高原を駆け抜けてみる
エイブラ高原に着いた。
空気がおいしいうえに高台からみる景色はかなり良い。
帝都ウィリアム側と反対側に抜けると、シードン鉱山へと続いている。
ゲームの時代では炭鉱夫達の通り道としてかなり騒がしかったはずだが、今は穏やかなものだ。
魔物が出なければいいデートスポットになるだろう。
セニアとデートっぽい・・・夢のようだ。
まぁ、甘い雰囲気は全く無いわけだが。
「アレン、次はセージ探しだね、どんな草なんだろう?」
「セニアは植物には詳しくない?」
「うーん、薬になるのくらいは分かるんだけどね、セージはあまり役に立たないから・・・」
「そうか」
「私としてはソーセージの方が・・・」
「わかった、昼飯にしよう」
「うん」
昼飯にはバトスがソーセージを入れてくれたのを朝、サキとセニアが話をしていた。
初日の夕食でも食べたが確かにあれは旨かった。
丁度いいスパイシーさと肉感がたまらない。
まぁ、時間もちょうどいいはずだし、確かにお腹すいたな。
ソーセージではなく、セージに話を戻そう。
セージはそこらへんに生えているはずだ。
そして、セージは現実にもある草だ。確かにサルビアの仲間だ。
ラテン語のsalviaが訛ってセージになっている。和名はヤクヨウサルビアだ。
名前の通り薬として使われるが、効果はあまり期待できないはずだ。
セニアが興味ないのも納得できる。
基本的には春先から夏にかけて白や紫の花を咲かせる。
花が咲くにはちょうど良い時期だ、花を頼りに探すのが楽かもしれない。
百科事典を読み漁りこの辺は知識として入っている。
問題は現実世界のセージがこちらのセージとイコールかがわからないことだが、
まぁ、あれだけ食材とか野菜が知ったものが多いなら一緒なんだろう、きっと。
昼飯のお弁当、ホットドッグのようなカルツォーネサンドのようなものを食べながら
セニアにセージの分かりやすい特徴と、紫の花を探そうと説明しておく。
勿論せっかく来たのだから戦闘も経験しておく。
帰りの時間を鑑みてもまだまだ時間には余裕がある。
エイブラ高原の敵は、コボルト、
ハーピー、リザードと言った人型魔物が出てくる。
その他にもグレムリン、エビルプラント、ポイズンフライと言った魔物が出てくる。
コボルトは亜人のように人間と犬の間ではあるが、かなり犬寄りの魔物だ。
簡単に言えば二足歩行で剣をもった犬だ。
ハーピーも同じで、フェザーフォルクのように人間+翼ではない。
腕はなく翼があり、太ももから先は猛禽類の足と鈎ヅメがついている。
また上半身は人間の顔と胴体はあるように見えるが、胸に見える膨らみは気嚢である。
見た目は♀だが、性別は特にないらしい。
胸はでかいのに、全く揺れないというロマンの欠片もつまってないスカスカ仕様だ。
性格は狂暴かつ粗雑。フェザーフォルクとは似ても似つかない。
リザードも二足歩行で歩くトカゲだ。しかもデブい。
一応はドラゴンの仲間らしいが。
ドラゴンのように飛翔するのは無理だろう、体形的に。
さらにはブレスも吐けない体たらく。マジでトカゲでしかない。
勿論人に近い型をしているからと言っても敵は敵。容赦はできない。
敵のレベルは22~25くらい、まだ余裕なレベルか。
注意が必要なのはグレムリンの全体攻撃である火炎の息と
ドラゴンの仲間であるリザードの守備力が高いことくらいだ。
ただ、リザードはドロップで武器を落とすことがあり、それは美味しいから戦いはするべきだ。
また、他に戦っておくべきなのは、
ハーピーから風切り羽という素材を集めておきたい。
風切り羽がある程度あればかなり良い防具の材料になる。
ラーニングではコボルトが放つ狙い打ちが欲しい。
狙い打ちが出来れば打撃上のミスは無くなる上、たまに急所をついて一発で倒せるようになる。
直ぐに逃げるとか攻撃が当たりにくい敵に対して有効な手段となる。
そこらへんもセニアに話をしていたら早速敵の出現だ。
コボルトLv23×2
エビルプラントLv24
まずはエビルプラントを処理する。理由は気持ち悪いから。
姿形が生理的に受け付けない。
まぁ、燃やすよね。瞬殺。
セニアはコボルトに向き合い、一匹は直ぐに倒したが、もう一匹には付かず離れずを繰り返し時間稼ぎをしている。
あぁ、これはアレンがラーニングするのを待っているということだな。
ありがたく観察をさせてもらう。
しかし、狙い打ちをコボルトは放っているがイマイチ釈然としない。
なかなか原理がわからないのだ。
セニアのHPも少しずつ削られるはずだな。
何せ狙い打ちは必中だ。セニアでも避けられない。急所に当たるのは避けるのは可能だろうが、なかなかヒヤヒヤする。
5発目を見たときに、なんとなく狙い打ちの正体が分かってきた。
要するに突きだが、通常攻撃よりリーチが短く、タメがない。
だから狙った場所に入るわけだが、狙い打ちとしては常に急所を狙っているが、
敵も動くため位置がずれて急所には当たらないことが多く、他の部分に当たりダメージにはなる。
うん、セニアのおっぱい付近を狙ってるのが分かったからだけど。
それにしてもセニアのおっぱいは凶器だな、凝視してしまう。
鉄の胸当てごと上下に激しく揺れるのはズルいよ。
いや、見るのは狙い打ちの方だった。
6発目、やっとラーニング出来た感覚があった。
セニアにその胸、いや、その旨を伝えると、コボルトを仕留めてきた。うん、優秀だなぁ。
「ふぅ、なかなかかかったね」
「いや、なかなか、わかりにくくてね。ありがとう」
「事前に戦闘前にラーニングする敵を私が聞いておけばアレンは観察に集中出来ていいかも」
「それは確かに。ただ、セニアには負担になるのでは?」
「まぁね、でも大丈夫よ、ダメなら言うからさ、しばらくはラーニングはこういう風にしようか」
「分かった、セニアは優秀だな」
「うふふ、まぁさっきのは避けられない技だったけど、普通は避けるからさ」
すみません、セニアさん、ちょっとおっぱいの揺れを見てました、とは言えないわな。
何はともあれ、ラーニングはかなり順調と言える。
ゲームの時より遥かに楽だ。
事前準備と理解してくれる仲間がいればこそだな。
セージ集めはというと、結構簡単に見つかった。
群生はしてないが、直ぐに集められるだろう。
しかもアレンが知っているセージそのものだった。
凝視をするとアイテム名が出るのはやはり確認にはとても便利である。
セージを摘んでいたら急にでかい影で覆われた。
「アレン、上!」
セニアの声によっていち早く気付き、避けることが出来たが、危なかった。
上から強襲をかけられたのだ。
鈎ヅメでサクッといかれるところだった。
ハーピーLv24×3
「不意討ちなんて卑怯よ!」
そう言いながら既にセニアは高くジャンプし、
バトルメイスをハーピーの頭上段から叩きつけていた。
ハーピーがかなり下に降りてきていたとは言え、すごいバネとジャンプ力だ。
爪装備だと地上に足がついていないと腕の力だけで振るうことになる。
それは効率が悪いと思ったのか、肩掛けに背負っていたバトルメイスを出して叩きつけたらしい。
元々棍装備には肩掛けにするための紐が着いているのが普通だが、
よく使いこなしている。
それに武器の持ち替えはこの戦闘ではいい判断だ。
それに爪もきちんと右腰に納めている。
装備のスイッチがここまでスムーズに出来ればいうことはない。
セニアの器用さの賜物か。
しかし、ハーピーも翼でガードをしつつ反撃を試みる。
上空から突撃が得意だが、そこはアレンがきちんと烈風撃を放ち邪魔をする。
バランスを崩したハーピーにセニアの強烈な一撃。まずは一匹。
「セニア、こっちだ!」
セニアの立っていた所に風の刃が数本出現した。
2匹目が風の魔法、フェザースラッシュを放ったからだ。
フェザースラッシュは初級風魔法に分類されるが、ハーピー属の固有魔法だ。当然ブリーズより威力が高い。
しかもセニアにとっては弱点属性だ。
風の魔法なら予兆をアレンが感じとれるため、発生直前に避けさせることが出来た。
魔法なのにミスを誘えるのは結構チートに近い。
魔法を放った2匹目は隙だらけなのでそのままV字に切りつける。
さらに左下から切り上げも追加する。2匹目はこれで終わりだ。
レベルアップで覚えていた双連斬を初めて放ったが使えるな。
3匹目はセニアが殴りかかっているが、風魔法が来ると面倒なので加勢してとっとと終わらせる。
コンビでの戦いも慣れる必要があるな。
風切り羽×3
318フィル
「あ~びっくりした」
「セニア、声かけてくれて助かった、ありがとう」
「ハーピーってもっと可愛らしいかと思ってた」
「意外と狂暴だろう」
「うん」
「それにしてもセニア、よくバトルメイスに持ち替え出来たね、えらいよ」
「えへへ、もっと誉めて~。まぁこういう戦い方も慣れておかないとさ」
「そうだね、うん」
ハーピーにまだ摘んでいないセージをめちゃくちゃにされたので再び探しだす。
歩けば魔物と遭遇する。
グレムリンLv22×2
リザードLv24
ヤバイ組み合わせだ、と危惧していたわけだが、
グレムリンもリザードも全く雑魚だった。
グレムリンの火炎の息は確かに熱くて痛いわけだが、
お陰で烈風撃を武器に溜めた上で放たず風の壁を作る特技、防風壁を覚えることが出来た。
それからは火炎の息程度では全く届かないわけだ。
ゲームでは現時点で火炎の息を防御する術はないため苦戦を強いられた記憶があり、苦手意識があっただけだった。
また、リザードの方もセニアの攻撃力に耐えきれるほど固くはなかった。
確かに一撃では倒せないけども、タイガークローを中心とした爪の連続攻撃には全く相手にならなかった。
クレイモア☆3
悪魔のツノ
165フィル
悪魔のツノは鍛冶屋に渡せば色んな武器に出来る素材だ。
それにリザードがクレイモアを落とした。
攻撃力的にはアレンのシャープエッジより高いが、重たい。
重戦士ではないアレンが使うと機動力が削がれあまり強くなれない。
クレイモアは重戦士の仲間が出来るまで、アイテムストアの肥やしにしておこう。
あれ、仲間か、何人まで出来るんだ?やっぱり気になるな。
ゲームでは4人だったからなぁ、
アレン、セニア、リルムで3人。
リルムはどちらかというと僧侶の役割だから、攻撃魔法の得意な魔法使いポジションが必要だ。
重戦士、捨てがたいが、うーん。
後でセニアとかリルムに聞いてみようかな。
その後も戦いを続け、風切り羽と悪魔のツノを集めた。
またセージもきちんと見つけきった。
時間的にはそろそろ戻らないといけないな。
というわけで帝都ウィリアムに戻ることにした。
帰りもそれなりに戦闘を繰り返すことになるわけだ。




