リルムと合流はしてみた
帝都ウィリアムには空が暗がりになり始めたころに帰ってこれた。
依頼人に会い、報酬をもらう。
やはり序盤で竜の鱗は美味しい報酬だ。
鍛冶屋がいれば言うこと無しなんだがな。
報酬を貰ったら依頼を書いた紙はサラサラと消えてしまった、流石魔法の紙。
魔法ってすげぇ!物理法則ぶっちぎりだ。
ライルエル家に帰る、昨日よりは遅いがまぁ、許容範囲だろう。
「お帰りなさいませ、アレン様、セニア様」
「あ、バトスさん、どうも、昼食ありがとうございました、ご馳走様です」
「いえ、滅相もございません、リルムお嬢様がお待ちです」
「あ、はい、すぐ行きます」
手を洗ってからリビングに入ると既に食事が用意されており、
リルムが席に座って待っていた。
昨日の夜と同じように隣にはサキも座っている。
アレンはリルムの前に、その横にセニアが座った。
「お帰りなさい、二人とも。今日はどうだった?」
「ただいま、リルム。今日は依頼をこなしつつ、セニアの爪装備の戦い方を試していたよ、まぁ上々だ」
「そう、武器を変えたんだ。それは凄いわね」
「変えたと言うか両方使っていくんだよ」
「器用なことするわね、ウェアタイガーだからかしら?」
「まぁ、ウェアタイガーは戦いに関しては凄く器用だからねぇ」
「リルムの方は?なんかあったかい?報告書が上手くいかない?」
心なしかリルムは少し表情に憂いが見える。それにしても憂いを帯びた顔も美人である。
「あ、いえ。報告書はもう終わったわ、明日には情報も広がるし、ライルエルとしての仕事は終わったよ」
「それは良かった、じゃあ、明日から一緒に出かけられる?」
「そうしたいんだけど、父から連絡があってね・・・二人はシードン鉱山って知ってる?」
エイブラ高原の先にあり、ゲーム時代には石炭は勿論、
奥にいけばダマスカスや紅銅、ダイヤモンドと言った貴重な鉱石も採掘出来ていたはずだが、
今の時代ではどうなんだろうか。
「あまり詳しくないな、セニアは?」
「うーん、父さんがお城の工事に使う石をたまに取りに行く仕事があるって言ってたかなぁ、私はあまり知らないよ」
「昔はかなり石炭とか他の鉱石とか採掘されていたんだけど、今はあまり栄えていないのよ」
「鉱石の採りすぎで枯渇したのか?」
「ううん、鉱石自体は採れるのよ、でも他の大陸から大量に購入した方が安いのと、石炭の需要が下がっているのよ。後は鉱夫達があまり集まらないのもあるかな」
「なるほど」
「魔物も出るしね、戦いながら採掘するのは大変なんですって」
石炭の需要が下がるということは、燃料とかには石油やら、電気やらが発展したという話か。
それに、戦闘に関してはそうだろう。
狭い中での戦闘になるし、そもそも鉱夫達は戦闘するためのジョブではない、体力はあるとしても。
まぁ、炭鉱マンと殴り合いはしたくないが。
「そのシードン鉱山で大規模な落盤があって、調査しないといけないみたいで・・・」
「リルムが行くことになったと」
「うん、人為的に落盤を起こされた可能性があるみたいでね」
「安全は確保出来ているのかな?」
「正直わからないわ、ただ、落盤から2週間くらい経っていて今は落ち着いてるから調査しようと言う話になったようね」
「ライルエル家ってそういう仕事もするんだな、意外だな、落盤に王族や貴族が関わっているのか?」
「いえ、普通はこういう事件はゴルドー家が担当するわ。」
ゴルドー家か。ライルエル、アルベルトと並ぶ四大貴族の一角だ。
ゴルドー家はゲームでも関わりがあるが、いかにも貴族と言う感じで高慢チキなイケすかないおっさんだった。
リルムは大きなため息を一つ吐いてから話を進める。
「ゴルドー家から救援要請があって、跡取り、ピエール様と一緒に行くんだけど・・・」
「ん、その人が嫌なの?」
「ええ、私の事が好きみたいでしつこいし面倒くさいのよ、それに・・・」
「リルム様、他の貴族の悪口はその辺にしておきましょう、どこから漏れるかわかりません」
サキにたしなめられた。
サキ大人すぎるやん。出来る子や。
盗賊達を見捨てなかったリルムが文句をいうのか、
余程酷いやつなんだな。
「なぁ、それって行くのリルムだけか?」
「え?今のところは、私だけで、馬車をお願いしてるところだけど」
「じゃあ、俺達も行こう、いいだろ?」
「いや、有り難いけどいいの?お父様からアルベルト卿への紹介状も預かってるけど」
「それ、すぐじゃなくても大丈夫かな?」
「多分。中身を確認したら、いつとは書いていなかったわ、話を聞いてやってほしいくらい」
「じゃあ、決まり、何時出るの?」
「明日よ、でも本当にいいの?」
「仲間だからね、それに3人体制に早く慣れたいし、戦闘になったら手がいるだろう?」
「分かったわ、じゃあお願いします、明日は朝にまずゴルドー家に挨拶に行くわ」
「え?じゃあ、今日のうちに、リルムの装備整えようよ」
「いえ、大丈夫だよ、装備はあるし」
「そうか」
その後は食事をし、二人分の荷物を用意し、早めに就寝した。
次の朝、セニアとリビングに行くと何時ものように弁当が用意されていた。
今日は4人分。
あれ?4人?
何故だ、ピエールと言う野郎の分か?
考えていると装いを変えたリルムが降りてきた。
リルム・ライルエル 19歳
フェザーフォルク ♀ Lv22
クレリック☆3
主属性 水
チェーンウィップ☆2
ブルーリボン☆2
アンバーローブ☆3
レザーグラブ☆1
魔導師のタイツ☆2
アンバーブーツ☆2
スカイリング☆3
これがリルムの密偵じゃない時の戦闘スタイルか。
なるほど確かに装備の上から羽が生えているな。
普通に綺麗だ。美人は何を着てもよく似合う。
美人に鞭って!いい組み合わせやん。
スカイリングってなんだろう、知らないアイテムが出てきた。
後で教えて貰おうかな。
とは言え、装備だけで言えば帝都ウィリアムでもう少しランクアップは出来そうだが、まぁいいだろう。
しかも、リルム、初めて見たときよりレベルが1つ上がってる。
ちゃっかりバイアール戦の経験値は貰っているようだ。
「さ、行こうか」
「ゴルドー家に行ったらそのまま出かける?」
「うん、街の外に馬車を待たせているから、出かけようよ」
「リルムの装備以外の道具とかはどうするよ?」
「馬車にある程度は積んだよ、アレン達は?」
「まぁ、このカバンを馬車に積んで貰おうかな」
「はい、分かったわ、じゃあ、サキに渡しておいてね、サキ、お願い」
「はい、お預かりします」
重いよ?と言おうとしたらサキはひょいと軽々持ち上げて街の外にスタスタ歩いて行った。
「おぅ、凄いな、サキ」
「キャットウーマンは見た目より力持ちなのよ」
「サキって今日まで休みじゃなかった?」
「ええ、でもあなた達との時間のための休みだから。」
セニアと二人ではてな顔をしていると、リルムが続ける
「今日の御者はサキだからね」
「そうなんだ、それで昨日馬車の話して『ふーん』って反応したのか、んで、お弁当が4人分か、凄いな、サキ」
「サキは家の中でも一番馬車の扱いが上手いわ、サキに任せておけば、エイブラ高原も馬車で越えることが出来るわ」
「そうか、じゃあ、二人とも出かけようか」
サキ、マジで出来る子やん。
リルムは大通りを抜け、街の東側に建つ大きな屋敷に向かっていった。
扉の前に立つと、ため息を1つしてから、ドアリングを叩き名前を告げた。
「ライルエル様、ピエール様がお待ちです、こちらへどうぞ」
「はい」
メイドが案内をしてくれたので、アレン達もついていく。
屋敷はライルエル家よりもでかく、きらびやかで落ち着かない。
一際大きな扉を通されると、一人の若い男が椅子に座っていた。
ピエール・ド・ゴルドー 23歳 ヒューマン 男 Lv20 少佐
貴族らしい優男だ。
しかもかなりカッコいい。
少佐と言うことは軍人であり、尉佐将ランクで言えばそれなりに偉い身分だ。
家柄がよく、金持ち、イケメンと三拍子揃っている。
リルムが嫌う意味がいまいちわからない
「これはこれは。リルムお嬢様、わざわざすみませんねぇ、大分待ちましたが、まぁ良しとしましょう」
「それはすみませんでした。何せ昨日、正式に救援要請がありましたゆえ」
「父が勝手にしたことです、鉱山落盤の調査など私だけで十分だと言うのに」
「安全が確認出来ないなら慎重に進むべきです」
「まぁ、良いですがね、私の邪魔にならんようにだけしてください」
「気をつけます」
「それから、この者達は?」
「仲間のアレンとセニアです」
「アレンといいま・・」
「いや、リルム殿以外の入室は許可したつもりはないのだが?君、君には興味ないから自己紹介とかしないでくれる?」
「私の仲間です、問題はないですよね!」
「まぁ、リルム殿に免じて今日は良いでしょう。おや、お嬢さんは、ウェアタイガーかい?可愛ね」
「・・・セニアです」
「セニアか、いい名前だね、良かったら家で僕のメイドとして働かないかい?」
「結構です!」
「そうかい、残念だね。リルム殿、あまり下賤な者達との付き合いは名家の名前を汚しますぞ」
「アレン達は下賤ではありません」
「将来のゴルドー家の本妻が付き合う連中ではないですな」
「何度も言いますが私はゴルドー家に入るつもりはありませんが」
「・・・まぁ、いいです、我々は先にシードン鉱山に向かいます。鉱山の入口にて待機しますので、あまり遅くならぬよう、足手まといにならぬよう、お願いしますよ」
「では、後程」
ゲームの時の当主の息子みたいだ。
親がクズだと子どもも同類だわな。
前言撤回、リルムが嫌うのがよく分かる。
「はぁ」
リルムは大きな溜め息を付き、空元気で馬車にいこうと笑顔を見せた。
なるほど、あれは嫌だな、なんか疲れる人だな。
馬車に着いたらサキに進むよう指示したリルムは朝から疲れたようだ、そりゃそうなるわ。
そして、とりあえずセニアがキレだした。
「リルム、何、あいつ!殴っていい?」
「セニア、それはやめて、あれでも貴族だから、あなたが捕まるわ」
「もう!イライラする!アレンは腹立たないの?一番バカにされてるんだよ?」
「立つけど、まぁそういうもんだよ、今後関わりが少ないだろう人に腹立てても仕方ないさ」
「ごめんね、二人とも。この事件が片付くまで我慢して」
「リルムがそういうなら」
「ま、仕方ないわな」
「ところで、リルム、あの貴族と結婚するの?」
「セニア、止めてよ、しないわ、あんな奴となんか」
「政略結婚だからか、大変だな」
リルム曰く、貴族は普通はやはり家柄を気にして結婚するらしい。
アルベルト家のご息女は既に立派な家系の人と結婚しているらしく、
もう1つの四大貴族であるローシュ家は跡取りが男性らしく、ゴルドー家の嫁にはなれない。
残ったのがリルムと言うわけだ。
ちょっと待て、テッハ、娘がいたのか。
しかし、ライルエル家の現当主ラルバはリルムの好きにしろとのことらしい。
リルムとしてもヒューマンとでは子どもができないから結婚はできない。
しかし、ゴルドー家に対してあからさまに喧嘩を売るわけにはいかないようで困っているらしい。
「嫌な理由は他にもあるんだけどね」
「え?」
「すぐに分かるよ、すぐにね」
「まぁ、性格は最悪ではあるよな」
リルムのセリフ気になるなぁ。
「それよりも、建設的に作戦会議をしよう」
「そうね、でもリーダーはアレンだから指示してくれれば大丈夫よ」
「基本的には個人で考えて動くんだが、確かにリルムは後方支援がメインだから、指示をすることもあるかもしれないな」
「戦闘としては、今まで通り私はアレンと別の敵を狙うよ、何かあったら言ってね」
「何か?って?」
「俺は敵の特技を真似して自分の物にしやすいんだ、観察したい敵もいるわけね」
「なるほど、アレン、あなた、やはりなかなか普通じゃないわよ」
「まぁね、後、戦略としては基本的に俺とセニアは近距離戦だ。俺は素早さと手数でダメージをかせぎ、属性付与技をからめて威力をあげる。」
「うん、なるほど」
「それに対してセニアは回避率が高く、素早さは早いが手数ではなく、回避からの一撃が重いわけだ。ただ、棍装備と爪装備で戦い方は変わるかな」
「・・・要するに二人ともヘイストよりもシャープネスを掛けた方が良くて、セニアにはプロテクションもあると良いで合ってる?」
「リルム、流石だね、基本はそれでお願いしたい、まぁ雑魚のときは攻撃に回って、魔力消費を抑えよう」
「リルム、あったま良いわね!」
「ありがとう」
「後、リルムは、バイアール戦でやったやつ以外ではどういう攻撃や魔法が出来る?」
「魔法は回復と、状態異常回復、水属性の初級、中級攻撃魔法は使えるわ。ただ、攻撃力はあまり期待しないで、得意ではないの」
「色々使える方法はあるな、威力はおいておこう」
「敵のステータスダウンも一通りは。ただ、こっちも得意ではないわ」
「なるほど、クレリックらしいな」
「え?あたし、クレリックだって言ったっけ?」
しまった、変に墓穴を掘ったかもしれない。
いや、待て、自己紹介はされたぞ?確か。
とはいえ、常に確認できるアレンとら認識が違うのかな。
「あ、初めて会ったときに言ったかも、よく覚えているわね」
「アレンは女神の信託で人の事が少しわかるんだって、凄いよね」
「そうなんだ、ますます普通じゃないわね、まぁいいわ」
「だ、打撃は?どう?」
「鞭で複数を攻撃したり、迎撃はできるよ、後、飛べるから上空から鞭で攻撃したり、背後に回ったりも出来るわ。素早さは高くないからそんなに重宝はしないけど」
「リルム、色々と有能だね、戦略に幅が持てるよ」
「ありがとう、頑張るわね。回復は任せてもらっていい?」
「頼む」
空からの攻撃は便利だ。
セニアの尻尾にしろ、リルムの翼にしろ、亜人系はなんか反則くさいな。
そんなことを考えているとサキが前から声を掛けてきた。
「そろそろ、シードン鉱山ですよ」
あれ?戦闘にならずに進んでいたの?すげぇ!
と思っていたらセニアも同じ疑問を持ったらしい。
「リルム、なんで戦闘にならないの?」
「ああ、馬車は聖なる魔法で守られているから、魔物には会わないわ。それに荷物とかも盗まれるとかも無いわ」
「御者が、認めた人しか入れないの、だから旅には馬車と御者は必須・・・なのに旅してるアレン達には御者が居ない、何故?」
「いや、知らなかった、すまない」
何故?ってサキが問いかけてきたがこっちが、聞きたいよ、ねぇ、女神様?
そして何故謝らなきゃいけない。
まぁ、馬車については、サキとリルムが説明してくれたのでよくわかった。
御者、超重要じゃん!
馬車扱いだけじゃなく必要じゃん!
しかも、馬車があれば、リュックサック要らない上に荷物運びたい放題じゃん。
「ちなみに馬車でも外を連れ添って歩くと戦闘することも出来るよ」
「休みたいときや、急いでいるときは馬車に全員が入れば良くて、戦いたいなら外に出るということか」
「そういうことね、宝箱とかでもそとに居ないと取れないよ」
「それはそうだろう」
なんだかシステムはわからんが、魔法ってすげぇ!
「着きました」
感動していたらシードン鉱山に到着した。
さて、ピエールぼっちゃんに会いに行くかいな。やだけど。




