共闘をして勝ってみる
ちょっと中二病ぎみだな、今回。
急遽、仲間が一人増えたわけだが、
どういう戦い方が出来るのかもわらかない。指示はどうしようか。
「アレン殿、私の事は気にせず、さっきまでと同じく戦ってください。援助しますから」
「あ、あぁ、分かった」
バイアールにサーベルを向け、間合いを取っているアレンをしり目に
そう言うとリルムは詠唱に入った。
「幾重にも重なる水音は鎖となりて汝の魔力を縛る・・・サイレンス!」
サイレンス。魔法を封じる魔法だ。対象になったのはサルエル。
魔法使いのサルエルは魔法がなければ、体力とかは普通の人間だ。
「!あ、姐さん、マジかよ」
「捕縛します!」
「ちょ、ちょ、ま、待って」
「待ちません!」
サルエルがあからさまに混乱している。
そこをセニアが叩く。
文字通り叩いた、比喩じゃなく。
一撃だ、楽勝。
あちゃあ、キュアウインドをラーニング出来なかった。ちくしょう。
まぁ、リルムが入ってくれれば当面は問題ないだろう。
ゴーリは元々鈍足であり、サルエルを助けるのに間に合わない。
これで残り2人。
補助魔法があれば、なんとかなりそうだ。
リルムが入っただけでこうもパワーバランスが崩れるとは。
「姐さん!いくらあんたでも許さねえ!」
ゴーリがリルムに向かってきた。
が、リルムはどこ吹く風と言った感じでお構いなしだ。
「安息の心を持ち、悠久の時を過ごせ・・・ウェルスリープ!」
がっ、ごとっ!と豪快に倒れ、ゴーリが睡眠状態になった。
倒れただけで痛くて起きそうだが、ゴリラさながらのゴーリは爆睡。
「リルムさん、凄いですね!」
「ここからが本番です」
セニアがリルムに声をかけながらゴーリに近づき
そのまま無防備のゴーリに一撃。そのままゴーリも潰し、捕縛。
寝てるままボコられてそのまま捕縛。憐れちゃあ憐れだ。
これで数的には3対1だ。
あれ?流石にセニア、攻撃力高すぎじゃねぇ?
まぁ、後で聞こう。
今はバイアールに集中だ。
セニアと2人のやりとりの間もアレンは烈風撃と火炎撃を織り交ぜながらバイアールに向かっていった。
隙を与えると中級魔法の詠唱に入ってしまう。それは避けたい。
とはいえ、初級魔法は詠唱も短いため結構飛んで来る。
アレンの横でリルムも魔法の詠唱準備をして、随時回復をしてくれる。
戦闘しながらでも会話はできる。
「リルム、バイアールの魔法を封じることは出来るか?」
「バイアールに私のサイレンスは効きません、魔法レベルがあちらが上なので」
「メガスプラッシュが厄介だし、初級魔法は結構連発するから邪魔だし」
「私は水属性ですが、それ以外の補助魔法もアップ系なら基本的なものは使えます。」
「なるべくアップしてもらうしかないか」
「アレン殿、なんとか隙を作ってもらえませんか」
「何か作戦があるのか?」
「一応は。ただ、私がバイアールに近づかないとダメです、そこまで防御に自信が有る方ではないので」
「分かった」
ところでフェザーフォルクなのに水属性?風属性のイメージがあったんだが。
羽はないしなんだかなぁ。
まぁ、いいか、後で聞こう。
セニアも合流し、完全に3対1になった。
「何人になろうが、一緒ですよ、私には勝てません」
「諦めない!」
「何をあなたをそこまで動かすのですか?」
「決まってる、ここであんたを捕まえないとアリアナの人達に笑顔が、戻らないからだ」
諦めたら試合終了だからだ。違うか。
勇者を今後名乗るなら逃げる、諦めるわけにはいかないよな、レン?
それに、放っておけば必ずもっと脅威になる。
アレン達にではなく、この世界の人類にとって。
そんな予感がした。理由はわからないが。
「理解できません、他人のために何故そんなことをするのかが」
「利己的なあんたにはわからないよ」
セニアとアレンが同時に攻撃を仕掛ける。
バイアールはスタッフで応戦している。
流石のバイアールもアレンの2回攻撃とセニアの同時攻撃は受けるのもやっとらしい。
絶望的に力の差があるわけではなさそうだ。
「くっ!いい加減うざったいですね」
バイアールが右手に魔力を収束させ、そのまま放った。
セニアをかすめ、壁に大きな穴が開いた。
早い。セニアの身のこなしじゃなかったら避けられなかったかもしれない。
魔法じゃなくエネルギー弾のような技だ。
こんなんありかよ。
「これは魔力弾という技です。純粋に魔力をぶつけるわけで、かなり魔力を消耗しますが、仕方ありません」
ヤバいな、バイアールは一人でも相当に強い。
魔力弾か、メガスプラッシュよりさらに怖い技があったな。
泣きごとを言っても仕方がない。
「清らかなる水流は力の泉となり汝に・・・シャープネス!」
リルムが攻撃力を上げてくれたらしい。
セニアにもシャープネスを掛けた。
あとは肉体労働だ。攻撃を打ちまくる。
ダメージが通らないわけではない。
元々半魔族のデミヒューマンは体力がある。なかなか時間がかかる。
魔力弾打たせる隙は作りたくない。
だから休まず攻撃をする。
それでも全く休まずとは行かず。
「深き真紅の焔に依りて、全てを塵に還せ・・・メガファイア!」
中級魔法が飛んで来た。
今度は火属性だ。
バイアールは主属性はなんなんだろう、さっきは水、今は火。
主属性以外の魔法も使えるわけだ。
メガファイアは3人全員に向けてだ。
リルムも近くにいたから巻き添えを食ったかもしれないが、水属性のリルムには大したダメージにはならないはずだ。
アレン達も対象が3人だからか思いの外、ダメージは高くなかった。
大量に火を燃やしたので、洞窟内の温度かあがってきた。
そしてところどころに気圧の山谷が出来たのを感じる。
酸素が使われたからだろう。
なぜ気圧がわかるんだろうか。
ん?待てよ?さっきは火炎撃に烈風波を混ぜて火を大きく出来た。
じゃあ、逆は?
やってみるか・・・
やるならまだ魔法力があって、バイアールの魔法で気圧がずれてる今しかない。
「リルム、ヘイストは出来るか?」
「出来ますが、かけます?」
「頼む、その後の俺の攻撃でバイアールに隙を作る」
「わかりました、そこがチャンスですね」
「これでダメなら打つ手なしだ」
「セニア、トドメは頼んだ」
「わかった」
「一縷の風を受け、汝の歩みを早めん・・・ヘイスト!」
「火炎弾!」
リルムがヘイストを唱え、
アレンは先ほどバイアールが火属性魔法を放った中心地に火炎弾を2発着弾させる。
「おや、お疲れですか?私には全く別の場所を攻撃してますが」
バイアールが何か言っているが無視だ。
そのままヘイスト+全速力でバイアールの背後に回り・・・
「食らえ!合技!暴風刃!」
アレンは烈風撃を放ったが、その風はさっき火炎弾を放った場所へ凄い勢いで突風となった。
またもやアレンは一人合技を放つことに成功した。
「な、に、?」
流石のバイアールもびっくりしたようだ。
防御は出来ず、よろけてまともに前のめりに倒れた。
ダメージが目的じゃない、十分だ。あとは二人に任せよう。
倒れたバイアールに向かってリルムが走り出し近づいた。
そして布を顔面から被せた。
そのまま、
「無数に生い茂る緑の蔦によりて汝の歩みを止めよ・・・アイヴィバインド!」
アイヴィとは英語で蔦のこと。
バインドは動きを封じる魔法だ。
「ぐっ、がっ、な、何を!」
「・・・せーの!!」
動きを止められたバイアールに対し、セニアがメイスをフルスイング!
そしてバイアールは完全にノックアウト。
勝った!
捕縛をし、勝負がついた。
「リルム、さっき掛けた布は?」
「バイアールが出かけるときに使うフードです」
「あぁ、なるほど、一種の魔力制御装置って言っていた」
「?よくわからないよ、アレン」
「セニア殿、バインドは自分よりレベル高い相手には効きにくい魔法なんです」
「バインドをかけるには、バイアールの魔力を多少抑える必要があったってことだよ、それであの自慢のフード」
「はい、そういうことです」
「ああ、なんとなくわかった」
「それにしても、アップ系だけじゃなく使えるんだね、バインド。木属性だよね?」
「よくご存知で。木属性は私の水属性とは相性が良いのですよ」
「ああ、確かに」
「それにしても、アレン殿、さっきの技は?凄まじい風でしたが」
「うんうん、何あれ?それに、さっきも火炎弾を大きくしていたよね?いつ覚えたの?」
「さっきさ、風属性魔法を受けているうちに風が読めるようになった。それで烈風撃を使えるようになったんだ」
「ただの属性付与攻撃のときと、威力が全然違いましたが」
「あれは、合技。二つの特技を合わせた技さ。普通は二人でやるんだが、なんとか一人でやれたようだ」
元々風は気圧の高い所から低い所へ空気が流れるから出来るわけだ。
じゃあ、火を燃やして、気圧の低い特異点をわざと作り、そこに風を入れたらどうなるかな。
考えていた通りでよかった。
「ところでセニア、なんかたまに攻撃力凄くないか?」
「さっきね、クリティカルヒットを覚えたんだよ~」
クリティカルヒット。
大振りになるが、当たれば会心の一撃。
戦士としては素早さが低いため使いにくい技だが、
セニアとしては十分な素早さと、体の柔らかさ、虎由来のバネがある。
通常の戦士のそれより当たりやすいのだろうか。
今回の戦いでは得るものは多かったし、かなり成長したようだ。
新しい技、レベルアップ、そして盗賊退治。
大変だったし、死にそうだったが、よかった。
「あ、改めて、アレンだ」
「セニアよ」
「よろしくお願いしますね、アレン殿、セニア殿」
「呼び捨てでいいし、敬語も大丈夫だ」
「では呼び名は名前にします。言葉はどうしても貴族出なので癖です、時間かかりますが直しますね」
「いや、別にいいよ、ところで仲間になってくれるか?」
「色々やることがありますから、それが終わってから正式によろしくお願いします」
こうして盗賊退治は幕を引いた。




