵ならまた後で来ればいい」
「探索か、時間かかるね」
ダンジョンウォークをオンにしておく。過度に戦闘する必要はない。万が一ボスが居たりしたときのため、温存も大事だ。
シードン鉱山はゲームでもダンジョンとしてはあるので、
なんとなくの道筋はわかる。
だが、落盤によって地形がどうなっているかが気になる。
通れないところがあるだけで基本変わっていないというのが有り難いが。
シードン鉱山に入ると苔むした雰囲気がひどい。
やはり探索があまり進んでいないのだろうか。
壁にはランタンがあり火も灯してはあるが視界も良好とは言いがたい。
リルムは見えるのだろうか、鳥目で暗闇弱いとかあるかのかな。
とか考えながら、しばらく進むと敵がお出ましだ。
コールマンLv24×2
ガスクラウドLv25×2
ゴーレムの仲間であるコールマンと、雲みたいなガスクラウド。
どちらも物質系モンスターだ。
こういう魔物は魔王の魔力で動いているはずだが、
リルム曰く、最近増えたとかではないらしい。
コールマンは固いし、ガスクラウドはなかなかダメージが通らない。
普通なら意外と苦戦するはず。
「二人はコールマンを頼む、リルム、期待してるよ、俺は雲にいく」
「うん、いこう、リルム!」
「清らかなる水流・・・」
戦闘開始直後から詠唱に入っていたリルムに一声かけ、
バトルメイスを装備したセニアが敵に突っ込んでいった。
爪よりは殴り倒すのを選んだらしい。
セニアがコールマンに一撃!その攻撃はリルムのシャープネスが乗っている。
チームワークもいい感じだ。
やはりリルムは空気を読みながら戦うのがかなり出来るみたいだし、ちゃんと見えるみたいだ。
ただ、コールマンも硬さは流石だ、
石榑になるまでにセニアの打撃も数発を要していた。
アレンもガスクラウドに向かう。
通常なら実体のない魔物には魔法などで対応するわけだが、
アレンには狙い打ちがある。しかも烈風撃と絡めながら戦えば、
ガスモンスターなど、容易い相手だ。まさに雲散霧消。
二匹居ようがあっという間に終わった。
残ったコールマンをセニアとアレンで一緒に叩く。
烈風撃でかなり楽に倒せた。
つるはし×2
428フィル
つるはしは武器ではなく、アイテムだ。炭鉱の壁からアイテムを掘り出せるが、今は良いだろう。掘るならもっと奥だな。
「やはり強いです、二人とも」
「リルムもいい判断力だよ」
「ありがとう」
「敵は土属性が多いはずだ、俺は風属性だから、戦いやすいはずだ」
「あれ?アレン、風属性なの?」
「そうらしい、烈風撃を使ったらそうなった。火炎撃では火属性にはならなかったんだが」
話ながら、注意を払いながら歩く。
分かれ道が結構あるが、道筋は単純である。
荷物運び用に整備されたトロッコの線路を辿るのもありだ。
敵との戦闘もきちんとこなす。
ドレイクLv25×2
赤いデカイとかげ男だ。
剣や鎧を来ており、戦闘力はそれなりにある。ドロップも色々な装備を落とすが少し強い。
とりあえずはアレンとセニアで一体ずつ片付ける。
リルムは両方のサポートをするため、自然と逆三角の陣形になる。
「大いなる地の精霊よ、我に力を貸したまえ・・・プロテクション!」
リルムがセニアにプロテクションをかける。セニアは爪を手に切り裂きにいく。
プロテクションは土属性だよな、リルムはアップ系は属性問わないみたいだ。
アレンはセニアと別のドレイクに、烈風撃で対応。
打撃の間に、少し隙があったらしい。一撃を食らってしまった。腕が痺れるが、折れてはいない。
メイン攻撃を双連斬に変え、切り進んでいく。
その状況を見て、リルムがシャープネスを唱えてくれる。
シャープネスを乗せた斬撃で、あっという間に戦いを終えることが出来た。
セニアの方はまだ戦っていたが、3対1になったら楽勝だった。
ドレイクの鱗
バゼラート☆3
422フィル
「大丈夫?アレン、回復するわ」
「ありがとう」
ヒールを唱えてくれた。涼しげな雰囲気と同時に痛みが引いていった。
「ドレイクは少し強かったね」
「打撃だけだとな、セニアはダメージは?」
「ううん、当たらないわ、あの程度」
「・・・なんかすいません」
「あ、アレン、そういう意味じゃないわ、ごめんね」
「冗談だよ」
「ねぇ、もう少し補助した方が良いんじゃないかな」
「うーん、まだ先は長いからね、温存でいいよ」
「そう、無理はしないでね」
「バゼラートか、シャープエッジより強いから、こっちにしよう」
地味に装備が強化された。
もう1つのドロップは素材だ。うん、いい感じだな。
そんな感じで進んでいく。コールマン、ガスクラウド、ドレイクの他にブラックバットという蝙蝠、ウールミンクという毛むくじゃらな獣が出現したが、倒しながら進んでいく。
ドレイクには睡眠魔法が効くのを思い出したので、まずはリルムがウェルスリープを唱えると笑えるほど楽に勝てるようになった。
程なく、進んでいくと、うめき声か聞こえてきた
「お、おばけ!?」
「落ち着いて、人よ!」
『うう、う・・・』
「落盤で怪我したのかも?」
「大変!」
「助けよう」
「おじいさん、大丈夫?」
「あ、あんたらは?」
「喋らないで。今、回復するわ」
リルムがヒールを2回唱えると、おじいさんは落ち着いたようだ。
「すまんな、助かったわい」
「じいさん、なんでこんなところに?」
「かっ!じじいだとバカにするでない!鍛冶屋が鉱石を堀りに来て何が悪いんじゃ!」
立ち上がった老人は、人間より小さく、髪や髭が豊かで筋骨隆々だった。
あ、明らかにドワーフだ。鍛冶屋のドワーフ、いるじゃん、該当人物が。
「じいさん、もしかしてブラミスさんかい?」
「・・・アレン、誰?知り合い?」
「ウィリアムにいる鍛冶屋のドワーフだよ」
「失礼な虎娘が!まぁ、良いわ、助けてくれたしの。いかにも、ワシがブラミスじゃ!ん?お前さんは、何故ワシを知っておる?」
「街の兵士達がブラミスさんが行方不明になったって話をしていたんだよ」
「そうか、じゃが、行方不明ではない、鉱石を取りに来ただけじゃ」
「ブラミスさん、落盤とは関係ないのですか?あ、私はリルムといいます、ライルエル家のものです」
「おお、ラルバの小わっぱの娘か、立派になったのう」
ライルエル家当主のおっさんを小わっぱって、マジでこのじいさん幾つだよ?
とりあえずアレンとセニアも軽く自己紹介をしておく。魔王のことは勿論伏せて。
「落盤はワシが起こしたわけじゃないがの、ワシが奥で採掘をしていたら、デカイ魔物に襲われての」
「え?大丈夫ですか」
「大丈夫じゃないわい!見ての通り怪我して倒れておったろう」
「魔物はどこに?」
「わからん、ワシを襲ったがしばらくしたら居なくなっておった、なんで助かったかわからんわい」
「なぁ、リルム?その魔物が落盤の原因かもな」
「かもなじゃないわい、あやつがズリズリと動くと地震のように揺れ、落盤したんじゃ」
やっと手がかりを見つけた。
よし、そいつを探そう。
ブラミスのじいさんはどうするかなぁ。
とりあえず、開けてる場所だしテント張って休むか。
飯を食いながら作戦会議にしよう。
食事はブラミスとも一緒の方が色々話が出来るだろう。




