盗賊団首領に立ち向かってみる
ヤバい状況になった。
頭の登場でアレンとセニアだけでなく、ゴーリ達にも緊張が走っている。
その雰囲気に有無を言わさず、戦闘が中断される。
ゴーリ達に不意討ちを喰らわすことくらいは出来たかも知れないが、とにかく威圧感が凄い。
頭の元にゴーリとサルエルが集まり、こっちに向かいながら話を始めた。
離れたところにいたレッジはそのままの位置で頭を垂れている。
レッジの相手をしていたセニアはそろそろとアレンの横に移動してきた。
さながら挟み撃ちされている構図になっている。
まぁ、レッジはしばらく動かないだろうが。
「それで?これはどういう状況です?他の手下達はどうしました?」
「あ、あいつらが、暴れて捕縛されていったようで大体の奴らと連絡がつきやせん」
「それで、あの人達は誰です?」
「わからねぇです、アジトの周りを嗅ぎ回っていたんで姐さんが捕まえたんですが」
「脱走されたあげく、好き勝手やられていたと?」
「・・・すみません」
「それで、そのリルムさんはどこにいるんですかね?」
「いや、見てないです、自室に居て状況が把握出来てないのかも」
「あなた方もリルムさんもとんだ役立たずですねぇ」
「・・・」
「まぁ、良いでしょう、今回はお咎めなしにしておきます」
「あざっす!」
終始、頭は丁寧な言葉で話していたが、声に怒気が混じっている。
近づいて来たのでステータスが見える。
バイアール 34歳 デミヒューマン 男
Lv35 盗賊首領●5
!!
バイアール!?
あのアリアナで見たブローカーだ。
しかし、ジョブも違うしレベルが段違いだ。レベル高っ!
アリアナで見たときはレベル21だったはずだ。
この数日でこんなにレベルアップするものか?
あと、違うのは黒いフードを被っていないことだ。
前は顔が見えなかったが、今ははっきりと痩身の臼灰色の肌と、銀髪、緋眼が見える。
あぁ、明らかに魔族に由来する顔だ。
しゃべり方すら、私の戦闘力はウン万ですとか言い出しそうだ。
いや、戦闘力ってなんじゃ?って話だが。
「あんた、前に見たときより強いじゃないか」
「おや、どこかでお会いしました?」
「アレン!知っている人?」
「セニアもアリアナの道具屋で一度見ているよ」
「ふむ、私の方は記憶にありませんね」
「あ、あのフードの行商人さん!?ま、魔族だったんだ!」
「おや、貴女はアリアナの人ですか、これはこれは」
「なぜこんなことをするの?あの子を離しなさい」
「貴女には関係ないでしょう」
「でもまぁ、いいでしょう、私の盗賊団に、たった二人で挑み、ここまで派手に暴れたあなた方に敬意を表し、質問に答えましょうか」
説明が始まったよ。
妙にゲームチックだな、
まぁ、戦いの前に参考になるかもしれない、おとなしく聞こう。
しかも休憩が取れるわけだ。
「まず、そちらの方、私の強さがわかるのでしょうか、どういう理屈かはわかりませんが」
「私達デミヒューマンのレベルは魔力を溜めている量に寄って変動させることが出来るのです」
「魔力の量によって魔族に近づけると言った方が良いでしょうか」
「アリアナなどに行くときは周囲の人間を蹂躙できる最低限しか持ち歩きませんよ」
「外出するときのフードは一種の魔力制御装置です」
「ですが、今は侵入したネズミを排除するためにある程度の魔力を持っています、なので強いですよ、私」
「それからお嬢さん、私は行商人ではありません。偽造した偽魔石を売って資金にしています。あと、魔族でもありません。デミヒューマン、魔族と人間のハーフです、貴女の亜人と大差ありませんよ」
「私が何故こんなことをしているかですが、偽魔石が便利で必要だからです」
「売れば馬鹿な金持ちが魔石に勘違いして資金は入る。人間では魔力を取り出すことが出来ないのも知らずに」
「そして私自身が持って使っていれば魔力貯蔵庫になります」
「私は魔力を対象から吸い取り、他に移したり、自分に入れたりが出来ます」
「あのエルフを拾ったのは幸運でしたよ、どう転んでも復讐出来ます」
「復讐?」
「お嬢さん、亜人とデミヒューマンでは、人間は同じ扱いはしないのはご存知ですか」
「え?」
「人間は亜人とは仲良くしていますが、デミヒューマンと、その人間側の親は迫害される存在なんですよ」
「私は私と母を迫害した人間を許さない!魔力を溜め、完全な魔族になり、滅ぼしてやると誓いました」
「エルフから魔力を取るのも、もしエルフが死んでも人間のせいにして、エルフと人間の大戦争を起こせば人間に復讐になる・・・か」
「あなた、なかなか頭が良いですね、気に入りました」
「ですが、私の手下達にしてくれたことのお礼はしましょう、お相手になりましょうか、さぁかかってきなさい!」
バイアール Lv35
ゴーリLv25
サルエルLv23
レッジLv25
再び戦闘が始まってしまった。
人数を減らせていないのは非常にマズイ。
しかもバイアールはかなり格上だ。
バイアールは杖を使うようだ。魔法主体らしい。
他を無視してバイアールに全力の火炎撃で切り込んでみた。
他3人が邪魔できないくらい早く全速力で動いたがバイアールは反応した。
杖の端でサーベルを受け切り、
力づくで押し返した。
そしてそのまま杖で殴りかかってきた。
いや、待て。魔法使いが使うワンド系杖じゃなく、殴れるスタッフ系か。
武器としてはセニアに近いか。
なんとか避けたが、やはりレベル差は大きい。
「ほう、なかなかの属性付与打撃です、いいですね」
くそっ、余裕かよ!?
「でもその程度では私は倒せません」
バイアールは手のひらに魔力を集めだし、魔法を詠唱し始めた。
「火属性のあなたにはこれを差し上げましょう」
「清らかなる水流に依りて全ての焔を無に帰せ・・・メガスプラッシュ!」
足元から魔力による水が噴出してくる。
水圧で敵を倒す中級水魔法だ。
全身に力を込め防御する。
「がっ!くっそ」
が、かなりのダメージを食らってしまった。
初めて中級魔法を受けたがかなりきつい。
ゲーム中は60ポイントくらいHPを持っていかれる。
今のアレンのレベルは20後半のはずだ、一発では死なないと思っていたが。
主属性が火だったらと思うと冷や汗だ。
傷薬を即座に使い回復をする。
「おや、あなたは火の属性付与出来るのに火属性ではないんですか、これはこれは」
「アレン!平気?」
「ああ・・・」
「おい、姉ちゃん、仲間の心配してる場合じゃねぇぞ?」
セニアにはゴーリ達が襲いかかる。
ゴーリの攻撃は楽々交わしているが、
レッジの攻撃はちょこちょこ当たっているし、
サルエルのブリーズはセニアには弱点属性になる。
3対1はヤバいな、くそっ!
抜かった、バイアールが合流する前に人数を減らしておくべきだった。
考えた挙げ句、少し博打をしてみることにした。
「火炎弾!」
レッジ達に火炎弾を放つ。
距離はあり威力は下がる、普通なら。
「烈風波!」
火炎弾がサーベルから放たれてすぐに、風属性の烈風撃も飛ばしておく。
火炎弾は烈風波の風を受け、新しい空気を取り入れ、かなり大きい炎になった。
合技である。普通は二人で放つものだが、
アレンは2行動を同時にこなし、一人でやってのけた
「合技、爆炎刃!」
「で、出来た!」
覚えたばかりの烈風撃の派生技を放ったのも、
一人で合技をやったのもぶっつけ本番である。
「な!?」
「ほう、なかなか器用ですね」
「今のはビックリしたぜ」
「いや、犬の亜人さん、あなたの負けよ?」
セニアがレッジに渾身の一撃を放つ。
レッジは弓を構えて受け流す。つもりだったが、既に武器はその手になかった。
「!?」
今までのレッジの動きを見てると間違いなく弓で受け流すと思った。
アレンはそれを見越して爆炎刃を放った。
爆炎刃によって、レッジの弓は燃え尽きたのだ。
武器破壊。ゲーム中でも狙えば出来るが確率は低い。
レッジが持っていたのが木製の弓だったからなせた技だ。
セニアの会心の一撃が入り、レッジは倒れた。
やっと一人!
「レッジ!」
「今回復を・・・」
「させないわ!」
セニアはそのままサルエルに向かって行った。
が、やはりゴーリが邪魔をしている。
「セニア!先に犬の亜人を捕縛だ!捕縛すれば、回復もできない!」
「わかったわ!」
セニアはゴーリの前からバックステップとバク転をしレッジのところへ戻り、捕縛した。
お互いに捕縛用ロープを持っておいて良かった。
「あなた、私と戦いながらあっちを構うなんて、度胸がありますね、そしてなかなか器用ですね」
「ますます気に入りました、あなたは必ず命乞いさせたくなりました」
「くそっ!」
同じ騙し討ちはもう効かないだろうな。
バイアールは2人で相手をしたいわけだが、なかなかゴーリとサルエルの処理は難航している。
そしてアレンもセニアもその都度、傷薬を使っているが、
結構ダメージを食らっている。
傷薬の手持ちも大分厳しい。
ストアから出すほどの余裕はない。
「あなた方、お強いですが、私の前ではまだまだでしたね」
「くそっ!」
バイアールが手を上げ、魔力を溜め出した。
止める手立ては今のところない。
万事休すか・・・?
マーレに言われた通り手を出すべきじゃなかったかな。
だが、最後まで諦めない!
その時!
『心穏やかに、健やかなれ!ヒールオール!』
体力が回復したのが分かった。
戦いをしていた全員が声のした方、アレン達が通ってきた小道を見た。
位置としてはアレンとバイアールが一番近く、少し離れたところにセニア達がいる。
そこには一人の女性が立っているのが見えた。
「・・・どういうつもりですか」
「どうもこうもありませんが?」
「裏切るということで?」
「いえ、裏切るわけではありません。初めからこうするつもりでしたので」
「どちらにしろ、私の魔法詠唱を妨害したあなたは許しませんが」
そこにはリルムが立っていた。
「あ、姐さん、なんで・・・」
バイアールは冷静だが、
サルエルやゴーリは困惑している。
「私の名前は、リルム。リルム・ライルエルだ!」
「ライルエル?なぜ貴女が貴族名を名乗るのですか」
「私はライルエル家嫡子が一人!ここには密偵および、人的被害を少なくするために潜入していた」
「バイアールずっとお前を倒せる実力と正義の心をもった人材を待っていた!」
「お二方とも、お力を貸して頂きたい」
「アレンだ」
「セニアよ」
「詳しい自己紹介は後に」
「信じていいんだな?」
アレンは近くに居たので普通に名前を、セニアは、遠くから叫び名前だけを言った。
対するリルムはアレンの問いに力強く頷いた。
「ほう、いい度胸です。私が可愛がっていたのに、そうですか」
「やはり、貴女はここで殺しましょうか」
「おとなしく捕まりなさい」
3対3での第2ラウンドが始まった。




