アジトの最深部に行ってみる
下の階層でも下っぱは出るらしい。
が、さっきまでの下っぱより力が強いが戦闘技術は拙いものだった。
密輸品の綺麗な石を運ぶための人員なんだろう。
この盗賊団はかなり統率が取れていると言って良い。
必ず2~4人パーティーで出現する。下っぱが4人居たところで怖くはないが。
メッツが言っていたように下っぱ達も兵士崩れなんだろうか。
下っぱは盗賊団が出来てから入ったメンバーなのかもしれないな。
メッツ達と戦ってから下っぱを7人捕縛し、
盗賊達を合計20人倒したところで、傷薬と魔力水で体力回復をしながら、軽く携帯食をパクつきながら休憩した。
セニアの言って通り、前日の携帯食はパサついていてまずかった。
まぁ、腹は壊さないらしいから我慢するか。
「あとは10人くらいだね」
「うん、なかなか強い奴らもいるから油断出来ないな」
「あの馬に乗っていた人、リルムさんだっけ、戦うのかなぁ」
「どうかなぁ、まずは会ってみたいなぁ、話がしたい」
「そうだよね、なんか話をしていると悪い人なのかわからないよね」
「ああ、セニアもそう思う?俺もそう思うな」
リルムを見つけるのも、盗賊団を全員捕縛するのも、やることは一緒だ。
でも頭は出かけてるとか入り口でリルムと話をしていたやつが居たな。会えるかな?
会えたとしても、戦闘力で勝てるかなぁ。大した技もまだないし。
頭まで捕縛出来るかな。
しばらく進むと、細い道から、明るい場所が見えてきた。
広場のような場所につながっているのだろう。
息を潜めて様子を探る。
視線の先には、やはり広場に盗賊達がいるのがわかった。
が、それよりも妙なものが見えた。
何かのチューブに繋がれた少女が見える。
その少女をじっと眺めてみると
××× ???歳 ハイエルフ ♀
・・・遠すぎてあまりはっきりは見えない。
が種族はエルフ、♀なのが分かった。
ハイエルフというのはエルフの中でも高密度の魔力を持つ、王族に近い種族だ。
やはり予想していたとおりだ。
頭がいたくなるわ。
「セニア、あの中心にいる子見えるか」
「うん、でも縛られてるのかな」
「多分、あの子から魔力を吸って石に移しているんだ、それで綺麗な石を作っているんだ」
「ひ、酷い」
「どうやっているかはわからないけど、予想していたとおりだ」
エルフが綺麗な石を作っているではなく、無理やり作らされてる、もしくは、こういうことだ。
エルフが人間、しかも盗賊なんかに協力するはずがない。
同じ人間としてヘドが出るわ。
「セニア、あの子はエルフだ」
「う、うん?わかるの?」
「あの子は必ず助けないといけない、放っておくとか殺すと、エルフと人間の仲は最悪になる」
「それはまずいね」
「最悪、戦争になったりでもしたら犠牲者は数えきれない」
「それに今後、魔王倒すならエルフの協力は必ず必要になるはずだ」
「周りの盗賊、数多いね、1、2・・・8人かな」
全体攻撃が出来ないいま、8対2は非常にまずい。多勢に無勢とはこの事だ。
しかも下っぱレベルではないだろう。
セニアがなぎ払いを連発したところで倒せる数はたかが知れてる。
なるべく一体ずつ片付けて数を減らす必要がある。
「セニア、せっかく細道にいるわけだから、これを利用しようか」
「どうするの?」
「まずはこれを使おうかな」
「あ、さっきの。持ってきたんだ」
「一人おびき寄せるから、セニアは来た奴をタコ殴りで」
「分かったわ」
少し細道を戻り、二人で並べる広さのあるところに陣取った。
取り出したるは、さっきメッツのところから拝借してきた綺麗な石。
特に要らなかったが、敵の気を引くくらいには使えるかも。
と何個か持ってきていた。
それを盗賊達の方に弾き飛ばす。
盗賊が1人しかいない良い位置に飛んでいって落ちた。
やはり我ながら上手い。ダーツにはまった時期があってよかった。
カツーン!!
石だけに良い音がする。
それに気づいた1人が怪訝そうな顔をして細道に近づいてきた。
そこで更にもう1つ石を投げた。
そのまま盗賊の一人は細道に入ってきた。
そこをセニアがメイスで殴打。
そのまま連撃。うぁ、いたそー。
「ぐぇ!」
と声を出し、盗賊が倒れた。
名前は・・・戦闘員。固有名称なし。
下っぱではないだろうが、特筆するところもないようだ。
不意討ちとは言え、まず一人。
ドロップは後で回収しよう、とりあえず無視。
捕縛だけはきちんとしておく。
「あん?どうした!」
「なんだ、小便か?」
「カイ、見てこいよ」
「へい」
盗賊が騒いでいる。カイと呼ばれた男が近づいてきた。
カイ Lv21
「うぉ!て・・ぐぁ!」
カイが声をあげる前にセニアが対処した。
セニア、優秀すぎる。
だが、カイはすぐに倒れなかった。
とは言え不意討ちが基本だとダメージは大きいようだ。
よろめいたので、サーベルを足にブスっ。
殺さないが戦力としては奪いたい。なら足を攻める。
地雷と同じだ。
残りの処理はセニアが付けて、捕縛。これで二人。
「どうした!」
「なんだ!」
「行け!てめぇら」
続々と盗賊達がやって来た。
が、細道だからいくら来ようが1人ずつしか戦えない。
魔法や槍も同士討ちをするため使いにくい。
一方こちらは2人で細道から出てきた先頭の奴と戦うだけだ。
8対2ではなく、1対2を8回やる方が安全だ。
上をセニアが、足をアレンが対応し、確実に殺さず戦力を削いでいく。
卑怯だが、仕方がない。殺さず戦うだけでかなりハンデを背負っている。
「何してやがるんだ、てめぇら、馬鹿か!」
「細道に敵がいるんだろう、わざわざ行くんじゃねぇ!あぶり出せ!」
「へい」
合計5人を倒した。きちんと捕縛。動かれては気が散るしな。
しかし、このタイミングで盗賊の誰かが指示をだし、盗賊達が入ってこなくなった。
後3人だったのに。
と思っていたら、煙が充満してきた。
ヤバい、あっちで火を炊いているのか。
頭がいいやつが居るようだ。
「セニア、煙吸うと不味い。ダッシュで向こう行こう」
「うん、戦いになるけど頑張るね」
こうなっては仕方がないが3対2だ。
しかも頭は出かけてると言っていた。
幾分かはましな状況だろう。
「よう!お客さんだぜ」
「二人か、なかなかやるな」
「全く、だらしねぇな、男と女の二人組に良いようにあしらわれてよ」
「うちの盗賊団もなめられたもんだ」
「お?女!俺達と遊んでいかねぇか?お前は助けてやってもいいぜ?」
「お断りだわ、バーカ」
「んだと、このアマァ!」
セニア、あまり刺激しないの。
意見には賛成だが。
セニアと遊んでいいのは俺だけだって!
「盛り上がってるところ悪いが、君たちで盗賊全部かな?頭は居ないって言っていたが?」
残っている3人は、
一人目は大柄で筋骨隆々のおっさん、名前はゴーリ。まさしくゴリラだ。セニアにバーカ呼ばわりされたのはこいつだ。
二人目はサルエル。優男という風貌、武器は杖、魔法使いのようだ。さっき指示したのはこいつだな。
三人目はレッジ。弓を構えている上、犬の亜人だ。
なかなかに厄介な組み合わせの相手だな。
遠距離攻撃を得意とするだろうやつが二人、
うち一人はかなり素早いだろう犬の亜人だ。
それから壁みたいな筋肉ゴリラ。
長期戦はまぬがれないか。
「俺達の他に姐さんと頭がいるぜ」
「あの二人にかかればてめぇらなんかあっという間に負けるぜ」
「まぁ、その前に俺達で片付けるがな」
ゴーリLv25
サルエルLv23
レッジLv25
「セニア、まずは二人で協力して亜人からいこう」
「うん、分かった」
「おっと、まずは俺が相手だ」
ゴーリが立ちふさがったが、無視。
アレンはゴーリの横をダッシュで駆け抜け、レッジのところへ。
セニアはゴーリが繰り出した拳をかわし、踏み台にして上空に高く飛び、ゴーリを飛びこえ、やはりレッジのところへ。
セニアすげぇ身体能力だな。
ゴーリは武器がナックルだったようだ。が、スピードは遅い。
移動中はどうしても魔法と弓攻撃は喰らってしまう。
サルエルはブリーズと言う風魔法を主に使ってきていた。
土属性のセニアには弱点となるが、アレンはあまりダメージが大きいようには思えない。
ブリーズは風力階級で2~6。弱い風の初級魔法だ。
圧があり、切れる感じがする。かまいたちの原理なのか。
レッジの近くまできたら、
セニアがすごい剣幕でレッジに何か言い出した。
「あなた、亜人よね?」
「それがどうした、お前も虎の亜人だろう」
「亜人なら亜人らしく誇りを持って生きなさい!」
「は?亜人の誇り?そんなもんじゃ飯が食っていけねぇ」
「亜人なのに、悪人に手を貸す、人を傷付ける、恥ずかしくないんですが」
「知ったことか、あんたに説教される謂れはない」
「言うことを聞かないならあなたはあたしが倒します」
「やってみろよ、俺は早いぜ」
レッジはセニアが放った一撃をひらりとかわし、すぐに距離を取り、弓矢で一撃。
セニアも上手く避けて距離を狭めようとしたが、なかなか近づけない。
レッジは自分の間合いで戦いをするのに慣れている。
初手でかなり近寄れたのはまぐれか。
アレンもレッジに向けて火炎弾を何発か放つ。
魔法ではないから遠距離になれば威力は期待できないが、陽動には使えるはずだ。
足元に被弾し、一瞬動きが鈍った。
その一瞬をセニアは見逃さない。一気に間合いをつめ、レッジに一撃。
レッジは弓の歪曲した部分を使い受け流す。
あいつ、かなり出来るな。
それでも一度縮まった間合いを広げることはなかなかセニアがさせず、何発かレッジにも打撃が入った。
アレンはレッジだけに集中はできない。
ゴーリが背後からドスドス走ってきているうえ、
サルエルの魔法もダメージではなく動きが邪魔されるからうざったい。
しばしレッジはセニアに任せ、サルエルに向き合う。
ゴーリに火炎弾を放ち、牽制しつつ、距離をつめていく。
サルエルは詠唱中に止まるし、それほど素早くもない。
何発かブリーズを食らったが、サルエルに近づけた。
ブリーズを何回か食らっているうちに、どこから風が出て、どう襲ってくるかがなんとなくわかるようになった。
サルエルのブリーズは基本的に直線攻撃だった。
「魔法がワンパターンだね」
「くっ!馬鹿な!」
「悪いけど少し寝ていてくれ」
剣を振りおろしたところでゴムを切ったような変な手応えがあった。
「おっと!効かねぇな」
「ゴーリ、すまん、助かった」
ゴーリが手を伸ばし、サルエルを庇ったようだ。
あれだけ距離があったのになぜ届く?
「気にするな、大したダメージじゃない、あそこで俺にヘイストかけたのは流石サルエルだ」
「今回復する、キュアウインド!」
なかなか筋肉ダルマを切るのは大変らしい。
筋肉の鎧か、暑苦しい。
そして、サルエルは補助魔法、回復魔法まで使えるようだ。
ヘイストも風属性だから使えてもおかしくはないか。
こいつも出来るな。
ゴーリも咄嗟に自分を犠牲にしてサルエルを助けるなどなかなかだ、根性もある。
ますます暑苦しい。
それにしてもキュアウインドか!
風属性で回復魔法は少ないとは言え、まさか!
エアーベアーからラーニング出来なかったが、人間で使える奴に会えるとは。
チャンスだ、絶対ラーニングしてやる。
そのためには最低でも後一回使わせる必要がある。
3人とも強敵だ。それを2人で相手するのはちょっと辛いかもしれない。
総合的に考えると、やはりレッジを先に潰した方が良いかもしれない。
セニアをチラ見すると、まだレッジと戦っていた。
接近戦にしているが、レッジも間合い取るのが上手いようだ、なかなか決定打に欠いている。
「ブリーズ!」
考えていたらサルエルからまた魔法が飛んで来た。
が、軌道が分かっているのでサイドステップでかわし、魔力が集まる部分を火炎撃で叩ききった。
「な!?」
「出来るもんだな」
「何をした?」
「風の出所に、火を点けるとどうなるかな?」
「し、知るか!魔法を切るなんて聞いたことがない!」
「切ったんじゃない、燃やしたんだ」
答えは酸素が燃えることで、気圧が変化し、風の影響が無くなる。
出所と軌道がワンパターンだから出来たもんだ。
見切ったとはこの事。
風属性と火が相性が良いからかもしれないが。
ラーニング出来たかな?と思ったが、
残念ながらブリーズはラーニング対象スキルではない。
ブリーズと念じても何も出ない。やはり魔法は使えないらしい。
それなら風を起こすイメージを頭に・・・
「烈風撃!」
ゴーリに突風と斬撃を浴びせた。
「出来た!」
「なんだと!?」
「てめぇ、まじで何者だ!?」
構造と技の名前を知っているからやれるかも。
と思いやってみたら出来た。
風属性を付与した斬撃だ。やった。
その時、がちゃん!
なにかの音がした。扉?
エルフが繋がれている装置の下から誰か出てきた!
「私のいない間に随分楽しいことになっているじゃないですか」
「か、頭」
この状況でお頭の登場。
マジですか。2対4だと!?




